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天空の修道院とロックバンド|旅行記

リンキン・パークというアメリカのロックバンドがある。
2000年代に高校生だった私は、彼らのセカンドアルバム『メテオラ』(2003年発売)を聴いて、好きだな、と思った。

どこか切ないメロディーと、内省的な歌詞。
マイク・シノダのラップとチェスター・ベニントンの美しい歌声。

アルバムに収められた音楽はどれも気に入ったが、特に印象深かったのはアルバムのタイトルだった。

『メテオラ』
ギリシアにある、奇岩の上にある修道院共同体。
メンバー曰く、そのビジュアルもさることながら、名前そのものが持つエネルギーに魅せられた、と。

天空の修道院

正直、メテオラという名前について、日本語母語話者で、特段ギリシアに明るいわけでもない高校生の私には、彼らの言うエネルギーはよく分からなかった。
ただ、写真で見た彼の地にはいくつもの巨大な岩がそそり立っていて、とても奇妙で神秘的だった。たしかに、これはただものじゃない、と思った。
ところが、そのうち私の興味は別のものに移っていき、リンキン・パークはたまに聴く程度になってしまい、いつしかメテオラのことも記憶の奥底へと沈んでいった。

岩の上から日没を望む人々

2017年にチェスターはこの世を去ってしまった。
そのときはもうあまり洋楽を聴いていなかったが、とても驚いたし悲しかったのを覚えている(ちなみに、同じ年の年末には、K-POPアイドルSHINeeのジョンヒョンもこの世を去ってしまった。彼の歌声も好きで、推しだった)。
久しぶりにアルバムを聴いて、やっぱり好きだな、と思った。
相変わらずメテオラという名前の持つエネルギーは分からなかったけれども。



コロナ前の2019年、ギリシアに行く計画を立てたとき、真っ先に思い出したのが、メテオラという響きだった。

麓の町から見上げた様子

そもそも、メテオラの巨大な奇岩は、6000万年前に海底で堆積した砂岩が隆起したものらしい。6000万年前というと、恐竜などが大量絶滅した500万年後くらい。太古の昔からそそり立っているのだ。
9世紀頃には修道士が住み着き、14世紀頃から修道院共同体が育まれていったという。歴史に翻弄されながらも現在に至る。今でも祈りの場であり、修道院によっては見学ができない。

地名の由来は、ギリシア語で「中空の」を意味する「メテオロス」(μετέωρος)。
天空の城ならぬ天空の修道院である。

巨大な岩の上にある修道院
現在6つの修道院が活動中


キリスト教徒ではないが、もし天国や極楽があるとしたら天上だと思っているので、いつもより少しだけ天に近いのは気分が良かった。

物資のやり取りは、縦移動でも横移動でもロープが大活躍


地上から見上げる奇岩の一群は圧倒的な迫力があったし、奇岩から見下ろす地上は人々の営みが広がっていて、やはりある種の迫力のようなものがあった。

眼下には白い壁に赤い屋根の家がたくさん
修道院の葡萄畑

修道院も麓の街も観光客でごった返していたが、それでもたしかに祈りの場であった。屋内に描かれた美しいイコンが、それを雄弁に物語っていた。
撮影NGだったのが残念。

今年、『メテオラ』がリリースされて20周年だという。
チェスターに特に哀悼の意を捧げるほど熱心なファンでもなかったが、それでもこのバンドに出会えたことで、私の世界は広がった。
ありがとう、リンキン・パーク。
おやすみ、チェスター。

おまけ
修道院には猫が。みんな違ってみんな可愛い。

修道院で飼われているのか野良なのか
人に慣れているのか、近づいても警戒されなかった
すやすや……
野良(?)犬も。こちらはちょっと怖い


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