見出し画像

タランチュラのケニーと無責任飼い主俺の1年間の記録

みなさん、ご存知だろうか?
タランチュラは、

飼える、ということに。


タランチュラは、飼えます!

この一言で、自分のペットの話題を出す程度に仲良くなった知り合いは皆軽く引いてしまう。
しかしコレに関しては俺は悪くない。だって、タランチュラは本当にこの日本の都会ど真ん中で、かってもいい生き物なのだから。
それはそれとして、タランチュラの話題を出すタイミングをミスった俺が普通にコミュ障で『悪い』可能性は大いにある。ある、が、それは一旦さておき。
この記事では飼いグモのケニーのみならず、タランチュラそのもの、ひいては蜘蛛の魅力そのものについて津々浦々語っていこうと思う。

タランチュラを飼うキッカケ

それはもう、至極単純。かわいいからだ。

このおしりを見てほしい。

2023/12/3撮影

なにこの、モッフモフとプッニプニを兼ね備えた最強のおしりは。 
こんなにも愛おしいまんまる、タランチュラの尻と星のカービィのフォルムくらいのものではないか。
これをかわいいと呼ばずして、なにを可愛いと呼ぼうか。我々タランチュラ飼いにとっては当然のことである。 
もともと私は蜘蛛に抵抗はない方で、町中の木々の枝中にまるまる太った女郎蜘蛛を見つけたらけっこうテンションアガる少年期を過ごしてきた。
思えば、女郎蜘蛛にも警戒色のカラーリングに美しい蜘蛛の巣の張り方、ほっそりした脚等、タランチュラのコロコロとした可愛さに対するスタイリッシュなカッコよさがあった気がする。
可愛いとカッコいいの両立、それはタランチュラ(蜘蛛)の魅力を語るうえでははずせないのだ。
しかし、それだけではない。

私は当時、ある神話物語にドハマリしていた。
それはギリシャ神話の変身物語。
当時から既に創作活動に身をおいていた私は、変身物語のあるキャラクターを狙い定めて、彼女をモデルにしたキャラクターをつくりたいと思っていたのだ。
その名は、アラクネー。

ダンテ『神曲』に登場するアラーニェの彫像。ギュスターヴ・ドレによる

アラクネーの変身物語のあらすじをかんたんに述べると、神々が人を支配していた世に、賤民の貧乏人として産まれたアラクネーは優れた機織りの名手で、その評判は文字通り天まで届くほどだったが、うっかり己の才は同じく機織りの名手たるアテナにも勝ると溢したばかりに、プライドを傷つけられカンナンのアテナに機織り勝負を挑まれました。それに臆することなく受けて立つアラクネー。アテナは神々の威光とそれに敗れた人間の末路を織り、アラクネーをたしなめようとしましたが、アラクネーはなんと逆に神々の浮気や不実を題材にしたタペストリーを織り上げたのだ。
そのタペストリーはアテナの作品にも勝るものでしたが、アテナはブチギレ。最後はアテナはアラクネーの頭を何度も打ち据え、そして殺してしまったとか、それを侮辱と受け取ったアラクネーは自殺しただとか。
まあそういう話です。

……みなさんの気持ち、ようく分かります。
だって普通に、胸糞悪い話ですよ、これは。
なにが胸糞悪いとか、いやいや現代の価値観だとそうだが実は当時の価値観からはこういうぐういが込められてて云々、というのは一旦全ておしまいにして、
一言。

…アラクネーさんめっちゃかっこよくね?

賤民という被差別階級であることが明確な身の上ながら、究極の権威(神々)に靡かない気高さ!
ビッグマウス相応の実力!
神々の目と鼻の先で自身のやり方で(創造という力で!)神々の身勝手を暴き立てるクリエイター魂!!

誇張しすぎと謗られても構わない!
はっきり言おう!俺はアラクネーの大ファンだー!!

……なんの話ししてたんだっけ。ああそうそう。
とにかく俺はそんなアラクネーに惚れついでにいつの間にか蜘蛛の造形美、かくも素晴らしい風刺機織り屋の末路である蜘蛛の美しさにメロメロになってしまったのだ。

その後、我慢できなくなりタランチュラ販売サイトの下見や買い方レクチャーを見ていたときにはもう、すっかりタランチュラという素晴らしい生き物の虜となっていた。

welcome to newworld!!

