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洞窟から出た時に見えるもの

熊代亨さん「人間はどこまで家畜か」を読み終えた。

採集民族から農耕民族になって、権力や国が生まれて、そこまで行くともう、人間は家畜になるか、家畜を統率する人間かの2つしかないんじゃないかと思いながら読んだ。

ランダムに書いていきます。

筆者が伝えたいことは、人間が作っていく社会は技術等によってどんどん変化して、それに合わせて人間も生活様式を、思考の中でそれなりに変えていくことはできるが、人間の肉体をその社会に適応できるように変えられる時間とのタイムラグに、問題を感じている。

子供を生んで育てていくのは、今の、これからの世の中の人間が生きるうえではコスパ、タイパでは、ランクが低い、という風潮が世界的にある。

今の社会は、子供を育てる時に、生きるために必要な栄養と環境をほどほどに与えれば、それでニコニコして育つのが理想で、それを薬や遺伝子治療で出来る未来が近いそうだ。

そもそも、恋愛をして結婚をして、セックスをして子供を産むという仕組みすらなくなる近未来も予想されている。

それでいいなら、いいけど、本当に良いの?という筆者の問いかけ。

話は飛びますが、私は二十代後半に、箱根で働いていた時に精神的に追い込まれていて、友達が来てくれた時に、無分別に酔っ払って小田原まで彼と車で飲みに行ったことがありました。

深く酔い、帰る時の運転がいかにも悪いものだったのだろう、後ろを走っていた車がやばい人達で、ある所で車を止められ、どつかれた後に警察に通報されました。

結果、確か略式起訴という形で、霞が関まで出頭して前科者になりました。

一発免停で、運転禁止期間があり、丸一日の講習を受けました。

その講習を受けながら、「今の時代、車の免許がないと生きていけないし、車社会という世界を活用して、警察は、国家はいろんなタイプの人間をコントロールしているんだなあ」と思ったことを思い出しました。

これも家畜化だと思います。
(当然警察が悪いわけではありません。安心安全を求めているのは主権の国民だから)

そうやって人の欲望をコントロールしながら、人間が人間になったときから家畜化は始まっている。

また話が飛びます。

100分de名著で、この数日はプラトンの「饗宴」を見直していました。

色即是空の意味が、この饗宴で分かった!と昔思った記憶があって。

この本は、「愛」「美」について、飲み会の席で話す、という形式で哲学を語る文章らしいです。

エロスの観念は、ここから生まれたそう。

この第四週(このテーマの最終回)に、洞窟の中のシーンが出てきます。

人々は洞窟の中の壁に向って、縄で縛られて座って、壁に映る誰かが作る影(映像)をひたすら観て過ごしています。

影として映る物語が自分の世界の全てだと思って、そこにいる人達は生きています。少し前ならテレビ、今ならSNSかもしれませんね。

ある一人が、縄を外され自由になり、洞窟の外に出ます。

あまりの明るさに目がくらんだ後に、洞窟の中とは全く違う、美しいありのままの自然の世界に出会った、という話。

「人間はどこまで家畜か」を読むと、私達は家畜化の変遷を知ります。

すでに、アリストテレスやプラトンの時代にも、家畜化され壁に映ったものだけを信じて生きてきた人達がいた。

この100分de名著と、「人間はどこまで家畜か」を同じタイミングで読めたのは、ナイスだった。

さらに話が飛ぶんですが、私が忘れられない演劇があります。

タニノクロウさんの演劇。
いいリンクがないので、これで。

ほぼ真っ暗な室内で始まる演劇で、暗さに目が慣れてくると、少しずつ状況が分かってきます。

小人症の人達が登場して、いくつかの行為を始めます。

彼らは背が低いので、高いところにあるものを動かしたいと思った時に、できない事ばかりなのです。

それに気づいたら観客が、動き出します。

誰も気づかなければ、その演劇は終わってしまうのです。

それに気づくか気づかないかの時に、「天ふじさん、お前動け」と、言われたような気がして、観客の私が、確か二番目に動きました。

演劇は観るだけのものと思っていた根底が崩れました。演劇に参加できた瞬間。

そして、そのほぼ真っ暗なホールの中での演劇は、演劇鑑賞初心者の私が驚くことに、小ホールの扉を開けて外へ展開。

そこからさらに、驚くフィナーレになったのです。それは私にとって天と地がひっくり返るようでした。

そのフィナーレは、100分de名著のその回で出てきた、洞窟の外にどれだけ素晴らしい世界があるか、と全く同じメッセージだったのです。

人間は家畜である。

天ふじのオヤジも家畜である。

それはいい。受け入れる。

家畜であっても、実は縄も解きたければ自分で解けて、洞窟の外の自然の美しさを見ることも出来るんだよ、その意欲を失ったら洞窟の影絵を見るだけなんだよ、と教わった。

この本と、100分de名著の「饗宴」と、タニノクロウさんの演劇のおかげで。

今日は母の三回忌。

父は今年90歳になるのに元気。

父親の介護まで、少しの間、好きな事ができるかなと、法事の後、自転車に乗ったり、飲んだりさせてもらえた。

母のお墓の近くの「さくら水産」で。

南無南無

リンダリンダ