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『鉄腕アトムのような医師 AIとスマホが変える日本の医療』を読んだ感想まとめ

自分がデジタルヘルスの勉強をするにあたり読みたい本をnoteにまとめているんですが、紹介料を使って実際に本を買って書評noteを書いていく企画を始めました。

本選びの参考にtwitterアンケートをした結果、医療現場でのテクノロジー導入の話を希望する方が多かったので、

第一回はPHR、遠隔医療、病院内スマホ導入事例などを紹介した『鉄腕アトムのような医師 AIとスマホが変える日本の医療』を紹介しようと思います。

著者:髙尾洋之(東京慈恵会医科大学 先端医療情報技術研究講座 准教授)出版日:2017/10/13
出版社:日経BP

アルム社の救命・救急補助スマホアプリ「MySOS」

PHR(Personal Health Record)は、従来医療機関が保有していた患者の医療情報をクラウド上に保管し、患者自身が必要に応じてアクセスできるようにしていこうという考え方です。

アルム社が提供する救命・救急補助アプリ「MySOS」は、元々は救急車が来るまでの応急処置方法を参照したり、周辺のAED(自動体外式除細動器)を検索したりするアプリでしたが、その一環として、ユーザーの医療情報をアプリ内に格納し、救急チームが迅速かつ適切な対応をするために活用するといった内容が書かれています。

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MySOS紹介ページ より引用

直近の動きなので本の内容には含まれていませんが、2020年3月にはMySOSに登録した健康診断データを基に、糖尿病などの発症リスクを予測する機能もリリースされています。

MySOSのようなPHRの管理・活用を行うアプリだけでなく、PHRを取得するウェアラブルデバイス等を開発する企業も含めて、業界が盛り上がっていくように思います。

PHR市場では、PHRを取得するセンサーを開発する事業者と、取得したデータを目的別に管理するアプリ事業者に別れる。さらにアプリ事業者でも、ダイエットなど健康管理目的のものを作り、圧倒的に使いやすいUI/UXで差別化していく事業者と、特定疾患の治療目的に特化したノウハウを組み込んだもの(例えば糖尿病)を作る事業者に別れるという。こうした事業者が、互いにデータを囲い込むことなく事業を進めようとしているのも、PHRマーケットの特徴だという。
引用:注目されるPHR市場の開拓者に聞く~デジタル医療最前線

(データを囲い込もうとしない、というのは本当かなと疑ってます)

DtoDの遠隔診療サービス「Join」

慈恵医大が導入しているDtoD(Doctor to Doctor)アプリのJoinの話が結構書いてありました。コロナの流行でDtoPのオンライン診療の情報はかなり流れてきていたので、逆にDtoDの情報が具体的にまとまっていて助かりました。

Joinの紹介動画

慈恵医大はJoinを導入しており、脳卒中治療の実績に基づいてJoinの有用性を数値化したところ、

・診断時間は40分削減
・直接的医療費は8%削減
・入院日数は15%削減

といった効果が確認できたとのことです。

医師間のコミュニケーションツールとして医療情報の共有環境を構築したJoinのシステムを、前述にMySOSに連携することでPHRの取り組みも加速させていこうという試みも行われているようです。

慈恵医大のスマホ導入事例の紹介

過去には携帯電話の発する電波が医療機器に影響を及ぼす可能性を考慮して病院内ではPHSの利用が推奨されていました。しかし、現在の通信方式ではその問題が大きく改善されていることから、2015年4月10月から社内インフラをPHSからiPhoneに変更、看護師も含めて1人1台の体制を整えました。

この事例にフォーカスした書籍が別途出版されています。(今回この書籍にするか迷ってました)

iPhoneと合わせて導入されたのがナースコールシステムのVi-nurse。

このシステムの導入によって、ナースコールを行った患者の近くにいる看護師が患者の詳細情報を把握した状態で対応が出来るようになりました。

(以前は)患者からナースコールがあったときは、まずナースステーションに通知が届き、そこからポケベルで看護師に連絡して病室に駆けつけるという流れでした。しかしこの仕組みでは、病室の患者とナースステーションの間では通話ができるものの、駆けつける看護師と患者は直接会話ができません。看護師は病室に駆けつけるまで詳しい状況がわからず、また患者も、どれくらいの時間で看護師が駆けつけるかがわからず不安を抱える要因になっていました。スマホの導入は、こうした一方通行のシステムから双方向へのコミュニケーションへの変貌を生み出しました。
引用:『鉄腕アトムのような医師 AIとスマホが変える日本の医療』p.93

書籍内には書いてないのですが、iPhoneの位置情報を活用した業務管理のシステムも開発しているとのことです。

病院内にBeaconセンサーを設置し、iPhoneの詳細な位置情報を検知できる仕掛けも用意した。iPhoneがあった場所と時間を自動的に記録できるので、「いつ・どこで・誰が」というデータが蓄積できる。そのデータを元に、看護スタッフ自身が「何をしたか」だけを記入すればいい、業務報告アプリ「N-Report(仮称)」も共同研究開発を進めている。
引用:3200台のiPhoneで医療現場の負担は減るのか 慈恵医大の挑戦 (2/2)

システム面だけでなく、スマホが落ちない白衣をクラシコ社と共同で開発するなど、その本気度がうかがえるのではないでしょうか。

まとめ

医療分野で使われているアプリや病院でのスマホ導入事例など、具体的な話が多く、現場のイメージを頭に浮かべるうえで非常に参考になりました。その一方で、情報が具体的なだけにその後のアップデートも必要だなと思いました(それで調べた情報の一部をこのnoteにも掲載しています)。

医療現場のテクノロジー導入については、継続的に追っていければと思います。

参考:デジタルヘルスの読みたい本まとめ

執筆:@tech_nomad_

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