さて、こうして私は長考半分、衝動半分で無事奇蟲専用の通販サイトでタランチュラを購入。
価格はだいたい8千に少し足した程度でした。
かわいい命の値段にしてはずいぶん安いなとは思いました。
そこで私が購入したタランチュラの品名はブラジリアンブラック。
その名の通り、『タランチュラとは』と問われた人間がおおよそ思い浮かべるような漆黒の体に、多少雑な飼育でもそれなりに生きる頑健さ、タランチュラを飼う上で最も危険な噛みつきや刺激毛を飛ばす、といったリスクが低め(当然ないわけではないが…)等、その美しさ故につけられた値段を除けばまさに初心者向けの鑑と言ってもいいだろう。

そんな美しいタランチュラが、もうすぐうちにやってくる。
彼あるいは彼女を受け取るまで、私はまるでサンタクロースのプレゼントを心待ちにする子どもの気持ちで待ち構えた。
そしてついに、その時が来たのです。

 はじめまして


2022/10/28撮影

ちっっっっさ!?!?!?!?

いや、なんか黒くねえし!!ハエトリグモに文字通り毛が生えて鈍くさせたみたいな!?え!!?

しかし、注文ミスなどではございません。
私はたしかに頼んだのです。ブラジリアンブラックの
あかちゃんを!!

少々解説コーナーをば。
タランチュラは近年輸入時や捕獲時の死亡が問題視されており、そのせいもあってか国内のブリーダーでは輸入にかかる費用の上がり調子も手伝い、タランチュラを自力で増殖させる方向に動いているそう。(諸説あり!)
タランチュラは基本多産多死の生き物。当然、赤子のときにどれだけ手を尽くしても、生き残る生体はほんの僅か。
つまり、タランチュラは幼体に近いほど安く、生体にちかい程値ははります。インフレとデフレですね。(適当)

はっきり言いましょう。私はかなりお金には恵まれてない方です。なので、タランチュラにはブラジリアンブラックを飼いたい!という意志はあれど、成体に拘る気はそれほどなかったのです。
そしてそこには自分のお小遣いの範疇で十分購入可能なブラジリアンブラックのタランチュラベイビーが。

かうしかねえなあ!?

そうして、ブラジリアンブラックの漆黒の美貌とは程遠い薄茶色の儚い生命体との共同生活が始まったのですが……

…………

2022/11/7撮影

まあかわええからええかあ!!!よろしくなぁ!!!

ゴキブリ


さて、こうしてタランチュラのケニーとの日々にも慣れ、餌やりも順調になってきたというものだ。


2022/11/23撮影

成長の賜物かどんどん体色も濃くなり、すこしタランチュラらしさが見えてくる。
 
タランチュラを飼う醍醐味の一つは、餌やりだ。
ピンセットで〆た餌に飛びつくタランチュラ。
そこにはいつものコロコロダラダラした様子はどこへやら、野生の狩人らしい彼らを拝むことができる。
残念ながらケニーはただでさえ少食なのに成長も遅いと来たものだから、そういう絵面はなかなか見れない。が、ネットで探せば、タランチュラが餌をがっつく、恐ろしげだがカッコいい動画が見つかるかもしれない。

ちなみに、楽瀬がケニーに普段与えている餌は

これである。
え?レッドローチって何、って?
簡潔に言うと少し清潔なゴキブリです。

餌に関する苦労話といえば、やはり〆た餌をタランチュラが食べてくれなかったとき、だろうか。
食べてくれればまだいい。こちらのやることは、脚程度の食べかすを処理すればよいだけの話だから。
だが全く食べなかったときは…ケージから再びレッドローチを取り出し、万が一生きてて脱走しないように
ティッシュでくるんで直接頭を擦り潰す。
タランチュラ本人の脱走もさることながら、タランチュラ飼いは餌の方の脱走も十二分に危惧しているのだ。

しかし一番まずいのは、食べかけのまま放置されたとき。
『断面』から黄白色の『何か』をこぼれさせたその姿と言ったら……

おぇっ!

