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「借りない資金調達」。OLTAが創りたい未来について(前編/会社設立)

OLTA(オルタ)代表取締役CEOの、澤岻(たくし)優紀と申します。

OLTAは、日本初のオンライン請求書買取(ファクタリング)サービス「クラウドファクタリング」を行なうスタートアップです。「入金待ちの請求書」(売掛金)を売却し、早期に運転資金を調達できる「借りない資金調達」です。

個人・法人ともご利用いただけ、取引先に知られることなく、すべてのやりとりが完了するのが利点です。

2019年6月24日、OLTA株式会社は約18億円のエクイティ調達、さらにメガバンク3行などからの融資調達約7億円を合わせ総額約25億円の資金調達を発表しました。

日経新聞さん、ダイヤモンド・オンラインさん、THE BRIDGEさん、TechCrunch Japanさんなどを始め多くのメディアに取り上げていただいています。

①PR TIMES
「申込金額累計100億円を突破「クラウドファクタリング」のOLTAが25億円の資金調達を実施」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000045310.html

②日本経済新聞
「請求書買い取りのOLTA、地銀に与信モデル提供 」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46352560Q9A620C1FFR000/

③ダイヤモンド・オンライン
「請求書を24時間で現金化、創業2年で100億円超の申し込みが集まるファクタリングサービス」
https://diamond.jp/articles/-/206624

④THE BRIDGE
「創業2年で申込100億円超「クラウドファクタリング」の衝撃ーー請求買取のOLTAが25億円調達」
https://thebridge.jp/2019/06/olta

⑤TechCrunch Japan
「最短24時間で請求書を現金化、クラウドファクタリングのOLTAが25億円調達」
https://jp.techcrunch.com/2019/06/24/olta-fundraising/

実は今回の資金調達より前に1,000万円調達、5億円調達と2回資金調達をしていたのですが、大々的に広報活動を行なわずに事業を運営してきました。

そのため、
「OLTAってなに?」
「ファクタリング?リファクタリングじゃなくて?」
「もしかして闇金?怪しい、、、」
「どんな組織やカルチャーなの?」

といった反応や疑問もあるかもしれません。代表として僕から発信できることがあると思い、初noteを投稿しました。これまで僕らが何を考え、何をやってきたのかを振り返りながら書いてみたら、1万字を超える長編になったので前後編に分割しています。

クラウドファクタリング事業そのもの、大企業からの起業、OLTAの組織やカルチャーに興味がある方はぜひお読み頂けますと幸いです。

また、弊社事業やカルチャーについても多くの方に知ってもらいたいという目的でカルチャーデックも作っています。こちらも合わせてご覧頂けますと幸いです!

ファクタリングとは

B2B取引によって発生した、入金待ちの請求書(売掛金)を他人に売却することによって回収を図る、一種のリスク移転手法です。

OLTAクラウドファクタリングは、売掛債権を「買取る」ことによってユーザーの資金調達を支援することに力点が置かれたファクタリングです。厳密にはファクタリングでも「買取ファクタリング」といわれる領域に属しています。実は古くから存在する手法で、国内の既存プレイヤーには金融系やノンバンク系など大小それなりの数が存在しています。

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中小企業の資金繰り=融資というアンフェア

ファクタリングに注目したのは、中小企業の資金調達環境が大企業のそれと比べてアンフェアであると思ったからです。

大企業であれば、株式、社債、融資調達、さらには資産流動化など様々な資金調達手段があり、適切なタイミングで適切な資金調達手法を「選ぶ」ことができます。

しかし、中小企業は銀行借入に対する依存度が非常に高く、資金調達手段を「選ぶ」ことはおろか、小規模な会社や社歴が浅い会社にとっては唯一の選択肢である銀行借入ですら困難な場合があります。

さらに、ファクタリング自体は古くからある手法にもかかわらず、対面での面談が必須。煩雑な書類手続きがあるなど、長い間アップデートされてこなかった業界でした。

中小企業の資金調達に新しい選択肢をつくることができれば、資金調達環境がフェアになり、地域経済の活性化につながる。そう思ったのが、クラウドファクタリングを始めようと思ったきっかけです。

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「少なくとも」3兆円規模のマーケット

中小企業向けファクタリング市場は、少なくとも3.3兆円のマーケットが存在します。

「少なくとも」と表現しているのは、売掛金はあくまでB/S上におけるある時点での残高だからです。仮に残高ベースの売掛金の入金サイクルが60日だとすると、この6倍(=約20兆円)となります。ファクタリング市場がいかに巨大なマーケットか、おわかりいただけると思います。

