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英文法解説 テーマ12 特殊構文 第4回 どんなときに「省略」が起きるのか?

 今回で、テーマ12「特殊構文」は最終回になります。「強調」「倒置」「語順転倒」ときて、ラストは「省略」ですが、この「省略」という項目は苦手とする人が多い、というよりもそもそも「省略」に気付かないケースが多いと思います。もっとも文法上、書かれることが書かれていなければ、読み手としては戸惑いますし、省略が見抜けないと正しい解釈もできなくなります。そこで、今回は、「どういう状況で『省略』が起きるのか?」についてパターン分けして解説していきたいと思います。

省略とは?

 「省略」はなぜ起きるのでしょうか?それは、一言で言うと「書き手も読み手も分かっている自明な情報だから」となります。日本語の会話でも同じです。「昨日、あなたは彼に会いましたか?」「はい、私は昨日彼に会いました」という会話だと、たどたどしいというか機械的です。「昨日、彼に会いました?」「ええ」くらい省略した方がすっきりしますよね。

 英語でも、例えば、“Did you meet him yesterday?”に対して、“Yes, I met him yesterday.”とは言いません。質問文はそのままだとしても(フランクな会話では “(You) met him yesterday?”)、応答文は、“Yes, (I did).”だけです。このように、情報の送り手と受け手の両者にとって自明な情報(=重複している情報)は省略されるのです。

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 ということは、たとえ省略されている語句でも、文脈を探れば省略された語句の再現は可能だということになります。もちろん、自明なら何でもかんでも省略されるわけではないので、一定の文法上のルールに従って起きる省略を解説していきたいと思います。

代不定詞

 まずは、「代不定詞」というものからです。これは、「不定詞」という名称が用いられているものの、「テーマ4不定詞」では解説していないので、ここで詳しく解説していきたいと思います。今回の「省略」に大きく関わる文法事項です。まずは、次の例文を見て下さい。

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 もちろん、このままでも英文としては成り立っています。しかし、前半のgo homeと後半のgo homeが重複していますよね。このように繰り返され、なくても自明な語句は省略されます。したがって、後半のgo homeを省略すると次のようになります。

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 和訳に関してはそのままでも構いませんし、例えば「帰宅したければどうぞ」などでも良いでしょう。ここで、ひとつ気を付けてほしいことがあります。それは、「toごと省略しない」ということです。もし、toごと省略してしまったら、You may go home if you want.となりますが、wantだけではさすがに後ろに何が省略されているのか分かりません。toはあえて残すことで、to不定詞(to+V原形)の「V原形」が省略されていることが読み手に伝わり、そのV原形を復元しようとすることで、前半のgo homeに意識が向くのです。この、残ってしまっているtoのことを「代不定詞」と呼びます。to以下の「V+α」が省略されているにもかかわらず、まるでtoがその代用をしているように見えるので、「代用のto」という意味で「代不定詞」ということです。

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 代不定詞を含む例文を挙げるので確認しましょう。

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 例文3は、remember toの後ろにcall herが省略されています。例文4は少し注意が必要です。実はこの代不定詞のtoだけが残るのは一般動詞が省略されているときだけなのです。もし、be動詞以下が重複する場合は、“be”まで残します。この場合は、to be richのrichだけが省略され、結果的にto beと言う形の代不定詞になっています。

副詞節中の省略

 次は、副詞節中のS+be動詞の省略です。これは、実際に省略に気づくだけでなく何が省略されているのかを復元するということも重要です。次のような状況で、副詞節中のS+be動詞の省略は起きます。

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 これは、主節のSと副詞節中のSが一致している場合、かつ副詞節中にbe動詞が用いられている場合、そのSとbe動詞をまるごと省略できるというパターンです。実際に、例文で確認しましょう。

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 このような省略に気付き、さらに省略語句を復元するにはいくつかポイントがあります。

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 例えば、例文5では、when youngが「接続詞+形容詞」という語順になっていることから、S+be動詞が省略されていると気付けます。そして、主節のSであるIをコピペし、全体の時制が過去形なのでwasを補い、when I was youngと判断できます。when youngのままでも意味を取ることはできますが、「SVを導くはずの接続詞の直後になぜ形容詞が置かれているのか?」を文法的に考えることが大切です。

 例文6では、If used properlyが「接続詞+過去分詞形」という語順になっていることから、S+be動詞が省略されていると気付けます。そして、主節のSであるthis tool(→代名詞化してit)と現在時制のisを補うと、If it is used properlyだと判断できます。実は、受動態が隠れていました。

 このような省略パターンは英文中では多用されるので、接続詞の直後に形容詞や分詞がある場合は、S+be動詞の省略を疑ってください。

等位構造での省略

最後は、等位構造での省略です。等位構造とは、A and BやA or BやA but Bのような構造のことですが、このAとBが「SV」になっていて、かつ共通部分があると省略が起きます。次のように考えましょう。

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 等位接続詞and/or/butの直後に、Vの抜けた文が続くというのは非常におかしな構造になるので、そこで変だなと思えるとよいでしょう。と言っても、なかなかV1と同じV2が省略されていると気付きにくいので、初学者だけでなく、上級者でも引っかかることがあります。とりあえず、例文で確認しましょう。

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 例文7では、livesが共通しているので、後半のlivesが省略されています。その結果、and以下がmy sister in Tokyoとなっています。この省略に気がつかないと「東京の私の姉」と訳したくなりますが、livesを補うことで、「姉は東京に住んでいる」と正しく解釈できます。例文8は、leads toのleadsが省略されています。例文7もそうなのですが、前置詞ごと省略しないので気を付けてください。and以下のhatred to violenceにleadsを補うことで、「憎しみは暴力に通じる」という解釈が生まれます。

 英語では、他にも省略というのは、英文法的理由でだけでなく、情報の流れをスムーズにしたり、会話でのテンポを良くしたり、きれいな言い回しをしたりするために多用されます。そういう面は日本語でもそうだと思います。なので、ある程度、「状況」や「立場」に依存する部分はあるのですが、英文法上の理由で省略が起きるケースに関しては、とりあえずここまでの3つを知っておくと良いと思います。もし、機会があれば別のテーマの際にも扱うかもしれませんが。

というわけで、「特殊構文」の解説はここまでになります。もっと、コンパクトなミニシリーズになると思って書き始めたら意外とボリュームが出てしまいましたが、いかがだったでしょうか?まだまだ、英文法解説シリーズは続くので、今後もご期待ください。

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