誰でもわかるHashgraphのコンセンサスアルゴリズムの基本(その1)

ブロックチェーンの持つ複数の問題点を解決した新技術として注目されているHashgraph(ハッシュグラフ)。その技術的基盤となる合意形成の仕組み(コンセンサスアルゴリズム)について初歩から解説します。

そもそも「コンセンサスアルゴリズムとはなにか」と言うところから解説しようとしたら、思いのほか長くなってしまったので記事を分割しました。今回は一般的なコンセンサスアルゴリズムの話が中心です。

そもそも合意形成(コンセンサス)とは

合意形成とは、ある事柄に関して、複数人で構成される集団が一つの結論を導くことである。

初歩的な例は、小学校の学級会における多数決である。クラスで、「バナナはおやつに含まれるか」という1つの議題に対して意見を出し合い、最後に多数決で結論を出す。

また、選挙も一つの例である。ある市の市長を決めるために、有権者による投票が行われる。最も投票を得たものが市長に選ばれる。

以上の2つの例は、ある集団が一つの結論を出すためのありふれた手段であるが、いずれも強力な前提条件があるからこそ成立するということを主張したい。

1つ目の学級会の例では、集団に属する全員(この場合はクラスの生徒)が、一つの教室に同時に集まっている。そのため、「誰がどのような意見を述べたか」が正確にわかるし、投票に関しても「誰がどちらに投票したか」も全員に共有される。

2つ目の選挙の例では、選挙管理委員会が正常に機能していることが前提となる。秘密選挙の原則に基づき、誰がどの候補者に投票したかはわからないが、選挙管理委員会の管理のもとに、投票を正確に集計することで、選挙が正常に機能する。有権者が選挙管理委員会を信用することも必要不可欠である。

このように、日常生活では当たり前に感じる「強い前提条件」のもとで合意形成がなされている。

インターネット上の合意形成

一方で、インターネット上での合意形成を考える。この場合、上記の前提条件が成り立たないことが容易にわかる。

まず、インターネット上でのコミュニケーションの際、各々は物理的に離れているのが普通である。ゆえに、学級会のように直接意見を伝えることができない。そうなると、なりすまし悪意ある第三者による改ざんが起こりうる。したがって、そのようなことが起きないような技術的な仕組みが必要である。このような技術はデジタル署名と呼ばれる。

選挙の例を考えてみたい。選挙管理委員会のような信頼できる機関が運用するシステムならば、アナログな投票よりもむしろ優れているように思える。しかし、真の意味での秘密選挙と平等選挙の原則を両立させるようなシステムを作るのはとても難しい。一人一票を実現するために、誰が投票したかを正確に記録する必要があるが、これは、同時に誰に投票したかを記録する事になり、秘密選挙の原則が破られる。

ここまでのまとめ

以上のように、現実世界では容易に実現できる合意形成をインターネット上で実現しようとすると、大きな技術的な困難が伴う

この困難を解決するために様々な手法が開発された。その例がブロックチェーンや、今回紹介する(予定だった)ハッシュグラフである。また、上でも言及したデジタル署名やハッシュ関数は、ブロックチェーンやハッシュグラフを実現するための基礎となる技術である。

ハッシュグラフのコンセンサスアルゴリズムの詳細については、次の記事で紹介する。


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