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海外先行プレイヤーの台頭、国内市場のホワイトスペース

海外では2012年頃から、アメリカのBluevineやFundboxといった請求書を活用してオンライン上で資金調達ができるサービスがいくつか現れ始めていました。

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日本においても、クラウドファンディングのCAMPFIREやREADYFOR、あるいはオンラインレンディングのLENDYやALTOAなどオンライン上で資金調達できるインターネットサービスは広がりつつありましたが、オンライン上で請求書を売却することができるサービスはファーストムーバーがいない、完全なホワイトスペースでした。

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また、これまでのファクタリングというと、「融資も受けられない場合の最後の資金調達手段」といったイメージがありました。

しかし弊社のクラウドファクタリングは、これまでのファクタリングとは一線を画すユーザー体験を提供し、巨大な潜在需要を喚起することができるサービスである、と考えています。

クラウドファクタリングについて

OLTAが提供するクラウドファクタリングの特長は、以下の3点です。
①はやい(=24時間以内に審査)
②かんたん(=オンライン完結型のUI/UX)
③リーズナブル(=業界最安水準の手数料2〜9%)

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このように、オフィスにいながら資金調達ができる、銀行借入でもVCなどからの出資でもない、あたらしい形のFinTechサービスです。

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与信に強み

約20万社のデータに基づくOLTA独自の与信モデルによって、スピーディでコスト優位性のある審査システムを構築しています。

こう説明すると「全自動で審査しているの?」と聞かれるのですが、「機械化できるところは高度化・効率化、人がやるべきところは人で」といった思想で審査オペレーションを改善しています。

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おかげさまで、2017年11月にサービスβ版をローンチしてから請求書買取の累計申込総額は120億円を突破しました。

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どういったユーザーが使うのか

クラウドファクタリングのメインユーザーの特徴は、以下の通りです。

●売上規模が数億円未満、社員数が10人未満
●売掛金の平均入金サイトが1〜2ヶ月ほど
●製造業、建設業、IT、ソフトウェアの受託会社、人材系の会社、アパレル
   系の会社など
●必要金額は数百万円程度

例えば建設業や製造業では突発的な受注が入って仕入れ代金を用立てる必要が生じた際、銀行借入では交渉に時間もかかる上、融資が実行される確証もないというケースがあります。

またシステムの受託開発企業などでは、毎月発生する従業員の給料支払いや外注費が主な費用です。「納品検収後の入金サイトが長めの売掛金を現金化したい」というニーズもあります。

数十万円〜数百万円のように少額で、かつ運転資金など短期性資金の調達は、銀行から見れば少額すぎて審査すらしてくれないケースもあります。一方で、既存のファクタリング会社は20%や30%といった高い手数料を取られます。

そうした中小企業の資金調達環境において、現状すっぽり空いている「短期少額の運転資金需要」の受け皿として、クラウドファクタリングが機能し、サービスローンチから1年半で120億円超の需要創出につながったと考えています。

起業に至るまで①
〜ノーアイデアで野村證券を退職〜

新卒で野村證券に入り、投資銀行部門で大企業の資本政策や資金調達周りの実務に携わっていました。

優秀な上司や同僚に囲まれ、投資銀行での日々は刺激的でした。しかし数年も経つと「自分で事業をやってみたい」という気持ちが大きくなり、踏ん切りのつかないモヤモヤした毎日を過ごしていました。

そして入社して4年を経過する頃、年収は1千万円を突破。金銭面の不安はなく、任される仕事は多くなり、職場の人間関係にも不満はなし。どんどん「辞める理由」がなくなっていく中で、事業をやってみたいモヤモヤが29歳の誕生日にピークを迎えたのです。

「30歳を、どう迎えたいのか?」。自問自答を繰り返しました。何度問い直しても「起業したい」という答えになったので、「よし、辞めよう!」と、翌日に勢い余って退職を申し出ることにしました。

起業テーマは、ノーアイデアでした。野村の上司や先輩方からは、引き止められるよりは「お前、大丈夫か」と心配をされました。

会社が嫌になったわけじゃない、やりたいことが固まってもいない、にもかかわらず会社を辞める。そんな若手は、誰でも心配になりますよね。

いろいろご迷惑をおかけしましたが、最後は「悔いなく、本気でやりきりなさい」と寛大に送り出してもらったことを覚えています。

起業に至るまで②
〜yentaで壁打ち相手を探す日々〜

退職後は、起業準備と称してベンチャー企業やVCなどでアルバイトをさせてもらいながら、ビジネスマッチングアプリの「yenta」で知り合った人に会いまくりました。事業アイデアの壁打ちをしてもらったり、情報収集したり、仲間集めをするためです。

クラウドファクタリングのようなBtoBサービスだけでなく、BtoCサービスも含めいくつか事業アイデアをもっていました。yentaで出会った人や、紹介してもらった人、つまり初対面の人に対して、自己紹介もそこそこに事業アイデアのピッチを聞いてもらい、率直な感想をもらうという作業を繰り返したのです。

