男性VTuberの明日はどっちだ!? 女性優位社会でどう立ち回るのか

 前回の記事【ホロスターズ設立騒動は騒動ではない。見えない敵と戦う人への対処法】では、男性VTuber事務所『ホロスターズ』にまつわる話に触れた。今後、男性VTuberとして台頭することに大いに期待したいものである。

 しかしながら、現実問題としてVTuber界隈は圧倒的な女性優位社会であり、男性VTuberは女性VTuber以上に高度な立ち回りを求められているという現状がある。本記事では男性VTuberの成功例について触れるとともに、それぞれをタイプ別に分けて考察していこうと思う。

 1.裏方系

 先に述べた通り、VTuber界隈は圧倒的な女性優位社会であるが、それはつまり女性VTuberよりも目立つ男性VTuberは好まれにくいということでもある。その中で成功している男性VTuberのタイプの一つがばあちゃる、パンディなどの女性VTuberのプロデューサーやマネージャー的立ち位置を務める裏方系である。

 しかし、彼らにしても初期の頃は目立ちたがりな性質だと思われて、炎上することが度々あった。今でこそ愛されキャラとして定着しているものの、裏方系男性VTuberを目指すならば、叩かれてもへこたれない鋼のメンタルは必要とされるだろう。

 2.司会系

 女性VTuberを引き立てる存在と言えばプロデューサーやマネージャーだけではない。司会系と呼ばれるVTuberたちもある種一歩引いた視点で、主役をサポートする存在であると言えるだろう。先に挙げたばあちゃるも司会系と評されることがあったし、パンディも相方のかしこまりのライブイベントでは引き立て役として活躍していた。

 だが、裏方系との兼任という形でなければ、今から司会系VTuberを目指すのはかなり厳しいのではないかと思う。何故ならアメリカザリガニ、百花繚乱、一翔剣(吉田尚記アナウンサー)など、喋りが本職であるタレントがVTuber化し、司会系の役割を果たしてしまっているからである。ばあちゃるくらいしか大舞台での司会はできないと言われていた時代は、すでに過去のことだろう。

 さらに言えば、電脳少女シロ、富士葵などの女性VTuberも司会の腕をめきめきと上げているうえに、燦鳥ノム、インサイドちゃんなども司会がこなせてしまう。他にもときのそら、白上フブキ、友人A、おめがシスターズ、大蔦エル、キミノミヤ、くらすたーちゃんなどが司会経験がある。女性VTuberでも「自分は主役じゃなくてもいい」という立ち回りができてしまうのであれば、わざわざ男性VTuberを引っ張ってくるメリットがあるとはあまり思えない

 それでもたとえばアメノセイ(正確には性別不詳だが)は燦鳥ノムの相方としてのポジションを獲得しているし、天開司、ふくやマスターなどは司会系VTuberとして非常に健闘していると思う。しかし、そもそも司会系というのは枠が限られている分野であり、これ以上は需要があまりないだろう。小規模な個人企画の司会であれば別の話だが、今あえて目指すようなものではない。

 3.色物系

 男性VTuberが女性VTuberよりも担当しやすい役割と言えば、弄られキャラもある。とは言え、人気のある女性VTuberも奇人・変人ばかりで、ちょっとやそっとのインパクトでは弄られ役を務めるのも難しい。そんな中で『バーチャルさんはみている』の出演などで一躍人気となったのがバーチャルゴリラである。名前の通り、見た目がどう見てもゴリラであり、これはもう弄らざるを得ない。

 また、自主制作アニメからの派生ではあるが、結果的にはピーナッツくんも同じような事例に当たる。まず見た目からして人間ではないという要素は男性VTuberとして活躍するための一手になるだろう。

 余談だが、ピーナッツくんは男性がVTuber界隈で活躍することの難しさには活動初期段階から気付いており、実の妹に頼み込んで、甲賀流忍者ぽんぽことして活動開始してもらったという経緯がある。その先見性は非常に高く評価するべきだろう。

