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身体と精神のメタモルフォーゼ・パーク! 養老天命反転地での儀式

養老天命反転地に行って、身体と精神と認識の変容を体験してきました。

養老天命反転地とは

養老天命反転地は建築家・アーティストの荒川修作+マドリン・ギンズが作った、常識に挑戦する公園です。

常に波打ち傾いた、平らなところが一切ない地形。その中に「白昼の混乱地帯」「極限で似るものの家」「昆虫山脈」「宿命の家」などと名付けられた不可思議なパビリオンが点在。

安全性など無視したような急坂、穴ぼこ、迷路、真っ暗闇。この公園を歩く人は平衡感覚や遠近感を狂わされ、自分の体の高さや幅を変えるよう求められます。

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養老天命反転地の「使用法」

パンフレットには「養老天命反転地:使用法」が書かれています。例えば、

・バランスを失うことを恐れるより、むしろ(感覚を作り直すつもりで)楽しむこと。
・どんな角度から眺める時も、複数の地平線を使ってみるようにすること。
・「白昼の混乱地帯」の中では常に、ひとであるより肉体であるよう努めること。
・「宿命の家」や「降り立つ場の群れ」と呼ばれている廃墟では、まるで異星人であるかのようにさまようこと。
・「切り閉じの間」を通る時は、夢遊病者のように両腕を前に突き出し、ゆっくりと歩くこと。
・「陥入膜の径」を通り抜けたり回ったりする時は、目を閉じること。

あるいはこういうものもあります。

何かを決めるために、あるいは以前決めたよりもより繊細に、またはより大胆に(あるいはその両方に)なるために、「もののあわれ変容器」を使うこと。
遠く離れている家同士に、同じ要素を見つけること。最初は明らかな相似を見つけ出し、だんだん異なる相似も見つけ出すようにすること。
・自分の家とのはっきりした類似を見つけるようにすること。もしできなければ、この家が自分の双子だと思って歩くこと。

これらに従って動くことで、身体と精神に変容が起きていきます。


「自分は妖怪になった!」

例えば自分の場合「ひとであるより肉体であるよう努め」た結果、斜めに傾いた柱に立ったままもたれかかる動かないオブジェになりました。一緒にいた友人はもっと活動的な肉体となったようです。

薄暗く狭いパビリオンで、頭を低く歩き続けたときの変容は「自分は迷宮の中を歩いているモンスターか妖怪になってしまったのだ!」そして「自分は妖怪なんだから怖いものなんてないし、なんでも大丈夫なのだ!」という自己肯定感につながりました。

自分のオリジナルの使用法を考えて実行してもよいと思います。


人間は死んではいけない

荒川修作はなぜこのような場所と使用法を作ったのでしょうか。

彼のアーティストとしての最大のテーマは「死を克服すること」でした。戦時中、少年だった彼は同い年くらいの少女の病死体を、隣に横たわり抱きしめて「人間はこんなことになってはいけない」と感じました。

「人間は死んではいけない!」

そしてそれは彼の生涯を通じてのテーマとなったのです。

「人は死ぬ」という事実は、我々にとってあたりまえの常識です。でも、このあたりまえの思い込みを壊すことで「人は死なない」が常識の世界が作り出せるのではないか?


認識をメタモルフォーゼさせる装置と儀式

養老天命反転地は、人間の身体と精神、認識に変化を作り出す巨大な装置です。使用法はそれを促す儀式の指示書なのです。

みなさんも「違う常識の世界」を発見するために、ぜひ養老天命反転地を訪れてみてください。そしてこの指示書を持ち帰り、帰宅してから自分の家や街でやってみることも忘れないで!