脱皮と俺

タランチュラにとって脱皮、というのは誇張抜きに命がけだ。
脱皮不全という言葉にすべてのタランチュラ飼いは恐怖する。
そんな成長には必要不可欠と同時にとんでもなくヒヤヒヤさせてくれる脱皮だが、我が家のケニーは前述の通り成長速度についてはニブチンで、赤ちゃんのとき我が家に迎い入れて1年と少し経っているのだが、脱皮は三回しかしたことがない。

2023/1/12撮影

これは最初の一回目の画像。
彼あるいは彼女を迎え入れたのは10月末のことで、そこから11月、12月をまたいでも全く脱皮どころか、食事をする素振りすら見せなかった。
たまたま脱皮シーズンにお迎えしたのかもしれない、と自分を落ち着かせる日々だったが、それでも不安は収まらず、ケニーにYouTubeの動画を見せたり、シオカラ節のグルーヴをその身に宿させようとしたり、とにかくできるかぎりの趣味は押し付けたことはした。
だからこそ、今年のより遥かにマシと噂される2023年の正月気分が晴れてきた頃に、脱皮したケニーを見たときは、感動で涙を流してしまうところだった。
その後、やはり脱皮シーズンの拒食だったようで、丁度アマゾンで仕入れた先述の餌をモリモリ食べるようになり、一安心……と思いきや


2023/9/10撮影

ここで飼い主の方に異常事態が発生する。
2023年3月中旬、なんと自殺未遂で緊急入院したのだ。

自殺(未遂)した理由はここではないどこかでいずれ話す機会もあるだろうが、それはさておき。

唯一の飼い主である楽瀬不在でケニー危うし!と、
思いきや、ここで我がパパ登場。
パパはもとは生物に興味を持っていたお方で、一時期おばあちゃん(つまりパパのママ)から若干の顰蹙を買いつつリビングで爬虫類(フトアゴヒゲトカゲ)を飼っていた御仁。このフトアゴヒゲトカゲがまたキャラが濃くておもしれートカゲなのだが、ここではカット。
何を隠そう爬虫類飼育とタランチュラ飼育、似ても似つかないように見えて実はけっこう似ている両者。
もともと楽瀬がタランチュラを飼い始めた話に一番食いついていたのもあり、当面の世話係に。
申し訳ない…

そうして無事入院期間を終え、ケニーや家族に迷惑がかからず尚且つ即死できる自死方法に思考を向けつつ(痛いのはやなので…)、再び自室でのケニーとの共同生活が再開されて即これ。

この辺から、『そろそろ脱皮の最中の現場も見てみたいなぁ…』と思い始める贅沢な俺であった。


2023/11/9撮影

なんと

前回脱皮から2ヶ月足らずでこれ。
これには正直俺も驚いた。

しかも念願かなって脱皮の真っ最中

なんていうか……すっごい……生命の神秘……
そして、注目してほしいのが色。
脱皮したてのケニーさん、この記事で最初に貼った写真と比べ物にならないほどくろぐろとしていらっしゃる。 
もう彼はタランチュラベイビーではなくなったのだ。
ほんの1年、それでも彼をハエトリグモ程度の子蜘蛛から立派なタランチュラにするには十分だったようです。

……といいたいところですが。

タランチュラって、まだまだおおきくなりますからね〜?


タランチュラケニーの冒険は、まだまだ続くのであった…


おしまいに


2023/12/30撮影

そろそろ書くことに飽きてきたので終了のお時間。
こうして走り書いてみると、ケニーとの日々がたくさん浮かんできて、なかなかいい時間を過ごせたなと思っております。

どうせ閲覧者数一桁で終わるゴミ記事ですが、そのほんの少しの読者様に、タランチュラと過ごす日々の大変さとそれを上回る楽しさ、癒やしを事実のほんの一欠片でも伝えられたらいいな〜、と思っています。

今回紹介したタランチュラのケニー、私のInstagramのストーリでもたま〜に顔を出したり近況報告したりするので、もしよかったらフォローよろしくお願いします!!IDはtatikubi_rakuseです!!!



それではまた、次の記事で会いましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?