ボクはクビになりかけた。

「これ以上NG出すんなら、もう営業させられないぜ?」



2019年1月初旬に、上司に電話越しで言われた最後通達だった。


 

出張先で訪問営業して回るぼくは、ことごとく受注できない日々が続いた。その結果に対して痺れを切らした上司の研修を入れるから出張先から戻すぞという言葉は、事実上の戦力外通告に聞こえた。


 


“今週残り2日あります、立て直すことができなかった場合はそのようにお願いします。”


 


悔しさで泣きそうになりながら、震えた声でそう告げて電話を切った。崖っぷちだった。


宿泊先のホテルへ向かうために車を走らせ、2日でどう立て直すか試行錯誤。今までの受注にできた営業を振り返り、これまで読み漁った営業ノウハウの本を思い出す。


ラポール形成、マインド、フットインザドア…、余計に混乱し絶望した。


 


 

するとラジオから


 


“こんにちは~~!!!”


 


という声が聞こえ、いつの間にか聞き入っていた。


 

紹介する商品は和牛の切り落としで、年末のお歳暮などで送るような品質の高い和牛だが、切り落としだから大きさや形、脂のサシの入り方が不揃いであるからお手頃価格ですよ、というものだった。


 


運転を止めて、思わず携帯を手に取り電話をかけて注文してしまいそうになったが、


“いかんいかん!和牛なんて場合じゃない、クビが掛かっている状況じゃないか!”


と正気を取り戻すと同時に自分自身が和牛の切り落としが無性に欲しくなってしまったことを不思議に思った。


もしかして、通販番組に営業のヒントがあるんじゃないか?


今までなんとなく聞き流していたラジオ通販を思い返してみると、


エアコンやPC、英語教材など様々な商品があるが、全て同じ流れで商品紹介されていることに気がついた。



【超元気なアプローチ】 
こんにちは~~!という元気なあいさつ

【ちょっとメリット紹介】
・今回、お手頃なのにとっても美味しい和牛があるんです!
・高性能のノートPCがびっくり価格!

【テストクロージング】
○美味しい和牛がお安く手に入るなら欲しいですよね?

○高機能のノートPCがお安く手に入るなら欲しいですよね? 

【怒涛のメリット紹介】
・〇〇牛、お歳暮でも喜ばれる、A5ランク級…
・100円の驚き価格、スペック、持ち運びやすさ、使い方サポート…

【デメリットをサラッと】
・切り落とし肉なんで…

・wi-fiの契約が条件

【クロージング】 
数に限りがありますので、お申込みはお早めに!オペレーターを増やして対応中!

内容は違えど、おおよそこの流れに当てはまることに気がついた。

“小手先だけ変えるだけじゃ改善はしない。崖っぷちを切り抜けるためには大きく変化しないと、営業クビの未来は変えられない。”

崖っぷちを切り抜けるラジオ通販営業!と心で叫び、翌日の営業に臨んだ。

こんにちは~~!!と営業先に入った僕は、ジャパネットたかたのようにトークを進め、

2日間で7件中6件を受注にすることに成功した。


上司はこの改善結果を認め、研修で事務所に戻すことを取りやめた。

ここからの僕は好調になり、45%くらいだった受注率を2ヶ月で70%まで引き上げることに成功。


崖っぷちを切り抜けるヒントは意外と身近にあるという経験であった。 

※さすがにクビは無いです(-_-;)


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?