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子ども達がカッコイイ、行きたいと思える名前にしたい【SCHOOL Sの見学】

先日、大阪で開催された「NEW EDUCATION EXPO 2022」にパネリストの一人として出席しました。
私は、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けて、デジタル教科書の現状と今後の方向性について、文部科学省の立場からお話をさせてもらいました。

フォーラムの最後に、広島県の平川教育長が登壇され、広島県教育委員会が実践している先進的な挑戦事例についてご紹介頂きました。
その中でも、私が特に印象的だったのが、広島県教育委員会が取り組んでいる「SCHOOL S」の取組です。

SCHOOL S は広島県に住んでいる不登校等の小中学生を支援する県の教育支援センターの名称です。
設置者である市町村教委だけに不登校支援を任せるのではなく、子ども達の選択肢を増やすという観点から、県教育委員会が支援に取り組んでいること自体もがとても素晴らしいのですが、子ども目線でのネーミングや場の設えが何よりも勉強になりました

平川教育長は講演で、「不登校支援とか適応指導といったネーミングではなく、子ども達がカッコイイ、行きたいと思える名前にしたいと思って、SCHOOL Sという名前にした。」と話しておられました。
たかが名前と思われる方もいるかもしれませんが、私はここに平川教育長や広島県教委が取り組んでいることの本質的な部分が滲み出ていると感じました。
それは、徹頭徹尾、子ども目線、子ども中心で物事を考えているという点です。

このことは、平川教育長の講演内容を聞いても一貫していましたし、「これまでの教育はプロダクトアウトの考え方で、コンテンツ(教えるべき教育内容)ありきで行われてきたが、これからの教育はマーケットインの考え方で、子ども達に何が必要かなのかという視点で行われるべき」という言葉に収斂されています。

そして、今回、そんな広島県のSCHOOL S を見学させてもらいました。
ちなみに、SCHOOL S の「S」には、Student、Select、Secret、Spaceの意味が込められていて、名前だけでなくロゴも素敵でコンセプトが凝縮されています。

SCHOOL S のロゴ(広島県教育委員会HPより)

また、部屋のデザインも子ども目線が細部まで行き届いていました。建物は県の教育センターを活用していて、教育長を先頭に、広島県教育委員会の職員や地域の方々でリフォームされたそうです。
ソファーの色合いや本棚のレイアウト、そして黒板もあえて教室らしさを出さないように工夫されています。

SCHOOL S の部屋の様子

子ども達は、地域の学校に籍を置きながら、SCHOOL S に通ったり、オンラインでスタッフや他の児童生徒とつながったりすることができます。
また、NPO法人カタリバが運営する「Room K」とも連携することで、オンラインでのナナメの関係づくりも行っています。
オンラインとオフラインを組み合わせることで、県内のどこにいてもSCHOOL S で学べて、色んな人とつながることができるのはとても魅力的なことです。

これは広島県教育委員会の一つの挑戦ですが、関係者に話を伺うと、このSCHOOL S の取組がきっかけとなって、県内の市町村レベルでも同様の取組が広がっていくことを期待されていました。

また、個人的にもこのような取組が他の都道府県にも広がって欲しいと強く思います。実際に、他県からの視察が増えていると聞き、その可能性を強く感じています。

ただし、全国に広めるべきは、SCHOOL S というシステムではないのだと思います。
大切なのは経営目標に「個々の児童生徒の社会的自立に向けた成長を支援する」ことを掲げ、①相談できる力、②自分の強みを知り、生かす力、の育成にスタッフが一丸となって取り組んでいるSCHOOL S の理念であり、細部まで子ども目線でこだわり抜く姿勢なのだと言うことを今回の視察で学ばさせてもらいました。

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