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いつの間にかのスカート

先日レオパード柄のスカートを買った。
現在の持ち物の中でスカートは1着、黒いサテンのペンシルスカートのみ。
ワンピースは喪服1着、ショッキングピンクのお気に入り1着。
スカートは基本的に履かない人生を多く過ごしてきた。足が太いのが悩みだったのもあるし、
母親から「下着が見えそうなものは履くな」と言われ続けて育ったせいもある。

スカートにもさまざまあるし、丈、形、素材によって自分に似合うものがあるのも知っている。
しかしどんなに気に入って買ってみても、ふと街で鏡に映る自分の姿がスカートを履いていたりすると恥ずかしくて悲鳴を上げそうになるのだ。全身のバランスもパンツをはいているときより格段に悪い気がする。
家の鏡の前ではヨシ!と思ってきて出たはずなのに、外出先ではなぜかその自信が消失するのである。
特にフレアスカートの時は我ながら、ショーウィンドウに反射した自分を見つめてはドングリが歩いているかのような気持ちになる。

今回買ったヒョウ柄……いやレオパード柄のスカートはまさに、タフタひざ下丈のフレアスカートだ。
本来ならば手に取らないはずのスカートだったが、落ち着いた薄いベージュに上品にプリントされたその柄に思わず夢見てしまったのだった。

そしてもう一つの決め手は、実店舗で試着したということだった。
コロナよりも前からネットショッピングが大好きだった私は試着という行為を久しく忘れていた。

したとしてもユニクロやZARAなどのファストファッション店にて、その場でジャケットなどを着てみるくらい。
ネットショッピングのほうがゆっくり製品を見られるし、生地感などもだいぶ写真でわかるようになってきていた(つもり)ので、全体的にそれで事足りていたのだ。それに実店舗は緊張する。「なんでお前来たの」という店側の視線が怖かった。

時は流れ、これまでの様々な経験から別に誰も私に注目などしていないことを思い知っていた。
これが功を奏し、コロナあけの現在では気軽にショップに入れるようになっていた。
そこで手にしたのがこのスカートなのであった。

いざ試着してみると、ウエスト部分が太めに取られていてウェストの位置がわかる感じがありがたく、フレアの広がりも大げさなものではなかった。なによりなんだか着ていてアガるではないか。
今年の着丈らしく短めで、これがくるぶしまであったらドレス感が増して逆に手に取らなかったかもしれない。
ショップの方との秋物の話も楽しかった。年を取るとおしゃべりになっていくというけれど、自分がつい最近まで人が怖いとか苦手とか言っていたことがウソのように感じる。
コロナ罹患後に同じように人と喋ることが好きになった方がいたらぜひ、知りたい。

ちなみにこの日のショッピングは母とだった。長い間、母とショッピングに行くのは少しだけ苦手だった。
いいなと思っても否定されたり、二言目には「品がない」というのが口癖の母で、私は言われるたびに自分を否定されているような気になっていたからだ。
しかし今回のショッピングは楽しかった。否定されてもなぜか傷つかず、「私はこれがいいの」と
試着しては母に見せびらかしたりした。母が買うか悩んでいるものに対しては意見もした。以前の私だったら母の気に入りそうな発言を必死で探していたはずなのだが。

母の言葉も以前感じたほどの強さが無くなったような気がした。
相変わらず主張はするが、こういうのも流行りなのかもね、と譲歩されたり。
根っからのファッション好きで、私にファッション雑誌をたくさん見せてくれた母。
母に気に入られようとするより、もっとファッションについて私なりの考えを発信していたらどういう関係になっていただろう。
でも子どもにそれは難しいよな、と母の背中を見ながら心の中でつぶやいた。
子どもは自分のすべてを母だけに認めてもらえたら無敵になれる生き物だからさ。少なくとも私はそうだった。

私も母も、年をとったのだ。きっととても幸福な、たくさんの人の価値観を知りながら、年を経た。

昔なかなか履かせてもらえなかったスカートを買って、調子に乗って他にも買い物してしまった。母と意見をぶつけ合ったり、この服素敵だねと言ったりしながらデパート中を歩き回った。

何年ぶりだろうか。お店の人と話して、試着して買って、って。母とゆっくり二人だけの時間を過ごすして。

また書きます。

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