国民主権・住民主権保障法の骨子、国民主権の実現に向けて

1.国政の欠陥

 日本国憲法では主権者国民>国会>行政・司法という権力構造が規定されていますが、実際は民意が政治に反映せず、各種規制緩和、法人税減税&国民負担増(消費税増税、社会保障負担増)、政府債務拡大、官業民営化などが実施され一般の国民が不利益を被る政策を政府は推進しています。
 各種団体・企業・政党・メディア・政党などはこれをサポートする役割を担い、多くの政治家、官僚も、このことで利益を得ています。
 今回お話しする国民主権・住民主権保障法(案)は、日本国憲法に規定されている国民主権を実現するためのものですが、その内容をお話しする前に、国民主権が不当に制限され、民意が政治に反映されない現状を、先に確認したいと思います。

【政策決定に強い影響力を及ぼす外国・経済界】

・日米安保条約、日米地位協定に基づく日米合同委員会において、日本側の官僚が米軍の関係者と、日本の主権を放棄する内容を含む、在日米軍に関する密約を結ぶ、非民主的な政策決定構造。
・「アメリカの意向」をバックにした日本の官僚が権益を維持。各種規制改革政策など。
・内閣府において、委員が民間人で構成された審議会が米国の要望に沿った答申を内閣に提出、一方、経団連を中心とした財界が同じく政府に提言をする、という政策決定プロセス。

【公権力乗っ取りの道具として機能する政党】

・与党が議院内閣制において立法府と行政府の双方を同時にコントロール
・与党党首が首班指名を受け行政府の長となると、内閣と国会双方に強い影響力を持つ。国会が内閣を牽制する機能が弱くなり、国会が内閣=行政に従属する構造。
・内閣主導で政策も法律案を国会に提案、党議拘束があるので、与党の賛成多数で政府提案が可決される。
・強大な権力を持つ与党が、企業・団体から政治献金を受けると、国政に民意が反映しない。
・所属政党からの公認・推薦、比例代表名簿、そして党議拘束があるため、「全体の奉仕者」であるはずの国会議員・首長・地方議員は党の(スポンサーの)意向に沿って権力を行使。

【民意を反映しない選挙・罷免制度】

・衆議院選挙の小選挙区制、参議院選挙の一人区は、死票が多く出やすく民意を反映しない。
・政党が国民の代表を決める比例区。
・立候補に際して極端に高額な供託金制度があることで、資金のない人にとって実質的に国民(住民)の代表になれない制度。被選挙権の不当な制限。
・憲法第十五条で国民に保証された公務員の罷免について、国民審査を除くと、国会議員・認証官に対して罷免権行使するための手続法がないため、国民の信頼を裏切る行動をとっても、国民が辞めさせられない。投票=白紙委任に。

【行政に取り込まれる司法】

・内閣が裁判官を任命し、裁判所と法務省・検察庁は結びつきが強く、司法が行政に取り込まれて、行政への牽制が機能しない。
・行政府の中の検察が実質的に公訴権を独占しており、権力の犯罪に対する法の支配が不十分になる。

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2.国民主権・住民主権保障法の骨子

 それでは、これらの問題を解決する国民主権・住民主権保障法(案)の骨子をお話ししたいと思います。
 国民主権・住民主権保障法(案)は、現憲法で保障されている国民主権を機能させるため、国民の主権行使の機会を保障するものであり、最高法規である憲法は変えない前提です。
 内容は以下の八点になります。
1)国民(住民)による公務員の罷免権行使の手続き
2)直接民主制、国民の発議権行使の手続き
3)政治資金について
4)地方自治について
5)国民公務制について
6)公職のくじ引き選任について
7)日本国憲法・条約・法律との関係
8)施行・改定手続き

1)国民(住民)による公務員の罷免権行使の手続き(関連新法施行)

 日本国憲法第十五条に、国民主権を機能させる手段として、公務員の選定と罷免が国民固有の権利として規定されています。
日本国憲法
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
 特に、国民による公務員の罷免権行使は、最も強力な権力者への牽制で、これを保証することで、国民主権が初めて機能します。
 以下が私が考える公務員罷免のための手続きになります。
①対象:国会議員、首長、地方議員
2年に1回審査投票、選挙区関係なく不信任複数投票可(例えば最大5票まで)、不信任が投票者数の過半数で失職(補欠選挙or次点者繰り上げ当選)
②対象:最高裁長官(日本国憲法6条2)、認証官(日本国憲法7条5、国務大臣・副大臣、検事総長他検察最高幹部、最高裁判事他裁判所最高幹部など)
罷免発議(一定の要件を満たした請願)→請願審査→国民投票→不信任過半数で失職

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(少なくとも)国会議員は国民が直接辞めさせられる、と憲法に書いてある。|新田たつふみ Kindle電子書籍 日本民主化計画 (note.com)
#日本国憲法 #第十五条  #国民主権 #住民主権

2)直接民主制、国民の発議権行使の手続き(関連新法施工)