当時は初対面の人と、100人近くyenta経由で会った計算になります。今にして思えば、狂気ともいえます……。

ある日、いつものようにyenta経由で、ソニーに在籍する「武田」という人物に会いました。渋谷マークシティのとんかつ屋さんでご飯を食べながらファクタリング事業のピッチをしたら、思いのほか興味を持ってもらえました。そこから2人でファクタリングのビジネスモデルについて盛り上がり、「また会いましょう!」と固い握手を交わして別れました。

それから武田とは、平日仕事終わりの時間帯でチャットをしながら戦略やビジネスモデルを練り、アクセラレーターに参加する過程で段々と巻き込んでいき、気づけば創業メンバーとしてジョインしてもらうこととなりました。現在は取締役CSOとして、バリバリOLTAのビジネスサイドを牽引してもらっています。

その時のエピソードは、yenta運営の方にも取り上げてもらいました。

起業に至るまで③
〜ハッカソンでの優勝〜

武田と知り合う前後のタイミングで、先輩起業家から「こういうのがあるけど参加してみない?」と言われて紹介されたのが「資産運用ハッカソン」でした。

審査員が、コモンズ投信会長の渋澤さん(渋沢栄一の子孫!)やマネーフォワードCOOの瀧さん、MUFGの藤井さん(現KDDI)はじめ3メガバンクのデジタル担当の方々などなど、ハッカソンにしては錚々たるメンバーを前にビジネスプランを発表できるということもあり、腕試しのつもりで参加しました。

【資産運用ハッカソンの審査員(すべて2017年当時の在籍、役職)】
三菱UFJFG シニアアナリスト 藤井達人氏
みずほFG シニアデジタルストラテジスト 野崎慎二郎氏
三井住友FG 部長代理 天野麻依子氏
日本IBM アドバイザリー IT スペシャリスト 森住祐介氏
トムソン・ロイター・マーケッツ 執行役員 笠井康則氏
PwC コンサルティング パートナー 山本浩史氏
TechCrunch Japan 編集長 西村賢氏
コモンズ投信 会長 渋澤健氏
マネックス証券 チーフストラテジスト 広木隆氏
ライフマップ合同会社 代表 竹川美奈子氏
マネーフォワード COO 瀧俊雄氏

↑当時考えていたモック

結果は6チーム中で優勝を頂き、「おや? これはもしかしたらあるかも?」と自信を得ることができました。

ちなみに、OLTAのスコアリングモデルを構築した創業メンバーの岩渕とは、このハッカソンで出会いました。

起業に至るまで④
〜MUFG Digitalアクセラレータの採択〜

ハッカソンでの優勝によって、「クラウドファクタリングにはポテンシャルがありそうだ」と確認し、より長期で事業化に向き合えるアクセラレーターの参加を考えました。

いくつかのアクセラレーターの応募を検討する中で、MUFG主催の「MUFG Digitalアクセラレータ」は、参加企業にプロダクトがある程度固まったフェーズの会社が多い印象でした。こちらは、「記念受験」のつもりで応募しました。

すると思いのほか選考が順調に進み、ある日事務局から「創業計画書はありますか?」と電話がかかってきました。「もしかしたら、もしかするかも」と思って急ぎで創業計画書を作って提出すると、数日後なんと「採択」の連絡を頂き、晴れてMUFG Digitalアクセラレータ第2期生として参加することになりました。

OLTA設立

MUFG Digitalアクセラレータ参加の条件が「会社設立」であると事務局の方に言われていたので、急いで登記の準備を進めました。

資本金は、自己資金から100万円を拠出。野村證券の投資銀行部門で働いていたので、それなりにお給料はもらっていたはずなんですが、起業するときには貯金がほとんどなくギリギリな100万円だったことを憶えています。

社名は「Alternative(=代替となる、新しい)」を由来として「OLTA(オルタ)」と名付けました。(なぜ頭文字がAじゃなくてOなのか?その話はまた今度)

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↑初代OLTAロゴ

このタイミングで、大学からの友人で創業メンバーの高家(たかや)が野村総合研究所を退職してフルコミットでプロダクト開発に関わってもらうこととなりました。

開発に加え、バックオフィス関連業務を彼が創業初期から巻き取ってくれたおかげで、僕の方では会社の大きな戦略、プロダクトの仮説検証に集中できたのは非常に大きかったと思っています。

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(左から高家、澤岻、武田)

なんとか会社として立ち上がったOLTA。
後編では、「累計30億円の資金調達の裏側」や「OLTAが創りたい未来」、「チームOLTA」について書いていきたいと思います。

後編はこちらから。


著:澤岻優紀
編集協力:澤山大輔

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