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大学院におけるティーチングアシスタントの自己効力感の研修前後の比較

Comparison of self-efficacy among graduate teaching assistants before and after training

Hexiang Peng, Tao Wu
Medical Education, 2024

背景
ティーチングアシスタント(TA)は、教員-学生間において、重要な役割を担っています。TAを通じて、大学院生は教員と協力しながら、教育的責任を経験する機会となります。したがって、大学院生・教育者にとって、TAトレーニングの重要性は高まっています。自己効力感はTAの教育効果に大きな影響を与えます。Albert Banduraによる自己効力感理論では、「「将来の状況に対処するために必要な行動をどれだけうまく実行できるか」と提唱されています。先行研究では、教師の自己効力感が学生の成果、動機付け、教師のパフォーマンス、そしてコミットメントに重要な役割を果たすことを結論付けています。そのため、TAトレーニングにおいても、自己効力感は評価すべき重要な指標です。

目的
TAに対するトレーニング前後において、自己効力感は変化するのかを調査する。

方法
北京大学ヘルスサイエンスセンターでは、TAが職務の要件を理解し、教育概念を形成し、教育能力を高めることを目的として、TA訓練プログラムを実施しています。訓練プログラムには、TAワークショップ、TAサロン、デモンストレーションレクチャーなどの一連の訓練活動が含まれています。本研究では、2017年から2019年にかけてTA訓練を受けた医学大学院生を対象としました。データは、3年連続の秋学期にわたって訓練前後に系統的に収集されました。データ収集には、定量的および定性的データが含まれています。訓練前には、TAは自己効力感に関するアンケートに回答しました。そして、訓練の必要条件を完了した後、フォローアップのアンケートを提出し、教育アシスタントの認証を受けることができました。

結果
合計372名のTAが訓練前後のアンケートに回答しました。TAは訓練前の自己効力感の中央値が88点、訓練後は85点であり、訓練を受けた後の自己効力感スコアの中央値の減少が統計的に有意でした(P < 0.001)。しかし、訓練が学生のパフォーマンスや課題の公平な評価(Q6)や教師としての責任を果たす自信(Q10)に関しては、自己効力感の変化は有意ではありませんでした(Q6のP値 = 0.406、Q10のP値 = 0.364)。

結論
本研究で実施されたTAトレーニングによって、自己効力感は減少することが明らかとなりました。原因として、TAの教育的意義を理解することで、自身の能力と要求される能力のギャップを明確に認識するようになったことが考えられます。この結果は、TAトレーニングが教育スキルの向上だけでなく、TAの自己効力感を支える内容を組み込む必要があることを示唆しています。

学び
自己効力感が低下しているが、それは能力のギャップに気づくことができるようになったとも言えるということは興味深い。このトレーニングの学習目標において、自己効力感に関する内容も含めるのであれば、やはりそれに関するプログラムも含めるべきだろう。Banduraの理論を活用するとすれば、TA経験者にTAによって得られたことを語ってもらうことなども検討できそうである。


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