 4.バ美肉系

 バーチャル美少女受肉おじさん(バ美肉)と呼ばれる、魂(中の人)が男性でありながら女性のアバターを使用するという分野も存在する。大別すれば、ねこます氏などもそうである。反発があることを承知で乱暴に分類してしまえば、女性の魂が存在しないという意味で、のらきゃっとやバーチャルおばあちゃんなどもこれにあたる。

 一般的なイメージとしてはふぇありす、歌衣メイカ、魔王マグロナなどが成功例として挙げられるだろう。建前上は女性として扱われるものの、少々乱暴に扱っても問題ないという意味では、魂が女性のVTuberよりも扱いやすいということもあるだろう。

 個人的に特に評価したいのは歌衣メイカである。彼(彼女?)もまた、男性VTuberとして活躍することの難しさには活動開始以前より気付いており、男性に受けやすいであろう姿をアバターとしたと語っている。また、身内をバ美肉させてデビューさせたり、魂が女性の歌衣イツミをプロデュースしたりするなどの立ち回りは個人系男性VTuberとしては理想的に近い立ち回りであると評価したい。

 5.イケメン系

 VTuberの視聴者には女性は少ないと思われるが、そんな中で女性ファンが多いと言われている男性VTuberも存在する。道明寺晴翔、叶、葛葉、MonsterZ MATE(アンジョー、コーサカ)などがその事例である。

 道明寺晴翔はゲーム部プロジェクトのメンバーでイケメンでありながらも、弄られ役もこなしている。同メンバーの桜樹みりあや風見涼とのコンビも人気だ。

 叶、葛葉のコンビは『ChroNoiR (くろのわーる)』と呼ばれているが、こちらはBL的な人気もあるのかもしれない。

 なお叶をイケメン系に分類するのは違和感があるかもしれないが、セミプロクラスのゲームの腕前でチームを引っ張る姿などは紛れもなくイケメンだろう。こうしたタイプを目指すならば単独ではなくグループとしてのデビューを目指した方がいいかもしれない

 6.単純に面白い系

 これまで5つのグループに分類してきたが、理屈など抜きに単純に面白く、人気になった男性VTuberも存在する。無論、今までに紹介してきた男性VTuberが面白くないというわけではない。面白さ以外に説明がつけられないタイプがこれに当たる

 それがヤミクモケリン、剣持刀也、懲役太郎などである。ケリンや懲役太郎は動画の面白さでバズったVTuberとしても有名だろう。

 なお剣持刀也は一見するとイケメン系に当たるが、意外にも女性ファンはそれほど多いわけではなく、9割は男性ファンによって支えられていると言う。他のにじさんじの男性VTuberと同様にトークの面白さによって人気を博しているのだろう。

 しかし、いずれにしてもこのタイプは類い稀なるセンスの持ち主でなければ目指すことはできず、一朝一夕の技術では目指すことは難しいだろう。

 総括

 総括としては男性VTuberが新規に始めて人気になるのはかなり難しいだろうと思う。無論、女性VTuberでも新規に始めるのが難しいのは当然だが、その比ではない。男性VTuberは数が少ないように見えて、実際は需要と供給のバランスから言って、すでに飽和状態なのである。わざわざ男性VTuberを好んで観る層は意外なほど少なく、男性VTuberの需要はすでに満たされているということだ。

 それでも人気VTuberを目指したいという男性にとっては、色物系やバ美肉系は比較的やりやすい分野だと思う。裏方系や司会系はどうしても元ある立場が重要となるし、イケメン系や単純に面白い系を目指すには相方やある種の才能が必要だ。そう簡単には目指せるものではない。

 とは言え、最初の話に戻るが、ホロスターズはすでに女性VTuber事務所『ホロライブ』を運営しているカバー株式会社によることもあり、かなり期待値は高い。イベントで活躍するような男性VTuberを育成することもできるだろうし、グループ売りしていくことも可能だろう。願わくば、新規の男性VTuber需要はほとんどないという予測を覆していただきたいものである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?