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みきゆうフェローのこと:わたしがまちづくり法人に参画したワケ(前編)


うなラボフェロー「みきゆう」です。

わたしは元々、工学部建築学科を卒業しデベロッパーで大規模複合施設の開発に携わり、その後子育て期には設計コンサル事務所にてコンペ案件やリノベ案件の基本計画をつくるしごとをし、アカデミックサイドからまちと社会を捉え直すアップデートをしたくて社会人大学院で都市工学を修了…。そして地元・二子玉川のまちづくり法人に2019年度から2022年度までの4年間参画していました。とりわけ河川敷空間活用のための制度運用について、行政調整と実装トライアルを最前線で担ってきた自負があります。「はじめましてのごあいさつ」にあるとおり今年度からその法人を離れ、一個人の水辺の使い手として先行きを見守る、いまはそんな状況です。わたしがなぜ法人に参画し、河川敷空間活用にどんな思いで取り組んできたか。そのお話から、始めようと思います。

はじまりは"TOKYO ART FLOW 00"

2016年の夏、二子玉川で河川敷のみならずまちなか全体を会場にした一大アートイベント"TOKYO ART FLOW 00"(以下「アートフロー」)が開催されました。何やら珍しいインスタレーションが種々やってるぽくて面白そうだな、とふらりと訪ねたのが、わたしの二子玉川の水辺との初めての出会いでした。近くに暮らしながらも子どもの学区が少し離れていたので、それまで水辺との接点はほぼなかった。エリアマネジメントの動きも知りませんでした。
そのときのイベント公式サイトは残念なことにドメインが手放され、それがよりによって高級キャバクラ紹介サイトに引き継がれていてもう見ることができません。ミズベリングの記事はベンチマークとしていまも見ることができる貴重な情報源です。

このイベントのときに運命の出会いがありました。うなラボの場を提供してくれているふたこ麦麦公社の市原尚子さんです。マゼンダ色のビールを河川敷で提供し終えてまったり休んでいたなおちゃんに偶然出会いました。二子玉川発のクラフトビールを立ち上げたと噂に聞くご本人は、いたって普通のひと。なんだけどワクワクのタネをたくさん抱えていて、初対面でいろいろおしゃべりをした記憶が。近所で世田谷ホッププロジェクトをやってるというので誘ってもらって、そこからワクワクをともにするようになりました。

ビアパーティというチャレンジと、一般生活者目線で感じた素朴なギモン

翌2017年の初夏、「あの心地いい水辺でビアガーデンをやりたいと思ってるんだけど、いろいろ初めてづくしでわかんないことだらけ。一緒にやんない?」なおちゃんに誘われて、好奇心の赴くままに「公共空間をつかってみたがる仲間たち」に加わりました。無謀にもほんの数名でのチャレンジ。知らないって最強。フタを開けてみたら、次から次へと出てくる壁・壁・壁!

『ちょうど同じタイミングでエリマネ団体さんが水辺活用の社会実験を進めていたため、地域の発意を受けた形で行政手続きの主体となってもらって実現できましたー。』というのが”FUTAKOTAMAGAWA RIVERSIDE BEER PARTY"(以下「ビアパーティ」)のザクっとした開催経緯です。

河川敷という公共空間をつかって「つくりたい風景」のアイデアを支援するには、行政手続きからロジまで、様々なレイヤーでの経験値が必要ということがいまはわかります。

アートフローは、水辺空間の様々な可能性がビジュアライズされたことが素晴らしかったけれど、お金も人のかけかたも桁違いすぎるイベントでしたから、地味に中間支援をやる経験値はエリマネ団体さんにだってなかった。なので、右も左もわからない住民グループの身で、河川事務所や公園事務所へ直接問い合わせたりもしました。

◎会場の河川敷は夜は真っ暗になるから櫓を組んであかりを灯したい!
→「櫓はその日のうちに撤去して翌日また設置するならいいです」
◎だったらせめて木にライトつけてもいいですか?
→「(あっさり)いいですよ」
◎草が伸びてるからイベント前に自分たちで草刈りさせてください!
→「除草は区でやるもんなんで、できません。作業日はわかりませんけど」
◎(開催日間近になって)兵庫橋の欄干に横断幕を貼らせてもらいたい!
→「道路の許可が必要です。間に合わないですね」
◎(開催日間近になって)来場者に感想や希望を聞くアンケートやりたい!
→「アンケートは公園では許可が必要です。間に合わないですね」

行政手続き以外のロジの部分でも、単なる有志の初チャレンジですから、いろんなものが揃っていません。まずもってテントや椅子やテーブルを借りてくるところから。右往左往するわたしたちを見るに見かねて手を貸してくださるところに助けられ、どうにかこうにかありがたく調達。

たくさんのひとたちが幸せそうに過ごすいい景色。右奥のポツポツは執念でともしたマイ灯り。

とにかく、できることできないこと、必要な手続きのこと、なにもかもわからないことだらけで超ヘトヘトになったけど、3日間ともお天気に恵まれるという幸運もあり、水辺にゆったりと幸せな景色がうまれました。

ふと気づくとその一卓に、見るからに偉いっぽい男性たちが陣取られていて、祝賀ムードで仲間うちで寛いでいるのが見えました。ああ、エリマネ団体さん関係の方々だろうな、とわかりました。水辺はあのような存在がないと使えないとこなんだ、と知りました。でも「あの人たちは、現場でぶつかった壁のことをどれぐらいわかってるんだろう?実際は偉いのかもしれないけど、なぜそんなに偉いんだろう?」周りで楽しくすごしている人たちと同じ、一般生活者の目線でみるとまるでよくわからない。ごくごく素朴なギモンですが、これはきっとみなが抱くことなんじゃないか?

このときのギモン、抱いた違和感のかけらは、いまも胸に残っています。後に法人化されたエリマネ組織に参画するようになってからも常に自省せねばと思う、そのきっかけとなった印象的な出来事だったのでした。

2017年のRIVERSIDE BEER PARTYで初めて灯した桑の木ライト。ささやかな0→1。

キラキラでおおきいものと地味でちいさいもの: 未来のみつけ方には異なる志向性がありそう

アートフローとビアパーティという次元の異なる2つの試み。それぞれがもたらした意味の解釈は読み手のみなさんに委ねるとして、この2つに共通しているのは水辺という公共空間をつかう、ということです。誰がどういうモチベーションで介入するのか、その結果として社会にどのような変容を生み出そうとしているのか、その主体的な意思が2つの試みには明確にあると思います。実際につかってみることで、未来が想起されます。

しかし一足飛びに描いた未来が実現できるわけじゃない。主体的な意思に基づく実践(投資も含む)は必要な一歩目だと思いますが、その先のプロセスには異なる志向系統がいくつかありそう。この点の問いかけはまた別稿に。

いずれにしても、ある景色がつくられると、それに接点を持った誰かしらの下地となって次の動きが起きていきます。後編では、その後に起きた動きのことと、法人参画にいたった流れを記していこうと思います。
(つづく)


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