見出し画像

一人芝居での一人観客。商店街での演劇。舞台は観客の身体⁈

歩いて30秒の所にあるコミュニティー食堂のおぐセンター二階で、辻村優子さんの「ほぐしばい~よみほぐし実践編~」を観劇してきました。

前代未聞の演劇。

俳優辻村優子さんと観客の、一対一の演劇。

ひとり芝居、ひとり観客。

舞台は、というと、おぐセンターの二階の空間とも言えますが、ある意味、観客の身体が舞台なんです。

辻村優子さんは俳優でありセラピスト。

身体をマッサージしてほぐしてくださいます。

世間一般的には、ほぐしてもらう間、他愛のないおしゃべりをしたりするものかもしれません。

しかし、これは演劇です。
時々、語りが入ります。

遠い昔の、小さなころの話から。

語りがなくマッサージを受けている間は、自分の身体と意識は、彼女の指先が当たっている部分に集中します。見えないはずの自分の体の皮膚の中まで見えているかのようです。

筋肉の凝り固まっているところは、力を入れて広げるなどしてもらい、和らいでいきます。

つま先などの神経の集中しているところは、別の力加減で、その刺激も心地いい。

時折すーっと、問わず語りが入ってきます。

聞いていると、自分も小さな頃の思い出が蘇ってきます。

すると、自分の意識は触れられている身体から離れて、話から連想する世界に飛んで行って、これはこれでリラックスしていくのが分かります。

昔の記憶をたどりながらマッサージを受けていたら、自分の身体の今に至るまでの記憶が蘇ってきました。

大学時代から自転車旅行が好きで、日本中、外国も旅し、身体を酷使し、歩いて東京から京都までテントを担いで行く旅や、山小屋での厳しい生活、稼業天ぷら屋での立ち仕事などなど。

初めて、自分の身体にマッサージを受けさせていたら、身体が「ありがとう、ありがとう」と言うのが聞こえた気がしました。

いや、こちらこそありがとうだ、無理かけてきたな、と少し目頭が熱くなりました。

まるで、老夫婦がお互いをいたわるように。

うつ伏せ、または仰向けで目の上にタオルを置かれている状態で間近で聞こえてくる辻村さんの語り声は、まるでラジオドラマのようです。ラジオのスピーカーから聞こえてくるドラマも味わいがありますが、自分のためだけに語ってくださる「ラジオドラマ」の声は、身体の皮膚からも、お腹からも伝わってきます。

マッサージからくる体の刺激と、ラジオドラマの語りが、行ったり来たり、昔の記憶と、今この場所での出来事が行ったり来たり。

私の暮らしている商店街の音、目の前の鶏肉屋さんのお客さんとの話声、おぐセンターの一階では、普段お世話になっている子育てサロンの人たちの、利用されている方々との明るい声がBGMとして聞こえてきます。

意識は、いろんなところを行ったり来たりしていますが、自分はここで生まれて育ってきたんだな、と一つにまとまってきます。

昨日は、地元の絵本作家さんの個展が、東尾久の(うちは西尾久)OGUMAGさんというギャラリーで行われているので伺いましたが、とても素敵な、モロッコと日本、尾久を結んでくれる作品で、それも思い出しながらマッサージを受けて、いろんな人の顔が浮かんできて、いい街になったなあ、と心がほぐれてきました。

身体全体をほぐしてもらい、頭や肩、首まで来ました。

そろそろエンディングが近づいてきたと思った瞬間、突然辻村さんが大きな声で、商店街に響く声で、自分が呼ばれた気がしました。

えっ、これが噂の、、、

そしてエンディング。

起き上がってくださいと言われ、起き上がったが、すぐに座りたくなって、へたっと、近くの椅子へ。

ぼーっと数分しながら、感想などを。

導入部分、エンディング部分、この商店街の雰囲気を自然な形で借景してくださいました。

タニノクロウさんの、とある演劇を10年ほど前に体験して、商店街と演劇、という組み合わせで何か出来ないか、そうずっと思っていました。永遠の演劇初心者の私にはわざとらしい組み合わせしか考えられませんでしたが、こんな自然に、俳優さんの良さが生かされて、そんな組み合わせが可能なんですね。

いま、ゆっくりゆっくり余韻を楽しんでいます。

本当に豊かで贅沢な時間でした。

また、こんなラジオドラマを、効きたいなあ。

ありがとうございました。






この記事が参加している募集

ふるさとを語ろう