読書感想文「母という呪縛 娘という牢獄」 著:齊藤 彩

 本作は、2016年、滋賀県守山市で発生した殺人事件の犯人と著者が手紙のやり取りを重ねて作成されたノンフィクション作品である。私自身が滋賀県出身であり、現場付近もなんとなく親近感があることと娘をもつ親であることから全く別世界で起きた事件だと感じなかった。事件の概要は、「滋賀県医科大生母親殺害事件」で検索すればWikipediaで知ることができるが、簡単に紹介しておこう。
 母親が娘に対し、幼少期から事件発生まで過度な期待を娘にかけるが、思い通りにならず、その腹いせに虐待と脅迫を続ける。その呪縛から逃れられないと悟った娘が母親を殺害した事件である。
 被害者の母親は死んでしまっているため、娘側の供述や手紙、ラインのやりとりなどから事件の核心に迫っていく。そのため読書中ずっと母親の娘に対する行いに腹が立って仕方ないし、許せないとい思いになる。
 ものすごく単純に考えるとこの事件の原因は母親の虐待あると思う。そこで日本の虐待に関する統計を調べてみた。

こども家庭庁統計

 ことも家庭庁が「令和4年度児童虐待相談対応件数」という統計を発表しており、児童相談所における相談対応件数は、21万9170件である。虐待の種類は「身体的虐待」「ネグレクト」「性的虐待」「心理的虐待」の4つに大別されており、最も多いのが「心理的虐待」であり、次いで多いのが「身体的虐待」である。児童相談所への相談件数は増加し続けており、毎年過去最高を更新している。相談件数と虐待の件数はイコールではないので、虐待の件数ははっきりとはわからないが、少子化の中でこれだけの人が悩んでいるのは恐ろしいし、身近にも虐待に悩んでいる人がいても不思議ではない。虐待に至る原因やきっかけなどの統計を知りたかったが、国ではその統計はなかった。

私の考え

 ここからは個人的な考えだがこの事件において、母親が虐待するに至った心理的影響は「貧困」「孤立」「過度な期待」「支配欲」「自己顕示欲」
の5つだと思う。
貧困:母親の子供時代が貧乏であったことからもう戻りたくないという強迫観念。
孤立:父親は子育てに参加できず、母娘の関係を把握しているものは誰もいなかった。
過度な期待:医師にさせたいという思い、無理な注文であることは明らかなのにそれを認めない。
支配欲:とにかく自分の思い通りにさせたい。子供の成長や将来とは関係ないことを強要し、子供を使用人のように扱っていた。
自己顕示欲:とにかくプライドが高く、他人を見下しており、自分は優れており、子供はそれを証明するための道具のようである。

 一般的に虐待事案では、被害者側は虐待されていた恐怖からその詳細を話すことは、難しいと思うがこの事件では虐待をしていた母親が死んでおり、娘が殺人の加害者であるという特殊性から虐待における被害者側の心理状況、虐待に至るきっかけ、家庭環境、周囲との関係性、被害者側に原因はあるのかなど非常にナーバスな問題に加害者という立場から話せることがあるのでなないだろうか。

子育てへの影響

この事件は非常に極端なケースだが、親は子供に期待するし、自分の思い通りになってほしいと思うときがある。しかし本書にその危険性を教えられた。私は、優秀な人間を育てる子育てではなく、子供がなりたい自分になれるように子育てしていきたいと思う。





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