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2019/4/7 風をよむ「安保法施行から3年」

●安保法の今後は?

●日米一体化の問題点を考える

●施行3年で見えてきたこと

岩屋防衛相「中東の平和と安定へのさらなる貢献を目に見える形で示すことに加え自衛官の人材育成という面でも大きな意義がある」

今月2日、政府は、かつて中東戦争の激戦地だったシナイ半島で停戦の監視に当たる、MFO=多国籍軍・監視団に司令部要員として自衛官2人の派遣を閣議決定。二人の自衛官は、今月19日から11月30日まで現地に派遣されます。

MFOは、国連主導のPKO=国連平和維持活動とは異なり、多国籍軍が行う活動で、今回の派遣は、安全保障関連法で新設された「国際連携平和安全活動」の初めての適用となり、注目されました。

記者会見では、こんなやりとりも・・・・

記者「一部では、今回の要員派遣が将来的な部隊の派遣につながるといった懸念の声もあるが・・・」岩屋防衛相 「今回の派遣はあくまでも司令部要員2名の派遣で部隊の派遣などは全く考えていません」

こうした動きについて、元防衛官僚の柳澤さんは・・・

元内閣官房副長官補・柳澤協二さん「日本も軍事的な貢献をするという意味での実績作りという側面が大きい。安保法制では国連が統括するPKOだけじゃなくて多国籍軍にも派遣できるようになっている。シリアで活動しているのも多国籍軍。しかし、実績を作ったが故に(日本が)本当に求められた場合、どういう判断で、こちらは出してこちらは出さないと、ちゃんと説明できるのだろうかという心配がある」

振り返れば2015年・・・

国会の内外で反対の声が高まる中、成立した「安全保障関連法」。翌年3月29日に施行され、この3月、丸3年が過ぎました。
  
それまでの歴代内閣が維持してきた、憲法解釈を変更して 集団的自衛権の限定的行使を認めるなど、海外での自衛隊の活動を 大幅に拡大、戦後日本の安全保障政策を大きく転換するものでした。

いわゆる安保法成立後、その法律を根拠にした動きを見ると・・・、

2016年、南スーダンのPKOに参加している陸上自衛隊の部隊が安保法に基づく「駆けつけ警護」の任務を行うことが可能に。

2017年には、アメリカ軍の艦船を守る「米艦防護」や、イージス艦への給油を実施。

防衛省は、去年1年間に自衛隊がアメリカ軍の艦艇や航空機を守る「武器等防護」の活動を16件実施。前年の2件から急増しました。

こうした動きから見えるのは、アメリカとの軍事面での一体化です。現に、先月、施行3年を迎えた「安保法」について、政府は…

菅官房長官「日米同盟はかつてないほど強固になり抑止力、対処力も向上し、地域の平和と安定に寄与している」

「安保法」成立で、日米同盟は強化され抑止力が向上したとする政府。しかし、日米の一体化による『抑止力』、と言う考え方に、柳澤さんは・・

柳澤さん「抑止力というキーワードのもとに思考停止しちゃっている」

かつて安全保障政策に深く関わった柳澤さんは「日米同盟による抑止力」という考え方について、日米の間に、深刻な食い違いがあるといいます。

元内閣官房副長官補・柳澤協二さん「アメリカにしてみれば戦争に勝つ力こそが抑止力。それに対して日本の発想は、アメリカと一体化して抑止力が働けば戦争にならないんだから巻き込まれる心配など、考えなくてもいいんだと思っている。そこに大きな食い違いがある。一体化していけば、当然巻き込まれる。それをどう避けるか考えなければならないはずなのにその心配を全くしていない。独自に何をすればいいのかという発想が出てきていない」

自衛隊と米軍の一体化は、軍事面にとどまらず、年々、増加し続ける防衛費にも反映しています。

防衛費増加の背景には、アメリカが同盟国や友好国に対し、武器などの装備品を有償で提供する際、適用される「有償軍事援助=FMS」という特殊な契約の仕組みがあります。

日本など相手国は最新の武器を購入できる一方、アメリカ政府に価格決定を主導され、高額化しやすく アメリカに有利な条件がつけられるとの懸念が出ています。

オスプレイや最新鋭戦闘機F35Aはこうした仕組みに基づいて、調達され、地上配備型のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」もFMSによって購入する予定です。

安保法施行から3年、「一体化」を深めている日米同盟。

中国、韓国、北朝鮮、ロシアなど、周辺諸国との外交が行き詰まる中、アメリカの「抑止力」頼みの安全保障政策は 日本をどこに導いていこうとしているのでしょう?


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