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日本語教育の未来について想うこと

 初めまして、ワンテラスという外国人紹介事業を行っています、石中達也と申します。事業をベトナムからスタートして5年目に入ろうとしています。外国の方の就職や留学などを支援する中で、日本語というものは避けては通れず、創業時から日本語教育というものに関して向き合ってきました。今や音声認識も精度も高まり、ポケトークのようにレベルの高い翻訳機なども活躍するようになったり、またバーチャルな世界で言葉や国境の壁を越えて、仕事ができたり、旅行ができたりと体験が進んでいるかと思います。

 そんな中で日本語教育というものがどのように意味を成すのか、そもそも必要なのかなど、ご意見あるかとは思いますが、携わる中で日本語教育の未来に関し、感じていることを纏めてみました。日本語教育業界の方々や関係者からみた目線とは異なるし、誤った情報もあるかとは思いますが、想いとしては、総じて日本語教育業界や外国人領域がより広がり、世の中が良くなることに繋がっていると信じており、ワクワクする未来になればと思っています。

 また私たちが日本語教育に取り組むことによって目指したいものが、まず日本語を学ぶ方にとって、ゴールに適切にサポートでき、(その人にとって必要なら出口である就職や留学、その国で日本語を生かして働く環境までを用意すること)、学習をテクノロジーとカリキュラムにより最大限効率化すること、そして学習意欲を高め続ける講師陣やコンテンツを用意することです。また日本語を教えることや学ぶことをより身近にして、多文化共生に繋がり、お互いの理解が高まりスムーズなコミュニケーションや信頼性が生まれるようになればと思っています。もちろん学校で学びたい(留学したい)、専門的な学習がしたいなど、希望は異なると思いますので、その時に最適な選択ができるように学べる、教えるをもっと身近にしたいと思いますし、私たちも日々日本語を使っていますので、そんな日本語教育自体も世の中にとってもっと身近になっていければと思っています。

初めに

 私たちは、ベトナム、ミャンマーで日本語教育に取り組み、日本への就職先を紹介し、国内外でオンライン日本語のサービスを提供しています。また日本語学校向けの学生管理システムを日本語学校、専門学校、大学などに100校弱提供するなど、日本語教育業界との繋がりや、社員にも日本語教師の有資格者の方が多くおり、日本語教育とは繋がりがある環境です。学生管理システムも取り組んだ背景としては、事務作業などを効率化して、もっと先生方が生徒と話せる時間を増やせないか、より学習を最適化できるお手伝いができないかという所からスタートしています。

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※ミャンマーの日本語教育の様子

昨日も私はミャンマーの社員と会話をしていました。英語で話す中で、うまく伝えづらいところを日本語で通訳などを挟んでもらいました。翻訳機や通訳を介してもコミュニケーションはできますし、また日本人が英語を話したり、ベトナム語やミャンマー語を覚えれば良いだろうということもあるかとは思います。日本語でなくても、コニュニケーションをお互いの言葉や英語など共通言語でスムーズにできるようになれば、よりお互いのニュアンスや想いがダイレクトに伝わると想います。もし日本語教育というものが例えば、好きな日本の歌手の歌の意味を知りたいなど、コミュニケーション以外でも、目的に応じて異なって良いと思いますが、もし日本語を学びたい方や、教えたい方にとっても、日本語教育がより身近になればと思っています。私自身は日本語教育を学んだことも、大した知識もありませんが、そんな素人が日本語教育に触れて思ったこと、そしてどんなことに取り組んでいるのかを書いていきたいと思います。

日本語教育との出会い

 私が2016年夏に初めてベトナムホーチミンに訪問した際に、日本語学部のある人文社会大学にて、日本語を学ぶゼミ(東日クラブ)の集まりに参加したことがきっかけでした。日本語を学んでいる方々が集まり、日本人1名に5、6名が集まり、彼らが少額ですが参加費を支払って参加するなど、日本語を学びたい方が多く、意欲に溢れていた場所に出会いました。(お金を払って日本人と会話したいと思っていることが個人的にはかなり衝撃的でした)「日本語を学んでいる、日本人と会話をしたい、日本で就職したい、日本に留学したい」など、日本語や日本に興味を持っている多くの方に出会いました。そんな日々の中で、日本語学校を運営しているチュン先生に出会いました。チュン先生は日本にも留学経験もあり、日本語も堪能な校長先生でした。何度も話したり、食事を重ねる中で、チュン先生が日本語教育を教えている理由を伺いました。チュン先生が日本の大学に留学した際に、日本の文化や日本人の考え方を知るきっかけがあり、日本が戦後立ち直り、世界から尊敬されるようになったのは、利他の精神があることだと学んだそうです。ベトナムが今後世界から尊敬されるようになる為にも、日本語を通じて日本人の考え方を伝えたいと思って日本語教育をスタートされたとのことでした。語学学習とは、その語学だけではなく、語学を通じて考え方や文化などを知れるということを改めて感じたきっかけになりました。

