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【映画感想】Dorian Gray

2009年のイギリス映画。
Wikipediaが、あらすじは原作参照になってるのが納得いかない。

以下、ネタバレあります。

≪よかったところ≫

ベン・バーンズのドリアンが美しかった。
金髪じゃないけど、ドリアンなのがわかる。始終美しい。

ところどころの象徴的なカットが美しかった。静止画として美しい。

衣装がきれい。
特に終盤でヘンリー卿が着てる臙脂色のガウンがすごく好き。

アラン・キャンベルの原作設定をうまく生かしていた。
バジルの死体片づけるのはないんだけど、いかがわし店で遭遇したり、ドリアンを襲うジムを取り押さえるときにヘンリー卿が「彼は異常者の扱いに長けてる」って言ったりする。

ヘンリー卿が種を撒き、ヘンリー卿が刈るという構造はきれいだと思った。

原作の台詞が分散されて入っているので、知っていると楽しい。


ドリアンがヘンリー卿に「僕はお前が作ったんだ」的なことを言うのは、解釈のひとつとして面白いと思った。

≪好きじゃないところ≫

ドリアンがただの色魔。
魂の堕落を性的快楽のみに寄せたのはどうかと思う。
ドリアンが持ってる崇高さや芸術への陶酔が全部色欲で台無し。
特にシビルとのセックスはいただけない。
シビルへの愛は純粋な舞台芸術に対する愛で、それを裏切られたから振ったんであって、子どもが欲しいとかいらないとかそんな俗っぽい話にしないでほしい。
それで死ぬシビルもただただ安っぽい。
バジルとのキスもいらない。
バジルからドリアンへの感情は限りなく恋に近い友情で、それも画家としての理想や美学が入り混じった複雑なもののはず。
ぎりぎり恋じゃないところがあの二人の関係性のいいところなので、余計なことはしないでもらいたい。
愛とか美とか簡単に言葉にできないものを簡単にセックスに置き換えられているようで、原作のよさが消えてた。

ヘンリー卿がイメージと違った。
もうちょいおしゃれ髭がよかった。
途中からどんどんまともになっていくのも、ドリアンに対して懐疑的になるのも嫌だった。
ヘンリー卿は常に火に油を注ぎ続ける人じゃなきゃ。
ドリアンは堕落していく自分という内面と同時に、油を注ぐヘンリー卿という外面と戦う必要がある。
ヘンリー卿に「僕はまっとうになるんだ」って宣言するから、ドリアンの精神的な戦いが読者に伝わる。
ヘンリー卿がまっとうになってしまったから、終盤のドリアンの「僕だって努力したけどダメだった」って台詞が浮いちゃう。
いつどこで努力してたの? って思って終わった。

原作を知らないとわけがわからない。
日本で公開されなかった理由はこれじゃないか?

原作が好きだと楽しめない。

最初にバジルを殺すシーンが挿入されて、そこから過去にさかのぼった理由がわからない。
効果として何を狙ったんだろう。

ヘンリー卿の娘はいらない。
本当の愛を知ったときには手遅れ、という物語にしたかったのかもしれないけど、ヘンリー卿のキャラが歪んだデメリットの方がはるかに大きい。

堕落のシーンが多いし長い。
比較して、ドリアンの純真無垢なシーンが少なすぎる。
ロンドンに着くシーンがあるために、田舎者が都会に来て遊びを覚えた感が強すぎる。
非常に安っぽく見える。
冒頭は原作準拠でよかったのでは?
……全部原作準拠でよかった。

ジムは弟じゃないの? なんでお兄さんなの? お兄さんにした意味は? 
脚本からそうなっていたとしても、ただの翻訳間違いだとしても、よろしくないと思う。

≪まとめ≫

原作を知っていて、かつ思い入れがない人しか観られない映画だった。
原作を中途半端になぞって後半オリジナル路線に突っ込んで失敗するアニメを観た気分だった。
これを見るくらいなら原作を読んでほしい。
最高だから。


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