真鍋・日隈法律事務所

福岡市/税務争訟・税務調査対応/税理士の顧問弁護士/裁判例や裁決の検証、税法解釈や相続…

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福岡市/税務争訟・税務調査対応/税理士の顧問弁護士/裁判例や裁決の検証、税法解釈や相続実務に関する気づき等を投稿しています。 弁護士真鍋亮平(福岡県弁護士会44375)、弁護士日隈将人(福岡県弁護士会44376) https://tax.mhlaw.jp/

最近の記事

民法上の組合と消費税(下)【組合と「人格のない社団」の関係】

★前回記事「民法上の組合と消費税(中)【組合における消費税の課税関係】」はこちらから。 「組合」と「人格のない社団」   消費税法をはじめとする各租税法においては、「人格のない社団等は、法人とみなす」という規定が置かれている。消費税法では第3条に規定がある。一般的な租税法では、この「人格のない社団等」とは、「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」と定義されている(消費税法では2条1項7号。本稿では財団は関係ないので、以下では単に「人格のない社団」という

    • 民法上の組合と消費税(中)【組合における消費税の課税関係】

      ★前回記事「民法上の組合と消費税(上)【組合の仕組みと法律関係】」はこちらから。 組合における消費税の納税義務者   消費税は、国内において「資産の譲渡等」を行った「事業者」に課される(消費税法4条1項)。「事業者」とは、個人事業者及び法人をいう(同2条1項4号)。  前回の記事(民法上の組合と消費税(上)【組合の仕組みと法律関係】)で記載したように、組合が代表者を通じて行う取引は、個人としての組合員全員に共有的に帰属するから、組合の取引では、全組合員が取引の当事者として

      • 民法上の組合と消費税(上)【組合の仕組みと法律関係】

        はじめに 世の中には様々な事業の形態がある。一般的には、事業を個人で行う場合と法人で行う場合があるが、中には特殊なものもある。その代表的なものとして、今回は、民法上の組合と消費税の課税関係について概要を解説する。  なお、解説は3回に分けて配信する。 民法上の組合とは  民法上の組合(いわゆる任意組合)は、民法の規定に基づく組織形態で、何か共同で事業を行おうとする人々や法人が、それぞれ出資をして共同の事業を営むことを相互に約束する契約関係(組合契約)に基づいて組成される事

        • 輸出免税が適用されるのは誰? ~消費税の輸出免税と「二重の輸出」問題~

          輸出免税とは消費税は、国内において行われる資産の譲渡等に課される。しかし、そのような国内取引でも、輸出として行われる場合は、当該取引にかかる消費税は免除される。これを「輸出免税」という[※1]。 消費税法の条文としては、まず、法4条1項で「国内において事業者が行った資産の譲渡等……には、この法律により、消費税法を課する。」として国内取引が消費税の課税対象であることを規定した上で、法7条1項で「国内において行う課税資産の譲渡等のうち……『本邦から輸出として行われる資産の譲渡又は

        民法上の組合と消費税(下)【組合と「人格のない社団」の関係】

          JAFの会費は、本当に不課税(課税対象外取引)なのか?~消費税法における対価性の検討~

          JAFとは正式には、「一般社団法人日本自動車連盟」で、英語表記はJAPAN AUTOMOBILE FEDERATIONなので、頭文字をとって「JAF」である。 自家用車を所有している人、車を運転する人にとっては、ロードサービス事業者としてのJAFの名称は広く知られていると思われる。 JAFのウェブサイト[※1]によると、JAFの設立は1963年(昭和38年)、職員数は3,370人(2023年3月末時点)、その会員数20,335,121人(2023年7月末時点)という組織で

          JAFの会費は、本当に不課税(課税対象外取引)なのか?~消費税法における対価性の検討~

          インボイスの少額特例における1万円未満の判定単位 ~「一回の取引」の意味とは?~

          少額特例と判定単位に関する国税庁の見解インボイス制度では、事業者の負担軽減措置として、一定規模以下の事業者が令和11年9月30日までに行う課税仕入れについては、「課税仕入れに係る支払対価の額」が1万円未満であればインボイスの保存は不要とされる(以下「少額特例」という。)。 国税庁によれば、この1万円未満かどうかの判定は、「一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満かどうかで判定する」のであり、「課税仕入れに係る一商品ごとの金額により判定するものではありません」

