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2019/08/04 風をよむ「科学は万能?」

ワシントンポスト紙・7月26日「それはこっそりと忍び寄ってきた」「びっくりした!本当のショックだ!」

7月26日のワシントンポスト紙に掲載された、驚きのニュース。

その原因は、直径がおよそ130メートルの小惑星「2019 OK」でした。

この小惑星が、7月25日、地球からおよそ7万2000kmの地点を、通過したというのです。

7万kmといえば月と地球の距離・38万キロのおよそ5分の1にあたり、広大な宇宙空間では、ニアミスとも言うべき事態。

地球と衝突の恐れがある天体を監視する、日本スペースガード協会は、もし地球に衝突していれば、東京23区ほどの広い面積に、被害がでた可能性があるといいます。

驚くべき事は、これだけ科学が発達した現代であるにもかかわらず、天文学者たちが、この小惑星の存在に気づいたのが、最も地球に近づく数日前。しかも大きさやコースが判明したのは、わずか数時間前だったという事実。

天文学者の一人は、こう語っています。

「地球の近くを飛び去ってから、何が起きたのかわかった」

まさに、東日本大震災の時、多くの人が口にした、「想定外」ということばが、思い起こされる出来事。このニュースをどう受け止めたらいいのでしょう。科学者としての視点から、生命の姿を見つめる、中村桂子さんは  

中村桂子・JT生命誌研究館館長「想定外という言葉を聞くんですけど、それは何でも知ってるって思うから想定外って言うのでね、知ってるというのは勘違いだと思いますね。私たちが、これで世界ができているよって思っていた、(分かっている)物質は全体の4%。科学は何でも知っている、何でもできると思っている。本当に、大きな勘違い。」

「判ったつもり」になっている、人間の“勘違い”。その勘違いが、今、大きな問題を生んでいると、中村さんはいいます。

その“勘違い”の例として、中村さんがあげたのが・・・

記者「すごい、完全に自動で走っています」

記者「こちらのお弁当、人と一緒に盛り付けてくれるのはロボットなんです」

日常生活に急速に浸透し始めている、人工知能=AI技術。
AIが、人間にとってかわるのでは、という不安が生まれている現状を、
中村さんは

中村桂子・JT生命誌研究館館長「AIが人間を超える。これはありえない。AIと人間は全然違うから。AIは科学技術が作っているもの。論理、理屈ですね、それと統計、それから確率。この3つだけでできあがっているんですよ。人間が持っている一番大事な能力は想像すること、もう一つの創造力。 人間同士が心を通い合わせながら、“ふと”思いつく、みたいな事が大事なわけで。それができることが人間でしょ」

そんな中村さんが、今、大変心配している分野があります。

数珠つながりになって、空間を移動していく、一群の物体。 オランダの天文学者が公開したこの映像は、今年5月、アメリカの宇宙開発企業、スペースXが打ち上げたインターネット用の60基の人工衛星だと言います。

スペースXは最終的に1万基以上打ち上げる計画で、また、アマゾンドットコムも3000基以上の衛星を打ち上げる計画です。専門家からは、衛星の反射光などが、天体観測の妨げになるのでは、と懸念する声が上がっています。

科学技術を駆使する企業の、競争の場となった、宇宙。一方では・・

今年1月、世界で初めて、月の裏側への軟着陸に成功した中国。2022年には中国独自の宇宙ステーションの完成を予定、こうした動きの背景には、宇宙での覇権獲得の狙いがあるとみられます。これに対してアメリカは・・

アメリカ合衆国 ペンス副大統領「宇宙軍を設立するときが来た」

2020年までに宇宙軍を設立すると発表。こうした覇権争いは、一歩間違えれば、宇宙での武力衝突にもつながりかねません。

中村桂子・JT生命誌研究館館長「宇宙軍というものを作って、俺の物だみたいな。経済競争の中で(衛星を)上げちゃうみたいな。競争して競争してっていうと謙虚さを失うじゃありませんか。科学万能じゃないですね。私は、科学技術を否定するつもりはないし、上手に使っていきたいと思うけれど、今の科学の有りようが、人間のおごりを増長させている。科学って本来は、人間を謙虚にするものなんですよ。知らないことあるな、とか、宇宙って大きいよな・・・とかね」

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