 第十六条の請願権も、一定の条件を満たした請願を国民発議として扱い、国民投票・国会決議を実施するよう関連法を整備することで、国民の権力の行使の機会を増やすことも可能になります。
日本国憲法
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
 これにより、国民の意思で、政策を発議すること、行政処分の情報公開をさせること、選挙制度を変えること、条約・法律・政令を廃止すること、なども可能になります。
 さらに、請願をもとに法律・行政処分の憲法審査の国民投票を実施することと、裁判所・検察の幹部を上記の公務員の国民による罷免権行使の対象とすることで、司法の民主化が実現することになります。
内容は以下の3点です。
①一定の要件を満たした(例:有権者の1割以上の署名)請願→請願審査→国民投票→国会審議・評決→行政・司法の決定
②国民投票結果は国民の厳粛な信託であること
日本国憲法前文 …そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるもの…
③国民投票結果と国会の評決、行政・司法の決定の関係
国民投票結果>国会の評決>行政・司法の決定

 公務員の罷免手続きと併せて発議権が保証されれば、主権者国民>国会>行政・司法という日本国憲法で規定されている権力構造が実現し、国民主権が機能します。そして、国民が主権者として、自ら社会問題を解決していく体制が整うことになります。
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#日本国憲法 #第十六条  #司法の民主化

3)政治資金

日本国憲法
前文 …そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるもの…
第十五条 2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
 公務員が外部から金銭を受領すると、一部の人たちのエージェントとして権力行使するリスクがあり、最近も政治資金パーティ収入の裏金化が問題になっています。
 以下が政治資金に関する内容になりますが、政治にまつわるお金に関しては課税対象として法規制することで、税務署の監視対象にするべきです。

・供託金制度廃止(公職選挙法第九十二条・九十三条)
・企業団体からの献金禁止(政治資金規正法第二十一条)
・政治資金パーティ禁止(政治資金規正法第八条の二)
・政党交付金廃止(政党助成法)
・政治資金団体への課税(政治資金規正法)、宗教団体への課税(宗教法人法)
・通報制度(政治資金規正法)
・違法献金、脱税に関する罰則

4)地方自治(地方自治法、地方公務員法)
・地方自治体と中央政府との平等な関係の保証
・国家機関職員の地方自治体への出向禁止
・警察・税務署等中央政府の行政機能を市町村へ移管、市町村議会が地方に移管された行政機能を最終監督(地方自治体の権限の拡大)

 国家権力の牽制として三権分立の話がよくあげられますが、日本国憲法やその他の法律に三権分立は書いておりません。国家権力を3つに分けて牽制させるというアイデア自体悪いとは言えませんが、主権者国民が出てこない三権分立の説明は、国民の主権行使を制限するための方便だと思います。
 国家権力を牽制するには、権限を地方に移譲すること、地方が中央を牽制していくことが重要です。
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国家機関の暴走を防ぐには、地方自治を機能させる必要がある。|新田たつふみ Kindle電子書籍 日本民主化計画 (note.com)

5)国民公務制(国家公務員法、地方公務員法)

・(地方自治体含む)選挙で選ばれない行政機関・司法機関の雇用の機会を、国民全般に有期(例えば2年)で開放。原則すべての職位に適用。
・公的部門の雇用の流動性を高め、利権を排除
・登録希望者の中からくじ引きで選任。(任期2年)
・多様な働き方、例えば半日だけ公務に就く、週2日だけ公務に就くといった柔軟な勤務が可能になれば、公務の傍ら、資格取得の準備をする、起業の準備をするといったことが可能に
・休日に公務につくことで、行政サービスの向上にも
・人員を削減せずに行政コストが削減できる
・セーフティネットとしても機能
・障害のある人には有期の雇用期間を延長適用
・公務実績に応じて、教育費支給や年金の増額等のインセンティブ付与可能
・公務で職業キャリアが中断されるので社会全体で雇用の流動性が高まる

 直接民主制で国民が選択した政策を、主権者国民が公務員として実施することで共同体社会が実現。
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国民公務制|新田たつふみ Kindle電子書籍 日本民主化計画 (note.com)

6)公職のくじ引き選任(くじ引き民主制)(公職選挙法)

・国会議員・地方議会議員のくじ引き選出:
議員定数の1/3ないしは2/5を上限に有権者からくじ引きで選任。
→政党の多数派工作・公権力乗っ取りが困難に。

日本国憲法前文に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し…」とあり、議員定数の過半数を超えない範囲でのくじ引き任用であれば合憲と国民が判断すれば問題ないかと思われる。

7)日本国憲法・条約・法律と国民主権・住民主権保障法との関係

・日本国憲法>国民主権・住民主権保障法>条約・法律・その他行政・裁判所の決定
・成立に伴い、速やかに関連条約・関連法の改廃、関連新法の施行

8)国民主権・住民主権保障法の施行・改定手続き

・国民投票実施し賛成過半数で施行
・国民投票で賛成過半数で改定

3.不断の努力

・国民主権を実現するには主権者国民の不断の努力が必要という憲法上の規定
日本国憲法 第十二条 
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
・国民が行使する主権に参政権があり、選挙権や被選挙権以外に、罷免権・発議権(未実現)も参政権。これらも日本国憲法十二条の不断の努力の対象。
・国民主権・住民主権保障法施行で権力行使の機会を増やすことで、日本国憲法で定められた不断の努力のための、具体的な方法を法制化することになる。

いかがだったでしょうか。
8項目以外で重要なことや、実現に向けたアイデアなどありましたら、コメント欄にてご教示お願いします。
最後にこちらもよろしくお願いします。
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