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米国 7月FOMCレビュー

Summary

  • 7月のFOMCでは、大方の予想通り、75bpの利上げが決定

  • 委員会の投票権を持つ12名全員が75bpの利上げ決定を支持

  • インフレは、ほとんどの委員会メンバーの頭の中に残っており、利上げを発表した声明文では、「委員会はインフレ率を2%の目標に戻すことに強くコミットしている」と記されている

  • しかし、FOMCでは、経済活動のペースがダウンシフトしていることを示す最近のデータにも言及

  • 声明文では、さらなる引き締めが適切に行われる可能性が高いと指摘、引き締めの程度は、今後発表されるデータによって異なると考えられる

  • 労働市場の好調なデータおよびインフレ率の高いデータの継続により、委員会は9月にさらに75bpの利上げを実施する可能性が高く、逆に、労働市場のデータが弱く、インフレ率が低下した場合は、利上げ幅が縮小される可能性が高くなる

  • 要するに、FOMCはデータ依存モードに入りつつある

FOMCは75bpsの利上げを実施したが、経済に対する評価を引き下げた

FOMCは、大方の予想通り、FF金利の目標レンジを75bp引き上げ、レンジの上限を2.50%としました。
前回6月のFOMCでは75bpの超大型利上げを実施しましたが、本日は投票権を持つ12名の委員全員が賛成票を投じたため、再度の超大型利上げを支持する声が広がりました。
FOMCは3月以降225bpの利上げを実施し、40年以上ぶりの引き締めペースとなっています。

本日の追加引き締めの決定について、FOMCは再び "インフレは依然高止まりしている "と指摘しました。
実際、消費者物価指数の前年比は5月の8.6%から6月には9.1%に上昇し、これはほとんどの市場参加者、そしておそらくほとんどのFOMCメンバーが当時予想していたよりも高いものでした。
また、声明は、「委員会はインフレ率を2%の目標に戻すことに強くコミットしている 」ことを改めて強調しています。
この文言は、6月の声明文でも使われたもので、本日全会一致で75bpsの追加利上げを決めたことと合わせると、ほとんどのFOMCメンバーの頭の中には、依然としてインフレが前面にあることが伺えます。

つまり、FOMCは経済活動の現状に対する評価を引き下げたことになります。
6月のFOMC後、委員会は「全般的な経済活動は持ち直しているようだ」と指摘しました。しかし、今回の声明は次の文章で始まっています。
最近の消費と生産の指標は軟化している

サービス部門の活動ペースを示すISMサービス指数は、拡大と縮小を分 ける線上を維持しているものの、ここ数ヶ月は低下傾向にあり、製造業の比較可能な指数も6月に下降しました。

ISM製造業・サービス業景気動向指数

2022年第2四半期の実質GDPは、28日に発表される予定です。
第2四半期の実質GDPは上昇すると予測されていますが、マイナスになる可能性も十分に想定されます。
もしそうなら、実質GDPは2四半期連続で縮小することになりますが、仮にこの結果が出たとしても、必ずしも現在の経済が後退していることを意味するものではありません。

今後の見通しとして、FOMCはさらなる引き締めの可能性を示唆しました。 6月15日のFOMCで75bpの利上げを行った際、声明文では委員会が「目標レンジ内での継続的な利上げが適切である」と予想したことを述べています。
今日の声明はそのフレーズを繰り返しています。
では、次回9月21日のFOMCでは、どの程度の引き締めを期待すればよいのでしょうか?
9月21日に75bpの追加利上げを予想していますが、引き締めの程度はその間のデータによって決定されることは容易に理解できます。
4つのデータが極めて重要であると考えられます。
具体的には、次回FOMCまでの間に、雇用統計が2回(8月5日と9月2日)、CPIが2回(8月10日と9月13日)発表される予定です。
労働市場が引き続き好調で、かつ、CPIインフレ率が引き続き高水準であれば、75bpの追加利上げの可能性が高くなります。
逆に、雇用統計が労働市場の弱体化を示すか、インフレ率が予想を下回れば、FOMCはより小幅な利上げを選択する可能性が高く、要するに、FOMCはデータ依存モードに入りつつあります。
つまり、委員会はここ数カ月、できるだけ早く利上げを行い、FF金利をある種の「中立 」に戻したいと考えてきたと思われます。(中立とは、経済を刺激も抑制もしないFF金利の設定である)
中立を正確に見積もることは出来ませんが、FOMCメンバーの多くは「経済予測サマリー」に基づいて2.0-2.5%近辺と見なしています。
データ依存モードの開始を推測したのは、パウエル議長が会合後の記者会見で述べたことが裏付けとなっています。
具体的には、パウエル議長は、追加引き締めのペースは 「入ってくるデータと進化するデータの見通しに依存する 」と述べています。


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