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「教育活動の実施等に関するQ&A」令和3年2月19日更新(解説2)

 続編です。

 『休校措置』シリーズをまとめたマガジンはこちら



教育活動の実施等に関するQ&A[2月19日更新]

 資料とするリンクです。

①学校における感染症対策に関すること
②感染者が発生した場合や児童生徒等の出席等の対応に関すること【2月19日更新】
③学校の臨時休業に関すること
④学習指導等に関すること【2月19日更新】
⑤その他【2月2日更新】


学習指導等に関すること【2月19日更新】

 Q&A(学校設置者・学校関係者の皆様へ)10項目から、2月19日に新たに更新された2点のうち、休校および臨時休校中の児童生徒の学習と、その評価等に関することについて取りあげます。

1.児童生徒の学習指導に関すること【2月19日更新】
2.感染症対策を講じた上での学習活動の留意点等に関すること
3.学校行事に関すること【2月4日更新】
4.指導要録・学習評価等に関すること【2月19日更新】
5.ICT環境整備・オンライン指導に関すること
6.幼稚園に関すること
7.特別支援教育に関すること
8.学校図書館等に関すること
9.給食に関すること
10.部活動に関すること


児童生徒の学習指導に関すること【2月19日更新】

 臨時休業(分散登校)や出席停止扱いで登校できない状況にある児童生徒を対象にした学習指導について、です。

  学習の方法

同時双方向型のウェブ会議システムを活用するなどして、指導計画等を踏まえた教師による学習指導と学習把握を行う

主たる教材である教科書に基づき学習指導を行うとともに、教科書と併用できる教材等を組み合わせたり、ICT環境を活用したりして指導する

教科書と併用できる教材としては、例えば学校・教育委員会や教科書発行者等の民間事業者などが作成したデジタル又はアナログの教材、オンデマンド動画、NHK Eテレ等のテレビ放送などが考えられます。また、学習の方法としては、例えば同時双方向型のウェブ会議システムや、パソコン・タブレット端末等による個別学習が可能なシステムを活用した学習、一定のテーマについてインターネットを活用して調べまとめる学習など


  学習状況や成果を把握する手段

登校日の設定や家庭訪問の実施、電話、電子メール等の様々な手段を通じて学習の状況や成果をきめ細かく把握する

 「指導計画等を踏まえた教師による学習指導と学習把握をおこなうこと」と連動しています。
 

  学習の保障

臨時休業に伴い、児童生徒が授業を十分に受けることができなかったことによって学習に著しい遅れが生じることのないよう、補充のための授業等の必要な措置を講じることが求められますが、その際に、限られた時間を効果的に使って必要な措置を講じるための工夫を施す

・児童生徒の学習状況を踏まえ、教育課程に位置付けない補習を必要に応じて実施する
・家庭との連携を図りながら学校において適切な自宅等での学習を課し、学校において児童生徒の学習状況を把握した上で、学習内容の定着が不十分な児童生徒に対して、個別に補習を実施するなどの必要な措置を講じる


  次年度に向けて

児童生徒の進級・進学に向け、教育課程の実施状況や個々の児童生徒の学習内容の定着の状況について、よく把握・確認を行い、次年度に向けて十分な引き継ぎを行うことが重要

特に、最終学年の児童生徒については、当該児童生徒の学習状況について、指導要録等を通じて、進学先の学校等に共有するなどの対応を検討いただくようお願いします。また、進学先の学校等においては、共有された情報を踏まえて、必要に応じて教育課程内での補充のための授業や教育課程外での補習などの個に応じた指導を行う等の配慮をお願いします。なお、児童生徒が転学する場合においても、これと同様の対応をお願いします。


つまり家庭で学習するこどもと親がしていることとは

 普通教育に学校教育を受けさせている家庭のこどもたちの在宅学習は、教師の指導計画に基づき、学習指導要領に準拠した学習内容を履修することになっていることがわかります。その学習状況は、教師によって把握されることになっていますので、教師への連絡や報告は必須です。またその成果は、学習が定着しているかどうかが重要です。学習の遅れを生じさせないため、となっています。定着が認められなければ、オンライン指導中または登校時の補習を必要とします。

 この点から、家庭ではこどもの学習について、どのような点に気をつけることになるでしょうか。

学校との密な連携・こどもの学習管理と監督
①学習指導要領に準拠した学習をさせること
②学習の定着を図ること
③学習内容を把握し、教師との連絡・報告をすること(連絡帳)
④補習のサポート
⑤学習意欲のモチベーションをサポート
⑥身体的および心理的なケアとサポート
⑦学校生活に替わる家庭生活の提供(バランスのとれた食事や規則正しい生活リズムの維持)

 一般的にこれらの状況に在ることをホームスクーリングと言っている傾向が目立ちますが、これはスクールアットホーム・スタイルということになります。学習を進める主体が学校にあるという意味です。
 スクールアットホーム・スタイルは、学校復帰や進級・進学に必要な学習の履修とその証明に必要なプロセスを、学校主体の計画に沿って行います。現在は、さらに学校の先生方自身も「学びを止めない」サイトから提供されるオンライン授業等のシステムを学習し、活用するような段階ですから、試行錯誤と手探りの日々なのではないかと思います。
 これまで学校に行きたくても行けない状況に在るこどもたち、例えば病気療養中や経済的理由、その他にある児童生徒への学習指導や学習機会の保障をするシステムが構築されないできましたから、まさに今からここから始まるという風でもあります。通知はすでにあったにも関わらず。既存の通知内容を反映している部分といえば「同時双方向型」といったあたりでしょうか。

