クリエイティブにおけるレイアウトの話
元WEBデザイナーが、noteで目にして気になった事をつらつらと書いていきます。今回は「レイアウト」について語ります。デザイナーめざして職業訓練やスクールで学んでいる人、就活中の人に読んでいただければ幸いです。
レイアウトと音楽とリズム
レイアウトとは何でしょう?「画面の構成要素を見栄え良く配置する事」と考えている人も多いのではないでしょうか。
レイアウトの本質は、「平面空間をバランスよく分割する事」であると、筆者は考えます。
一方、音楽には空間はありませんが、時間軸は存在しています。音楽は時間軸を一定の法則に基づいて分割するのが基本構造になっています。そのように時間軸を分割することで、音楽には「リズム」が生じます。これは空間を分割した際にも同じ事が言えます。
レイアウトが「平面空間の分割」であるとするならば、そこには「リズムが生じている」ことになります。「平面空間をバランスよく分割する事」とは「心地よいリズムを刻む事」と同義であると、筆者は考えます。
究極的にはリズムの良し悪し
人は誰でも視覚像を認識する際、地と図の関係、モノとモノの大きさ、色、形状(シェイプ、フォルム)の対比で生じるリズムの良し悪しを感覚的に感じています。ぱっと見て面白くない、退屈なレイアウトは、リズム感が良くないと言い換えることもできるでしょう。
アーティスト、デザイナーの訓練は感覚的、無意識的に感じている事を論理的、意識的に行えるようにすることを目的としていますが、論理的説明や言語化が難しい部分、事例もありますし、限界もあります。
レイアウト=リズムのように、視覚的な分野を離れ、音楽等、異なる分野からの視点でアプローチを試みると理解が進む事もあります。
基本はグリッドレイアウト
平面空間におけるレイアウトの基本はグリッドレイアウトになります。
グリッドレイアウトというと、方眼紙のようなグリッドを想像する方が多いと思います。エディトリアル、WEBデザインにおいてはその認識でも問題ありません。
エディトリアル、WEB以外の場合は方眼紙グリッドだけでは成り立ちません。ロゴやアイコンのデザインの際には、それに応じたグリッドシステムを用意する必要があります。
有名な事例では、AppleのiOS向けアイコンデザインのグリッドシステムがあります。基本フォルムは正方形ですが、その中に対角線と二重の円のガイドラインが用意されています。(詳細は「アップル アイコン グリッド」で検索)
ロゴデザインにおいては、デザイナーが各自デザインする際に自身のコンセプトに基づいたグリッドシステム、ガイドラインを用意している事が多いようです。アイソレーションを定義する際に良く用いられる「基準値a」は、ロゴをデザインする際に用いられるグリッドシステムの基幹部分に相当する事例が多いです。
ちなみに筆者はInstagram投稿用画像を作成する際、独自に用意した縦長構図用(4:5の画角)ガイドラインを用いています。これは詳細表示(4:5)とサムネイル(1:1)のどちらの表示でも見栄えを良くすることを意識して設計しています。
瞬発力、想像力が必要な時もある
ドローイング、一筆書き、書道、スナップ写真等、グリッドを引くことができず一発勝負で書き込まなければならない事例もあると思います。これらは自身の頭の中で「バランスの良いレイアウト」を想像しなければなりません。
そのような場合のレイアウトに対するアプロ―チは人それぞれあると思います。頭の中に方眼紙や、水平垂直の分割線をイメージする人もいるかもしれません。
筆者は「地と図、モノと余白の関係性で見て、バランスの良さを考える」方法を採用しています。スナップ写真の撮影等、シャッターチャンスが一瞬しかない場合に重宝しています。
地と図、モノと余白の関係性で見る
「地と図、モノと余白の関係性で見て、バランスの良さを考える」レイアウト法はブロークングリッド、タイポグラフィ等でも活用することが可能です。
特にタイポグラフィの文字の大きさの変更、字間の調整において、利用する機会は多いでしょう。
グリッドレイアウトと違い、理論より感覚にたよる部分が多くなるため難易度が高いですが、習得できればより自由度の高い表現が可能になります。
ではどのようにすれば、「地と図、モノと余白の関係性で見て、バランスの良さを考える」を習得できるのでしょうか?
筆者のおすすめは「洋の東西を問わず、絵画を見て分析する」です。特に東洋の絵画 - 水墨画、日本画 - は西洋の数学的グリッド構造とは異なる理論で画面が構築されていたりするので、感覚を養うのに良い教材となります。絵画以外にも、日本庭園や盆栽の鑑賞も良いと思います。
グリッドが最適解とは限らない
レイアウトの基本はグリッドではありますが、杓子定規にすべてのクリエイティブをグリッドに当てはめるのはいささか退屈ではあります。
UIデザインのように機能性優先のシステマティックなデザインであれば、グリッドシステムに基づく整然としたビジュアルの方が好まれますし、それが最適解であると言えるでしょう。
一方で広告表現のような、人の感情にアプローチしなければならないクリエイティブでは、グリッドシステムは時として退屈な印象を与えてしまう事があります。
グリッドシステムを崩してもバランスを損なわない、自由度の高いレイアウトも使いこなせるように鍛錬しておくことが肝要であると言えるでしょう。
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