ショートショート「ねえ、一緒に落ちてよ」
昼寝でもしようと思って、屋上に続く扉を開くと、先客がいた。
見知らぬ女は、フェンスに寄りかかっていた。あまり背の高くないフェンスだから、今にも落っこちそうに見える。
「ねえ、一緒に落ちてよ。」
女は俺を見るなりそう言った。
「…え、俺に言ってます?」
「当たり前でしょ。他に誰がいるのよ。」
いや、知らないけど。今入ってきたところだし。なんなんだ、この女。
「……いや、ふつうに嫌ですけど。ここから落ちてもたぶん死ねませんよ。痛いのはごめんです。」
そう返すと、女は目を丸くした。