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※チュンさんが運営する南日南日本語学校

 マレーシアや中国、欧米では英語や中国語など言語を自分が学んで相手とコミュニケーションを行うことが多かったのですが、改めて日本語を学習する方々や教える方々に出会うことで、学ぶこと自体の意味や、学んだ後の出口、コミュニケーションの面白さなど、日本語教育というものを意識するようになりました。

 「そもそも日本語教育とは何であるのか」に関しては、私は明確に答えられませんし、戦前、戦後、そして現在と日本語教育というものの捉え方や教え方、意味自体も変わりつつあります。様々な著書、論文や研究があり、専門ではありませんので、コメントは割愛させて頂きますが、私は、関わった方にとって日本語を学んだこと、教えたことが良かったと思ってもらえるようになれば嬉しいです。

日本語を学ぶ流れ

 ベトナムやミャンマーで日本語教育に携わる上で、まず日本語については、日本語能力試験(JLPT)と呼ばれる試験勉強の対策を目標に日本語を学んでいることがわかりました。
日本語レベルは、初級のN5からスタートして、N1が一番高いレベルです。
認定のレベルに関しては、目安が定まっています。
参照:日本語能力試験とは(https://www.jlpt.jp/about/levelsummary.html)
いくつかのベトナムの日本語学校に見学にいきましたが、初級クラスはひらがなからスタートしていきます。ベトナムの場合は、N5からN3までは、みんなの日本語(https://www.3anet.co.jp/np/list.html?series_id=1)、まるごと日本語(https://www.marugoto.org)などの教科書に合わせて進めているケースが多いです。N2以上になると定番の教材が多いわけでは無いのと、教え方に差が出やすい為、ベトナム国内で対応できている日本語学校はそもそも多くありません。ベトナム国内でN2やN1を目指す方の数も初級の獲得を目指す方よりも少ないというのも理由かもしれません。(日本留学ではN5の段階で来日し、最大2年間の日本語学校在学の中で、N2取得を目指して卒業するケースが多いので、日本に来てからそれ以上を学ぶ方も多いです)

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※ドイツ企業であるBoschのホーチミンオフィス内に、日本語を学ぶコーナーがあり、日本人社員はほとんどいないが、有志の方々で日々日本語を学んでいます。それくらい日本語が身近です。

 そもそもでは何が日本語学校ごとの差別化になるのかというと、教案(授業の進め方、何分に何を教えるなどが書いたもの)、副教材や小テストや宿題などが学校ごとの特徴が出やすいです。また教師の教え方や動画教材など、興味を持って、自発的に勉強できるようにするための教え方は英語学習と同様に各学校の特徴があります。ミャンマーやベトナムで日本語教育を現在行っておりますが、日本語学習の際には、学習の度合いに合わせて日本人の教師か現地人の教師の授業なのかを調整するなど、最適な学習体制や、教師によって教え方にバラつきが出ないような教師の研修など、やることや工夫の余地はかなりあります。

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※チュン先生はこのようにオリジナルの教材なども多く用意しています。

 現地で日本語教育を現地の方が行うケースもあれば、日本人で日本語教師養成講座などを受けて、資格を取得した日本人の日本語教師が行うケースもあり、どの日本語能力を高めるか(試験対策、会話力向上など)によって異なりますが、日本人の日本語教師を海外で求めるケースも多くあり、定年退職後に、日本語教師養成講座の資格を取得して、海外で働く方なども多くいらっしゃいます。

日本語教育を学んだ後、日本に来る流れ

海外で学んで、日本に来る流れは目的によってかなり異なります。
ワーキング・ホリデー制度がある国もあれば無い国もあります。
観光以外で中長期滞在する多くの場合は、日本への留学や就職を目的で来ています。
例えば、留学の場合は、日本語能力試験N5取得、もしくは学習時間が150時間以上など、ルールが決められています。技能実習制度などで来る場合は、現地での学習に加えて、日本に来てからの研修期間の間に、日本語を更に学ぶ必要などあります。
日本語を現地でどの程度学習してくるのか、もしくは日本で学んで就職や留学などの選択肢を選ぶかなど、状況や環境によって色んな選択肢があります。
日本語学校も日本では現在800校以上であり、10年ほど前と比べると2倍以上になっています。各日本語学校では、例えば美大受験の対策コースや、短期間学習ができるなど、差別化がある教育などを行っています。

日本語教師と出会って初めて知ったこと

 ミャンマーやベトナムで日本語教育を教える立場で少し立たせて頂いたことがありましたが、その際はドギマギしながらも教案に従って進めて、失礼ながら「なんか思ったよりも簡単」と思ってしまいました。日本語なので、なんとなく教えた気になり、やった感があるのと、最適な方法で指導ができたのかでは大きな違いだと思いました。教案がないと何もできないですが、そもそも日本語教師は、授業時間と同じ時間、もしくは倍以上の時間をかけて、教案や教え方に関して労力を使っています。また、日本語教師は、その方と少し話しただけで、どの程度の語彙力なのか、文法の理解力なのか、発音のくせや改善点などがパッとわかります。そして最適な教え方やその方に合った学習方法などを提示できます。英語を学ぶ時と同じだと考えればとても納得いきますが、日本語という点で自分は話せているから教えるのは簡単だと勘違いしてしまいがちになるので、改めて教え方の重要性や専門性のすごさに気が付きました。

