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KiNvis療法をやってみた:慶應大学病院での私の体験

2023年12月6日から29日までの約3週間、私は慶應大学病院に入院していました。今回の入院の目的は、革新的な「KiNvis療法」を受けるためでした。皆さんは覚えているでしょうか?実は、7月にも同じ病院で「HANDS療法」を体験していたのです。いわば、HANDSの次のステップとしてKiNvisを受けたということです。


HANDS療法とKiNvis療法、これらはどのように異なるのでしょうか?

HANDS療法は、手指の微細な動きと脳の連携を重視する治療法です。具体的には、特殊な電気刺激装置(随意運動介助型電気刺激装置: IVES )を1日8時間装着し、3週間、訓練のみならず日常生活でも麻痺手の運動を促すものです。HANDS療法はもはやメジャーで、全国各地のリハビリ病院でも幅広く用いられているものです。

一方で、KiNvis療法は、運動錯覚を持ちいて上肢の麻痺を治療するというものです。正式名称は、Kinesthetic illusion induced by visual stimulationといいます。まだ相対的に新しく、2019年頃にインターリハ社から発売開始になったのがきっかけで、徐々に多くの病院でも見られるようになっている模様です。現に私が普段からお世話になっている初台リハビリテーション病院でも、すでに導入してテスト運用中だと聞いています。

錯覚というのはどういう事?

ここで言う錯覚とは、VRゴーグルを掛けて、自分の麻痺手があたかも動いている錯覚を持ちいるということです。どういうことか、論文の中から抜粋した写真をお借ります。

この写真では、左手が麻痺していると仮定していますが、実際にVRゴーグル越しには、3DCGで合成された左手を見てトレーニングを行います。具体的には2つのメニューがあります。
一つは、すなわち何もしないで映像を見るだけのモードです。映像を見るだけで、麻痺手に流れる電気刺激により、あたかも手が動いているのを錯視させる方法です。これは、「動け」と力を入れようとしないでやる、いわばパッシブモードです。

もう一つが、アクティブモードです。これは、被験者の筋電から動かそうとしている信号をセンサーで読み取り、一定の閾値を超えた場合に、パーの映像が駆動され、且つ電気刺激も流れるとなります。

整理するとこういう位置付けです:

KiNvis(パッシブモード)
何もしないで映像を見る。より重症の患者さん用
KiNvis (アクティブモード)
筋電により駆動された、自らの意志に近い映像を見る。より難易度は高め


これを1時間のセッションのうち、前半と後半で分けてやります。例えば、僕は初日から4日目までは、1時間映像を見るだけで終わりだったのですが、5日目からは、後半のパートはKiNvis アクティブモードに移行したのです。


僕の感想:あくまで個人的な意見

KiNvis療法の過程では、日々小さな進歩を感じていました。このファイルをご覧ください。

5日目からのアクティブモードでは、日によって波はあるものの、徐々に成功率が高くなっているのが分かります。これは係数のところを見ていただくと分かるのですが、伸筋(指を伸ばす筋肉)の係数は高いほど,屈筋(指を曲げる筋肉)の係数は低いほど,難易度が上がるように設定されています。

またKiNvisの入院期間中、平日には1時間OTの時間が付いているのも良かったです。オマケに、1週間で1単位(20分)のPTがついてるのも良かったです。

なので、こんな事が出来るようになりました:

  • ハードタイプのグミを掴んで食べるという動作が出来るようになった。(特に掴んだ後に回外の動作を伴って口に運ぶ)

  • FMAスコアは19から20になった。(1ポイントでも改善するには、相当大変なものです)

  • 握力は9kg、ピンチ力は2kgになった。

前回HANDSの退院時のもの。このときから、また改善しました!

特に顕著だったのは右肩の動きで、入院初日に比べると、最終日には格段に改善していることが実感できました。筋肉の動きでいうと、三角筋の中部と後部。ここを集中的に鍛えることに特化して取り組みました。また、HANDSの時にやった右手でEnterキーを押す作業。今回はこれを大幅強化して、700回押すなどに取り組みました。

地道な取り組みですが、いつかこれが報われる日を信じて。。

このEnterキーを押すという作業、HANDSのときは、右手の全神経を集中して押してましたが、今回は新聞をタブレットで見ながら叩くに移行しました。こうして徐々に右手の参加度合いを高めていき、最終的には右手も使ったブラインドタッチにまで持っていければと思っています。

今後のステップについて

慶應でのステップとして、2024年内には始まるという新しい研究テーマに期待しています。

さて、次の大きなマイルストーンとして、北海道大学で行われている治験にエントリーしました。

北海道大学での治験にエントリーしました

結局、聖路加国際大学病院ではなく、慶應大学病院の先生にお願いしてエントリーしました。これは、脳出血慢性期の人に向けたいわゆる再生医療になります。北大が世界に先駆けて行う治験で、今回4人に選ばれるかどうかです。

https://www.huhp.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2023/12/20231201_press.pdf

さて、この結果はどうなるでしょうか?

ただ言えることは、私の旅はまだまだ続くということ。この経験を通じて、新たな発見や学びがあることを確信しています。
私の療法体験に関して、もっと深堀りした内容や疑問点があれば、ぜひコメントで教えてください。それでは、良いお年をお迎えください。

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