          インボイスの少額特例における1万円未満の判定単位 ~「一回の取引」の意味とは?~

          個別対応方式における用途区分 ~エー・ディー・ワークス事件最高裁判決を素材として~

          本記事のポイント① 個別対応方式は、消費税の制度理念に最も合致した仕入税額控除の方法である。 ② しかし、通達が、消費税法が予定してない処理を認めている。(が、これを許容する理論的根拠は不明。) ③ エー・ディー・ワークス事件最高裁判決によっても、用途区分の判断基準はなお不明確である。(現時点では、主観を問わず、客観的な事情のみから判断するしかないと思われる。) 仕入税額控除仕入税額控除とは、「課税取引を行なって受け取った対価に含まれる消費税相当額から、仕入れに係る税額を

          個別対応方式における用途区分 ~エー・ディー・ワークス事件最高裁判決を素材として~

          【後編】NFT取引は本当に「電気通信利用役務の提供」なのか? ~国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて」の分析と検討~

          (【前編】NFT取引は本当に「資産の譲渡」に該当しないのか?) FAQは「電気通信利用役務の提供」だとするFAQについて、より問題なのは、問11のようなNFTアートの取引(以下「NFTアート取引」という。)を「電気通信利用役務の提供」(消費税法2条1項8の3)に当たるとした部分である。 「電気通信利用役務の提供」とは、条文上、「資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物……の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む)…(以下略)」をいう。 NFTアート取引

          【後編】NFT取引は本当に「電気通信利用役務の提供」なのか? ~国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて」の分析と検討~

          【前編】NFT取引は本当に「資産の譲渡」に該当しないのか? ~国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて」の分析と検討~

          はじめに国税庁は、令和5年1月に『NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)』(以下「FAQ」)を公表した[※1]。これは、NFT(Non-Fungible Token)に関する税務上の一般的な取扱いについて国税庁の見解を示したものだが、その中で消費税の取扱いについては2問掲載されている。 本稿では、NFT取引に関する消費税の課税関係について、FAQの内容を紹介しつつ、若干の検討を試みる。 NFT取引の例NFTは非代替性があり、デジタルデータのオリジナル性を担保する手段

          【前編】NFT取引は本当に「資産の譲渡」に該当しないのか? ~国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて」の分析と検討~

          配偶者居住権の論点 ~既存賃貸部分の賃料は誰のものか?~

          はじめに令和2年4月1日施行の改正民法により、配偶者の居住権を保護するための方策が新たに導入されたことは広く知られている。 今回は、その中でも「配偶者居住権」(改正民法(以下同じ)1028条)に関する論点、すなわち、居住建物の一部が第三者(賃借人)に賃貸されている場合の、配偶者と建物所有者との関係について検討してみたい。 前提となる事例被相続人Aは、甲建物(区分所有建物でないアパート)を生前単独所有していた。 また、Aは、甲建物の一部分を第三者Z(賃借人)に賃貸し、賃料を

          配偶者居住権の論点 ~既存賃貸部分の賃料は誰のものか?~

          消費税における役務提供の内外判定 〜東京地裁平成22年10月13日判決(カーレーススポンサー事件)のロジックを追う【後編】〜

          「連続型」なら直ちに6号が適用される(【前編】はこちら) 平成22年判決にしたがうと、「役務の提供が行われた場所が明らかでないもの」である「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」には、 ①役務の提供が国内と国外との間で連続して行われるもの(以下「連続型」)と、 ②(連続していないが)役務の提供場所が国内及び国内以外の地域にわたって行われるもののうち、その対価の額が合理的に区分されていないもの、 という2つの類型があることになる[※8]。 そうだとすると、①の連

