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MLMの功罪 -That's not the shape of my heart.

って事で、いつの間にか20年近く経ってたので、昔を思い出して徒然に。

【03.12.03】

 MLM(マルチレベルマーケティング)

 この話を書こうか書くまいか随分迷っていたのだが、MLMと呼ばれる商形態について。一時期はNB(ネットワークビジネス)なんて呼ばれていたが、語感が悪いのか、最近はMLMという呼称を積極的に使っているらしい。この商形態で最も有名なのは恐らく「AMWAY」って会社なんだと思う。私が大学に入った頃には既に手を染めている奴も居たので、かれこれ20年以上続いている商形態なのだろう。

 この手の話を書こうとするとどうしてもプライベート絡みでの限界があるのだけれど、1週間程前、「こういう仕事(ディストリビューター)をどう思いますか?」っと、ある人物から尋ねられた。どのように私が答えたかは既にうろ覚えなのだけれど、尋ねた相手が満足するような答えでは恐らくなかったように思う。正直、私はこの手の商形態に馴染めないというか、「嫌い」なのだ。

 前述のAMWAYに始まり、ニュースキンに歯磨き粉の要らない歯ブラシ、浄水器などなど。過去、少なくない知り合い(友達とは書かない)がその手の商形態に手を染めるのを見てきたが、彼等から商品を購入した事は一度もない。もっと言えば、冗談ではなく真面目な商談として私に話を持ちかけた時点で、私の方から知り合い関係は終了してきた。なんというか、哀しくなっちゃうんだよね。彼等は常に、その商形態の適法性を強調するのだが、そうせざるを得ない所に、この商形態に関わる人々の心の迷いが見え隠れするように思うのだ。

 もっとも、人間なんて権威や外見に弱いので、八百屋のリンゴとデパ地下のリンゴじゃデパ地下のリンゴをありがたがる人も多いだろうし、同じ新車が欲しいのなら、立派な建物のバイク屋と寂れたバイク屋なら社屋の立派なバイク屋で買う人も多いだろうから、店舗すら構えないMLMという商形態はそういう意味では辛いのだろうが、同じように店舗を構えない「農家の野菜ネット販売」とは明らかに違うと思うのだ。

 「なぁ、俺ら友達やろ? 俺がお前に悪いもん勧める訳あらへんやん。物はエエんやって。俺も使てるし。こんな科学データや研究結果もあるんやで。騙されたと思ていっぺん使てみてや」「この商形態はアメリカのなんちゃら大学で研究されていて~ 21世紀の流通形態は~」「ネズミやないんやって」etc、etc。言葉こそ違えど、彼等のもちかける商談の内容は、商品が違うだけで概ねいつもこんな感じだ。そのそれぞれについていちいち突っ込むつもりも気力もないけど、「あぁ、こいつにとって俺は単なる金づるなんだなぁ…」っと哀しくなっちゃうんだよね。

 商取引において、人間関係はとても大事だ。散髪するなら私は今月もいつもの理髪店に行くだろうし、今度新車を買うのなら、多少金額が高くても懇意のSBSから買うだろう。同じように、もし彼等が私の欲しているものを販売しているのなら、知らない誰かを儲けさせるよりは、彼等から買うかも知れない。そう、私がこの商形態に感じる違和感は、信頼関係を築く際の順番が逆な点にあるんだろう。商取引を通じて信頼関係(殆どが商取引上の信頼関係だが、友情に発展する事もある)を築くという、私が長く慣れ親しんだプロセスに逆行し、商取引に馴染まない(と私が思っている)友情という信頼関係が既にあるのだから、商取引上の信頼関係もまた当然のように成り立つという発想をベースとした商形態であるが故、私はこの手の商形態に馴染めないんだな。まぁ、昭和40年生まれのおっさんなので、既に相当頭が硬いんだろうけど(笑)、少なくとも私が抱いている友情ってのはそんな感じではない。

 以上のような理由で私はこの商形態が嫌いだし、削減された筈の流通コストは一体何処に消えたのか?などのシステムとして見た時の書き足りないモヤモヤもまだまだ沢山あるのだけれど、存在自身を否定するつもりもないし、扱う商品の良否を判断する立場でもない。中には本当にイイ商品を扱っており、本気で私に勧めてくれる人も居るんだろう。お気軽なサイドビジネスではなく、ある種のプライドを持ってディストリビューターをしている人もいるのかも知れない。だがしかし、ならば尚のこと。

 「違法じゃないんだ」なんて哀しくなるような言葉を使って俺に近づくのはやめてくれ。

上記は、ワシが当時運営していたWebページの日記からの抜粋なんだけど、なんつ〜か、彼らが当時熱く語ってた流通革命なんてのは、その後一向に起きる事がないまま時代は平成から令和に移ってしまっててですね。

まぁ、当時と物価がほとんど変わらないってのも、それはそれで問題だと思ったりもしますが、MLMに代表される、金持ち父さん系のビジネスは、手を替え品を替え、相変わらず生き残ってるみたいです。

MLMって商売は、

「今のあなたに足がないのは努力をしてこなかったからだ。ほら、足があるあなたは、こんなに素敵じゃないか」

って口車で、足があるように映るマジックミラーを蛇に売り付ける商売だとワシは思ってるんだけど、もしあなたに、本当に足があるのなら、それは努力の末に生えてきたのではなく、もとから生えていた足が大きくなっただけだ。

自分が蛇だと思っているトカゲに対し「君は蛇じゃなくて本当はトカゲなんだ」と教える事は優しさだと思うけど、足がない蛇に対して足がある事の優位性を語り、努力次第では蛇にも足が生えると語る事は、優しさの対極にある行為だとワシは思う。

 I know that the spade are swords of a soldier.
 I know that the clubs are weapons of war.
 I know that the daiamonds mean money for this art.
 But that's not the shape of my heart.

 世の中では権力やお金が力を持っていることは知っているけど、
 それは僕の愛の形とは違うのさ

 The Shape of My Heart from "TEN SUMMER'S TALES / STING"

いやほんと、足が生えてくればいいんだけどね。

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