 このシステムは、諸外国が持っているホームスクーリング制度にあたります。詳しく見ていくと、学習する内容や学習スタイルによっても違いがあります。それがホームスクーリングとアンスクーリングの違いでもあります。その中間も存在します。
 またオルタナティブ教育が公教育として、学校教育と並列である教育制度という点にも、日本の教育制度はまったく触れようとしません。公教育の位置づけからも、それに触れることができる機関が存在しないからです。こどもに関する教育は、学校教育だけが管轄となっていますから。

 さて、諸外国でロックダウンを理由に始まったホームスクーリングが、家庭に大きな負担をかけていることはよく目にすることです。膨大な量の課題とそれを進めるサポートをするために生活の変容を余儀なくされる保護者たちの悲鳴です。
 日本はさらに公的な学習コンテンツの構築が未発達ですし、学習ログや対応マニュアルもないものですから、余計に混乱を生じさせているのかもしれません。そして、その混乱は、不登校やオルタナティブ教育(自由教育)のこどもたちも良くも悪くも一部を巻き込んでいます。

 リモート勤務は、それができる業種とそうでない業種があります。それだけでも家庭ができる範囲にはかなりの違いがあるのに、求められることは一律で、柔軟な対応ができていないのではないかということも想像できます。その結果、学習状況と定着度の差はまちがいなく起こっているでしょう。

 


指導要録・学習評価等に関すること【2月19日更新】

 重要なキーワードがあります。
 「オンラインを活用した特例の授業等について」
 「指導要録の指導に関する記録の別記として記録する必要」

問7 新型コロナウイルス感染症の影響によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒に対し、オンラインを活用した指導を行った場合、指導要録上どのように記録するべきか。【新規】

○ 新型コロナウイルス感染症の影響によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒については、指導要録の「出欠の記録」において、「欠席日数」としては記録しないこととしており、その詳細については、「教育活動の実施等に関するQ&A【指導要録・学習評価に関すること】」問1及び問1-2をご確認ください。

○ その上で、令和3年2月19日付け初等中等教育局長通知「感染症や災害の発生等の非常時にやむを得ず学校に登校できない児童生徒の学習指導について」では、令和3年度から、非常時に臨時休業又は出席停止等によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒について、以下の①又は②の方法によるオンラインを活用した学習の指導(オンラインを活用した特例の授業)を実施したと校長が認める場合には、指導要録の指導に関する記録の別記として、非常時にオンラインを活用して実施した特例の授業等の記録について学年ごとに作成することとしています。
① 同時双方向型のオンラインを活用した学習指導
② 課題の配信・提出、教師による質疑応答及び児童生徒同士の意見交換をオンラインを活用して実施する学習指導(オンデマンド動画を併用して行う学習指導等を含む)
問7-2 オンラインを活用した特例の授業等について、いつから指導要録に記録する必要があるのか。【新規】
○ 非常時に臨時休業又は出席停止等によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒について、オンラインを活用した特例の授業を実施したと校長が認める場合、原則として、令和3年4月1日以降、指導要録の指導に関する記録の別記として記録する必要があります。
(※4月1日以前・以降の状況にあった対応をするものである)

 「やむを得ず学校に登校できない児童生徒」とは、前記(解説1)で明らかになった通りです。

⑴合理的な理由があると校長が判断する場合
⑵不登校児童生徒
⑶感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒


オンライン授業の記録は、指導要録の指導上の記録の別記に記録される

 このことも明確になりました。そして、記録できる「オンライン授業(特例の授業)」とみなされる条件も明確になりました。

① 同時双方向型のオンラインを活用した学習指導
② 課題の配信・提出、教師による質疑応答及び児童生徒同士の意見交換をオンラインを活用して実施する学習指導(オンデマンド動画を併用して行う学習指導等を含む)


 不登校児童生徒の支援の在り方における『不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて』との相違点について確認ができます。

 必ずしも在籍校または在籍校の教師による学習の提供に限りません。その学習指導内容は、学習指導要領に準拠した学年別カリキュラムであることは厳密には求められておらず、児童生徒の心身の状態を鑑みて、重視する観点が違います。
 その相違点は、不登校特例校の学習カリキュラムと本校のカリキュラムとその目的と目標の置きどころの違いとも似ていることでしょう。習熟度の違いではありません。教育環境の理念・目的・目標が異なるのですね。


「感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒」の『指導要録上の出席扱い』と『別記の記録』

 もう一度、次の三者の観点について、みていきます。
 コロナ感染対策における学校対応をおこなっている期間の、長期欠席児童生徒が、文科省によって次の3通りに認識されているものと思われます。

⑴合理的な理由があると校長が判断する場合
⑵不登校児童生徒
⑶感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒

 指導要録上の出席扱いと別記の記録は、⑵の不登校児童生徒は、前述したように『不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて』が適用されます。

 「不登校児童生徒」とは、教育機会確保法における定義を用いるのであれば次の通りです。

 相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるもの

 ですから、⑴合理的な理由があると校長が判断する場合で出席停止扱いとなっている児童生徒もこれに適用されません。⑵も同様です。
 しかし⑴の児童生徒は、オンライン授業による学習指導を受ける対象の児童生徒であるといえます。この点が、⑶感染不安を理由に学校を欠席する児童生徒に適用できるのかどうかが曖昧です。個々の交渉によって⑴の児童生徒とみなされる可能性はあります。次の通りです。ただし個別の判断ですから、似た状況にあっても、在籍校により対応が違ってくることは予想されます。

なお、医療的ケアを必要とする児童生徒等や、基礎疾患等のある児童生徒等の中には、重症化のリスクが高いケースもあることから、主治医や学校医等に相談の上、個別に登校の判断をしてください。
(感染不安等に係る出席停止等について)より


不登校児童生徒って、誰のことなんだろう

 こうして文科省のQ&Aから、その基本姿勢を辿ってみると、改めて思います。「不登校児童生徒」って誰のことなんだろう、と。

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