ゲームサウンド1999年頃の話

ゲームサウンドで必要とされる人材は時代によって変わってきていると思う

自分が新卒の仕事でかかわっていたのは
サウンドプログラマーだった。

なりたくてなったかはちょっと怪しくて
やっぱりサウンドクリエーターとして、BGMを作りたかったのだけど
自分よりも音楽を作れる人はたくさんいるだろうという感覚はあって
ただ、自分の自信のあったのは、当時のGM音源で作るような曲であれば
短時間でいろんなジャンルが作れる⇨量産ができる、というノリだった。 

でも、面接で話しているうちに、どうやらゲームならではの音楽が作りたいぽかった。
普通の音楽では自分は太刀打ちできないけど
ゲームならではの音楽表現であれば
コンピュータミュージックの延長で作れるような気はしていた。

コンピュータミュージックといっても当時はMIDIくらいの音楽で最先端だった。

最初はサウンドクリエーターとして応募していたのですが、
やりたいことを整理すると、ゲームの内容に応じて変化していくような
インタラクティブミュージックの仕組みに興味があり
そのためのツールを作るところから関わることになった。

C言語とかはわからなかったけど、
BASICとかMax/mspは触っていたので、心配はなかった。
何か必要とされている感じだったので、うれしかった。

当時はMac用のツールをC++で書いていた。
その前は、PrographCPXとかいうビジュアルプログラミング言語だったみたいで、その仕組みはさらっと眺める程度で、動いているものを目コピーしていた。

当時のゲーム開発環境はUnityみたいなゲームエンジンはもちろんない時代。
wavを用意すれば音が鳴る みたいな環境ではなかった。

そもそも、wavのフォーマットすら今とは違う感じ
44.1kHzで複数鳴らすとか、負担が大きすぎて専用のハードウェアを必要としていた感じだった。

ゲームハードのサウンド環境は、
最後のチップチューン時代。
メインのCPUとは別に音源を駆動するCPUやメモリが用意されているようなハードの設計だった。

それをゲームを動かすメインのCPUから操作するためのプログラムを
音源チップのメモリ上へロードして、音を鳴らすみたいな仕組みだった。
遠隔操作のような感じなので、通信プログラムとかの扱いに近いかも。

容量もとてつもなく小さいので、音楽のストリーム再生とかはちょっと難しい
でも、ADPCMの音を鳴らすことは可能な感じだった。
サンプラーみたいな感じで、ADSRとかのエンベロープや、波形のループなどができた。

ゲーム機の新しいハードが出るたびに、その音源の仕様も変わる。
複数のプラットフォームに対応しようとすると
いろいろ制限が違っていたり、ハードの仕様の共通部分や異なる部分など
クリエータが一つ一つ理解して作る必要があった。

でも、そこまで時間をかけて、学習して鳴らすというよりは、
もっと簡易に、良くある音を表現できるようにしないと
時間がもったいないというコスト感だった。

そこで、共通のデータ
MIDIファイルとサンプラー用の超短い音源を用意して、
音を作成し
どの機種でもだいたい同じように鳴るように工夫する部分を担当した。

機種によってはメモリが多かったり、リバーブなどのエフェクトが使えたり
ループ再生区間に制限が違っていたり、エンベロープの種類が違ったり、LFOの種類が違ったり、擬似的なMIDIシーケンス処理がメイン側駆動か音源チップ側かなど違ったりで、音の処理の負荷かかる勘所がちょっと違ったりといった、様々な差異があった。

それを吸収して、いろんなハードの共通部分を、ハードでできる部分はハー
ドで、それ以外はソフトウエア処理でごまかしたりしていた。

当然ソフトウェアでごまかすと処理が重くなってうまく動かないなど発生する。
例えば、ある機種ではピッチベンドがハード側だったけど、ソフト側で行うとピッチベンドの精度がでないとか、処理落ちしてしまうとか。
ハープのグリッサンドみたいな音が、発音負荷が高すぎてしまうとか。
その場合は、データの持ち方からどう改善すべきかなど検討が必要になる。

エミュレーターや、サウンド部分の低レベルでの移植作業の部分を代行して担当していたのかもしれない。

もし移植して、機種によって音が違ったりするのもそれはそれで味わいがあるけれど、製作者の意図しない変化の場合はNG。

仕組みは用意しても、癖が強い機種とかだと とりあえず音が出ています くらいまで劣化してしまうことにもなる。
そういう場合はサウンドクリエーターがデータ側から対処する必要がでてくる。

この時ゲームのタイトル特有の対応は、サウンドクリエーター(デザイナー)が行い、どのゲームでも共通の部分については、自分のところでサポートするという作業分担になっていた。

ハード特有の機能は魅力的だけど、制作現場の実際からは少し現実的でないときがある。 新しい機能面白いけど、この機種で使うと、こっちの機種では動かないから演出2通り、調整も2倍 とかかけられるタイトルとなると少なくなってしまう。

あと、分業が進んだ結果、クリエーターが表現可能な範囲を新しい技術へ向けなくなってしまう(あるいは多方向へ向ける)ような流れになっていき、
最終的には、ストリーム再生(メモリ消費を抑えながら長い音を鳴らす)という方向へ進化していったようだった。

ストリーム再生は偉大で、メモリの制限や機種ごとの差異を減らすことができた。CDから音を鳴らすみたいな感覚になる。
ただ、ゲームっぽさが無くなってしまった要因でもあるし、音楽の作成コストが大きくなった部分でもある。
どっちにしても、新しい音が鳴るときは感動していた。

もともと、たいした音質で鳴らせなかった音が、CDクオリティで鳴らせるようになったので、音の扱いがゲーム以外のジャンルと同レベルに
収録した音も扱えるようになったりすると
スタジオ環境が必要になったり、ミュージシャンも必要になったり、そのための楽譜とかの準備も必要になったり、レコーディングエンジニアさんもかかわってきたり、素材部分をしっかりつくる必要がでてきた。
ディレクションの仕方も変わってくる。

分業化がすすんでいった結果、とても予算がかかるようになっていく。 
やっかいなことにゲーム以外の音楽や映画にくらべてゲームの体験時間はとても長いので、同レベルでそのぶんの音楽を用意するとなると、普通に考えてコストがかかりすぎる。

容量も増えていくし、収録楽曲数も増えてしまいがち。
大変な時代になってしまったようにも思える。

そうはいっても、クリエーターが何をしたいのかのリサーチは欠かせない。
いろいろな作業現場へ顔を出しては、「何か困ったことありませんか」と聞いて回っていた。そこから、現在どんな要望や要求があって、どんなところに困っていて、どこに解決策があるのかなどの相談や予想ができたりする。
ツールを提供している側と、実際使っている側でうまく伝わっていないところとか、そういうのも実際会って話してみて吸収したりする。

幅を広げていくと、いろんなゲーム開発者と関わってくることになる。
たとえば、モーションに合わせた音の修正作業がきついとか、それぞれの分野での相互理解が必要な部分もでてくる。

ゲーム開発ではそういうのが日常茶飯事でおきている。
なかなか一筋縄ではいかないところもあったりする
解決方法も多種多様

けれど、
それをなんとか乗りこなして、うまくいった先に、面白いゲームがあるのかもしれない。

ゲーム作りのなかで、サウンドの担当部分はなかなか見えない部分でもある。

サウンドの人にお願いすると、魔法のように実現している、
という縁の下の作業を行うような。
その時々で何が必要なのかは変わっていくので、常に先端で浸っていたいというのは、今でも変わらないし、新しい技術はどんどん学んで吸収して、ゲームに応用していきたいと思う。

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