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タクシー小話

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嘘かホントかはあなたのご想像におまかせするタクシーの小話です。
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記事一覧

タクシー小話 15 「上品な言葉遣いが過ぎるおばあさん」

「どうも、こんにちは」  銀座に古くからある百貨店、松屋銀座の前で手を挙げたのは上品な衣…

yo
3年前
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タクシー小話 14 「紅葉が嫌いな理由」

 突き抜けるような青天の下、陽の光を受けた黄金色が風に吹かれて瞬いている。冬至を前に、時…

yo
3年前
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タクシー小話 13 「クラブに送った女性の疑惑」

 クラブ、ライブハウス、ラブホテルがところせましと建ち並ぶ、渋谷区円山町。この地は道が狭…

yo
3年前
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タクシー小話 12 「看護婦との関係」

 世田谷の東急田園都市線沿線の飲み屋街から外れた大通りで、一人の女性が手を挙げた。  深…

yo
3年前
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タクシー小話 11 「男の敗北の瞬間」

 小雨の降る深夜、六本木の小道で男女が抱き合っていた。  こちらには女性の背中とその肩越…

yo
3年前
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タクシー小話 10 「俺も人なんだけど、と思った話」

 意外と人間は言っていることと、やっていることが違う。  銀座の老舗洋食店の前で乗って来…

yo
3年前

タクシー小話 9 「広告が生んだ気まずい空気」

「あ、これ、顔認証して広告が流れるやつですよね」 「そうそう」 「初めて乗りました、私なに流れるんだろう」  会社員風の男女が乗って来た。運転席後ろに50代前半ほどの男性、助手席後ろには30代後半ほどの女性。女性は初めてその広告の付いたタクシーに乗ったようだった。  タクシーの車内広告には顔認証をするタイプとしないタイプがある。  うちの車に取り付けられた広告は認証されず、一定期間は誰が乗ろうと同じ広告が流れるようになっている。  ウチのは違う、と伝えようと思ったが仕事の話

タクシー小話 8 「タクシー運転手はヤツを見抜く」

 タクシー運転手がヤツを見抜き、鼻で笑う瞬間がある。正しくは僕が。  それは主に信号待ち…

yo
3年前
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タクシー小話 7 「しゃっくりに怯える」

 ヒック、としゃっくりのような小さな声音が聴こえてきた。  深夜一時過ぎ、新橋で男を乗せ…

yo
3年前
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タクシー小話 6 「自動車事故の陰謀論」

「最近、高齢者の車の事故が多いでしょ。あれ実は事故が起きるように操作してるらしいよ」  …

yo
3年前
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タクシー小話 5「たぶん、宝くじに当たった男」

 銀座の並木通りで年齢差のある男女が乗って来た。  野暮ったく、四十そこそこに見える男性…

yo
3年前
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タクシー小話 4「あっさり語られた泥沼不倫劇」

「結婚は二回目だっけ?」 「そうっすね」  夕方頃、40代ほどの男性二人が乗ってくると、久し…

yo
3年前
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タクシー小話 3「悪魔を崇拝する男」

「だから人間ってさ、結局欲に弱いんだよ」 「確かにそうっすね」  聡明な雰囲気のビジネスマ…

yo
3年前

タクシー小話 2「最後まで胡散臭いIT社長」

 カンカン、と金切るような音が助手席の窓で鳴らされた。  指に着けたアクセサリーで叩いた割れるような音は耳障りが悪い。  今気づいたかのように助手席へ顔を向けると、50代ほどのジャケットスタイルの男が「無視すんなよ」と今にも咎められそうな睨み付ける表情で立っていた。  耳障りの悪い音とその叩く行為に苛立ちが募る。  ……なんでこっち来んだよ。  深夜の六本木、信号待ちの間、真ん前の焼き肉店から出てきた彼らを見て、あえて目線を外したが駄目だった。  40代後半ほどの男二人と2