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過ぎ去った人

 『時間の感覚』が途方もなく異質だったのだ。
 
 (彼)は、他人に覚える第一印象を一生変更することが無いようだった。一度、信頼を得るとなにがあろうとも一生信じているみたいなところは健気さと言うよりも、「目を醒ませ!」と言いたくなるようなものだ。
 他者との出会いは「こういう人なのかな?」とおおよその検討をつけながら、会うたび話すたびにいろんな面を見つけつつ、だんだんとその人物像をイメージしていく。
 ところが(彼)は、一瞬限りの印象が切り取られたように以降、更新することなく固定するようであった。だから「勘違い」や「思い込み」は二度と再び検証されることがなく、(私)のことは【こういう人】の箱の中にパックされる。人物像ファイルに納まっているパックをその都度引き出して話を始めるものだから、(私)にしてみれば「いったい誰と話してるの?」という感覚すら覚える。だから(私)は、時の「流れ」がそこに存在しないかのような感覚を覚えるものだから私は「(彼)は(私)にはまったく無関心なのだな」と感じとるのだ。

『時間の流れ』の感覚が連続的ではなくて、ぷつぷつっと切り取った一瞬のページを紙芝居のようにめくっているような感覚で、過去・現在・未来が1ページという面に収まっている


 (私)の感覚では、時間間隔は【点】なのだ。【点】と【点】は『時間という波』の頂点のようだ。

 子の成長を感覚的に認識するところを、「一面」が一面として複数枚存在するも、つながらず、紙芝居の別々の木枠のなかにおさめられている(彼)はどのように子の成長を認識しているのだろうか。変更されたと認識しているのではないだろうか。あたかも一枚の絵がごっそり塗り替えられるのと同じかもしれない。別の紙芝居の木枠に目を移すきっかけは何だろうか。年齢だとか、そんなラベルかもしれない。そして過去の紙芝居の木枠はどこか別の場所へ納められる。まるでなんにも関連しない別のお話であるかのように。

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