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【世界リレーシレジア2021展望①】

東京五輪と22年世界陸上ユージーン大会出場権をかけて日本は5種目に参加
新戦力が台頭した男子4×400mリレーは五輪出場権獲得の期待大

 世界リレーシレジア2021が5月1、2日と、ポーランドのシレジアで開催される。世界リレーは世界陸連が主催するリレー種目だけを行う世界大会。2014年に新設され、14年、15年とバハマのナッソーで行われ、その後は奇数年に隔年開催されている。日本は15年大会の男子4×100 mリレーで銅メダルを獲得した。19年大会は横浜で開催され、日本は男女混合4×400mリレーで3位、男女混合シャトルハードルリレーで2位、国別対抗で3位という好成績をおさめた。
 シレジア大会には男女の4×100 mリレーと男女の4×400mリレー、男女混合4×400mリレーの5種目に選手を派遣。すでに代表権を得ている男子4×100 mリレーを除く種目では、上位8カ国に東京五輪代表権が与えられる。また、男女4×100 mリレーと男女4×400mリレーの上位10カ国と、男女混合4×400mリレーの上位12カ国に、22年の世界陸上ユージーン大会出場権が付与される。

●新メンバーが台頭。池田は医師と代表選手を両立

 以下のメンバーを派遣する男子4×400mリレーは、五輪代表権獲得が有力だ。
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伊東利来也(三菱マテリアル)
池田弘佑(あすなろ会)
板鼻航平(Accel)
佐藤拳太郎(富士通)
川端魁人(鈴鹿市立創徳中学校)
鈴木碧斗(東洋大学)
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 日本は19年世界陸上で準決勝に進んだウォルシュ・ジュリアン(富士通)が、左ヒラメ筋の肉離れの回復が万全ではないため欠場。代わってエースとしての走りが期待されるのが伊東利来也(三菱マテリアル)だ。昨年の日本選手権優勝者で、今年3月末の世界リレー・トライアル400 mでも優勝し、充実が著しい。
 世界リレー・トライアルで2位に入った池田弘佑(あすなろ会)は、鳥取大医学部出身で昨年から医師として勤務している。代表レベルでは異色の選手だ。大学3年時までは400 mで47秒を切ることができず、全国大会での活躍もなかった。4年時(17年)に46秒台に入ると、日本学生個人選手権や国体で下位入賞。6年時(19年)秋には日本インカレ4位、国体2位、デンカチャレンジカップ優勝(46秒53の自己記録)と快進撃を見せた。今回の世界リレーが初の日本代表となる。
 今回の日本チームで400 m最高タイム(45秒58)を持つ佐藤拳太郎(富士通)も、17年と19年の世界陸上、前回の世界リレー代表と経験が豊富な選手。
 新エースの活躍が期待される伊東と、新たな戦力として期待される池田。佐藤はリーダーとしての役割も期待できる。

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●結果を出してきた「前半から攻めていく戦術」

 新しいメンバーが台頭している一方で、田村朋也(住友電工)、若林康太(HULFT)、井本佳伸(東海大)、北谷直輝(東海大)ら、19年の世界大会で代表だった選手の多くを欠く陣容になった。複数年代表で活躍する選手が、国際大会での力を発揮できる傾向がある。
 日本陸連の山崎一彦強化委員会トラック&フィールドディレクターは、「3分2秒台を出していた19年頃と違って未知数のチームですが、それでも戦術のコンセプトは変えずに臨みたい」と話す。
 日本は14年のアジア大会金メダル、19年の世界リレー決勝進出など、前半からスピードを出し、トップを走ったり強豪国に食い下がったりしたときに好成績を挙げている。後半勝負と思って前半を抑えた場合、実際に前半に大差をつけられると硬さや力みが生じ、後半も本来の力を出せないことが多かった。
「前半から攻めていくコンセプトです。成功体験を重視したい」と山崎ディレクター。佐藤はその走りを19年の両世界大会でしっかり行っていた。伊東も200 mはあまり出場しないため自己記録は21秒16だが、実際の走りは200 mをかなり速く入る。
 経験不足から萎縮さえしなければ、シレジアでも攻めの走りを日本チームは見せることができる。

●決勝進出以外の五輪出場権は世界ランキングで決定

 決勝に進出すれば東京五輪代表権が得られるが、前回大会は3組2着+2(3着以下のタイム上位2チーム)が決勝進出条件で、「+2」の2番目は3分03秒53だった。日本は19年の世界リレーも世界陸上ドーハ大会も3分2秒台で、世界リレーは決勝に進んでいる。さらに今大会は、19年の2大会で決勝を走った米国とトリニダードトバゴがエントリーしなかった。エースのウォルシュを欠いたのは痛手だが、可能性はある。
 だが可能性としては、予選を突破できないこともないとは言い切れない。そのときに東京五輪出場権をどうすれば取れるのか。
 現時点で出場権を得ているのは19年世界陸上ドーハ大会で入賞した8カ国である。優勝した米国以下、ジャマイカ、ベルギー、コロンビア、トリニダードトバゴ、イタリア、フランス、英国だが、米国とトリニダードトバゴが世界リレーには出場しない。
 仮にドーハで入賞した5カ国がシレジアで上位8カ国に入った場合、シレジアの8位以内で新しく出場権を獲得するのは3カ国しかない。世界リレー終了時点で出場権を持つのは11カ国ということになり、残り5カ国は6月29日時点の世界ランキングで選ばれる。
 その世界ランキングが日本は現在、3分02秒05で9位につけている。リレーの世界ランキングは個人種目と違って、措定期間内に2カ国以上が参加した国際大会での記録によって決まる。つまり世界リレーで上位8カ国(決勝)に入れなかったチームは、適用期間内の持ち記録の上から順に選ばれる。
 世界リレー終了時に出場資格を得ている(仮に)11カ国以外で、日本の3分02秒05を5カ国以上が上回らなければ日本は出場権を得ることになる。つまり日本は世界リレーで上位8カ国以内に入らなくても、五輪出場権を獲得できる可能性は高い。
 しかし「東京五輪の入賞が一番の目標なので、そのためにも世界リレーで決勝進出を目指す」(山崎ディレクター)と、決勝以外の道筋は考えていない。あくまでも決勝に進み、その場で代表権獲得を決めるつもりで臨む。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

放送は5月2日(日)深夜2時13分 TBS
動画配信サービス Paravi でもLIVE配信


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