          消費税における役務提供の内外判定 〜東京地裁平成22年10月13日判決(カーレーススポンサー事件)のロジックを追う【後編】〜

          消費税における役務提供の内外判定 〜東京地裁平成22年10月13日判決(カーレーススポンサー事件)のロジックを追う【前編】〜

          国境を越える取引の内外判定日本の消費税は、国内で行われる取引に課される(消費税法(以下「法」という。)4条1項)ため、国境を越えた取引の場合、その取引が国内で行われたかを判定する必要がある。これを一般に「内外判定」という。 取引が役務の提供(サービス)を目的とする場合、内外判定は、「当該役務の提供が行われた場所」を基準とする(法4条3項2号)。これは、国際的競争中立性の観点から、「消費税は消費する地域で課税されるべき」という消費地主義(仕向地主義)を根拠とする[※1]。

          消費税における役務提供の内外判定 〜東京地裁平成22年10月13日判決(カーレーススポンサー事件)のロジックを追う【前編】〜

          個人事業主が同族会社に対して支払った外注費が必要経費と認められなかった事例(大阪地判H30.4.19/大阪高判H30.11.2)

          事案の概要原告Xは、B商店の屋号でLPガス、重油、灯油等の燃料小売業を営む個人事業主であり、平成22~24年分まで(以下「本件各年分」という。)の所得税の確定申告において、Xが代表者を務める株式会社C(以下「本件会社」という。)にB商店の業務を委託したとして、その外注費(以下「本件外注費」という。)を事業所得の金額の計算上必要経費に算入した。 これに対し、税務署長が、本件外注費を必要経費に算入することはできないとして、本件各年分の所得税の更正(以下「本件各更正処分」という。)

          個人事業主が同族会社に対して支払った外注費が必要経費と認められなかった事例(大阪地判H30.4.19/大阪高判H30.11.2)

          相続財産の処分と単純承認 ~令和2年4月17日裁決の検証~

          令和2年4月17日裁決【事案の概要】被相続人Fは、H社との間で顧問契約を締結し、顧問料として毎月100万円を受領していた。そのうち50万円は生活費として配偶者Xの口座(以下「X口座」)に送金するようにH社に依頼していた。 平成31年1月某日、被相続人Fは死亡した。 被相続人Fの死亡後の平成31年1月25日、H社は12月分の顧問料の50万円(以下「本件金員」)をそれまでどおり配偶者Xの口座に送金した(ⅰ)。このとき、Xは被相続人Fが死亡していたこと及び送金された50万円が顧

          相続財産の処分と単純承認 ~令和2年4月17日裁決の検証~

          民事執行の予納金は仕入税額控除の対象か?

          経費としての予納金建物賃貸借の事案で、賃借人の賃料滞納を理由に賃貸人が賃貸借契約を解除する場合、賃借人の退去を実現しなければならない。 賃借人が任意に退去しない場合、賃貸人は、建物明渡訴訟を経た上で、「民事執行」という裁判所の手続によって権利を実現する必要がある。 いざ、建物明渡しの民事執行(強制執行)を申し立てると、裁判所から執行費用概算額の予納を求められる。予納の内容は具体的な事案によるが、主に執行官の手数料と家財の搬出・保管費用等に充てられ、執行完了時に精算し、残余金

          民事執行の予納金は仕入税額控除の対象か?

          相続の知識 ~親子間での遺産分割~

          想定するケース夫婦と子ども(未成年者)2人の家族を想定する。 夫が死亡し、相続が開始する。 遺産は亡夫(被相続人)名義の自宅不動産と預金であり、亡夫は遺言を作成していなかった。 相続人は、妻Aと長男B、二男Cの3名である。 遺産分割被相続人の遺産については、相続人らによる遺産分割が必要である。遺産分割をしなければ、不動産の名義は変更できないし、預金の引き出しもできない。 そこで、Aと子らで遺産分割協議を行うことになるが、子が未成年者であれば親権者であるAが法定代理権を

          相続の知識 ~親子間での遺産分割~