日本語学習に必要だと考えること

言語習得のゴールで、就職した際に困らないようにするとした場合、例えば、企業の人事や会社など、他者に日本語を評価される形になります。
日本語教師のすごさがわかったものの、日本語教育に対する企業側の期待や本人の期待値などを調整しないと、日本語が上達したことをどのように判断していくのか難しいと感じました。
つまり、いかに日本語を勉強していても、日常的に会話などをしている中で、語彙力が伸びているのか、どう上達しているのかを判断が日本語の場合にしづらいなと。

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私たちは日本就職が決まった方に関して、職場で通じる日本語教育を行ってきていますが、その際には会社で必要な日本語を使う場面を想定して、その方のレベルに合わせて実施しています。その際に、私たちは、現状の日本語レベルを可視化して、また課題を出していきます。

それでかつ、毎授業ごとに日本語をどの程度上達しているのかを把握する為の施策を行っています。学習が最適化できるように、動画などで事前学習を行ってもらい、それで授業では会話の中でいろんなパターンで使い分けて意味の違いなどを学べるようにして、またその中での学習進捗を可視化しています。

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学習する場合は、モチベーションを高めて、自ら学習するようにサポートすることが大事ですが、そのきっかけの為にも、自分がどの程度理解ができているのかなど、可視化は有効かと思っています。

日本語教育のことをわかっていない私は、カリキュラム開発に際して、全体像の可視化や日々の可視化だけではなく、サバイバル日本語を依頼しました。

なんかもっと効率的に、これだけ学んでいれば使える日本語の定型文みたいなものも入れて欲しいと。日本で仕事する上で、生きていく上でこれだけ必要なものを作って欲しいと。

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※弊社で日本語教育のカリキュラム開発も行っている大野先生。ベトナムにいる学生に対してオンラインでの日本語教育を実施しています。

日本語教育のカリキュラム開発には、数年前から取り組んでもらっていました。会話特化の日本語教育をオンラインでどのように効率的に、最大限の効果を持って出来るのかを試行錯誤しながらやってもらっています。

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今まで日本語教育に携わった経験が長い社員でしたが、カリキュラム開発には専属である程度開発を行わないといけません。それでも試験対策の日本語教育ではなく、実践的なサバイバルの日本語に関してはかなり苦労を重ねながら進めてもらいました。
そのカリキュラムの基準としてCEFR基準なるものを用意してもらっています。最低限覚えて、応用が効くCan-Do Listなどものをつくりやっています。簡単に言えば、上記のようなサバイバル日本語を行い、可視化ができるように作られています。

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オンライン日本語教育で目指したいところ

まず、学ぶ側の人の日本語能力を可視化し、その人のゴールに合わせた日本語教育を効率的に行っていくこと。そしてその人が例えば就職しても留学しても困らないで自分の能力や人間性を発揮しやすいようになること、その前提を世界中でできるようにしていきたいと思っています。またやはり言葉を通じてお互いを深く知ってもらったり、知り合うきっかけを楽しくできるような架け橋になっていくものにしていきたいと思っています。
今、自分の子供に日本語を教えていますが、こんなところでももっとオンライン日本語で役立てることがあると思っています。また私自身もまだまだである言葉遣いなど、伝え方にもきっと役になると思っています。相手への想いを伝える手段であるからこそ、その目的に合わせて、楽しく、気持ちよくコミュニケーションができるようにしていきたい、学習する、教える側、両方にとって、良い時間となり、人生が豊になるようにしていきたいと思います。

私たちは、学びたい方がより自由に学べるようなプラットフォームを提供していきたい。
そして留学や就職の出口だけでなく、その国にいても仕事を依頼できるような形になってきたので、そのゴールを作る・広げながら、日本語教育というジャンルを広げていきたいと思います。

また、一番は、教え方をもっと広くしていきたいと思っています。日本語を教えることは私自身もできた気になってしまいましたが、プロがどのようにその方にとって最適に教えていけるのかをまとめた日本語教師の養成講座をスタートします。
世界中の人々にとって、日本語を学ぶというものが身近になったり、日本語を教える中での多文化共生に繋がっていくようになればとても嬉しいと思います。例えば、会社で違う部署の人が日本語を教えてくれる、その中で会社って楽しいし、日本に来て良かったと思ってもらえるようになれば嬉しいです。その為にも、日本語を教えたいと思っているかたにぜひ、その機会を増やしていきたいと思っています。

最後に

外国籍社員がいる企業も今後もっと増えていくかと思います。私たちは、企業内の日本語学習の基準を作ったり、日本語学習の方針を作ったり、指導したりなどもしています。また個別の外国人社員の日本語能力も今は無料で診断しています。外国籍社員の方の日本語能力さえクリアすれば、インドや世界中の優秀な社員を採用できるようになると思いますので、ぜひお声掛けください。

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また、日本語教育の養成講座をスタートします。今後社員に日本語を教える人を増やしたいとか、自分自身ももっと日本語教えられるようになって社内でいろんな方と話せるきっかけを作りたい方もぜひお声掛けください。




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