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土合で体験!「国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった」

国境の長いンネルを抜けるとそこは雪国だった

川端康成 雪国

 ノーベル賞作家川端康成さんの代表作、雪国の冒頭。雪国は、都会生活に飽きた主人公、島村が越後湯沢温泉へやってきたとき、芸者の駒子と出会い、愛情、生き方に惹かれていく恋愛物語です。
 雪国の舞台はJR上越線の清水トンネル。清水トンネルは全長9702mあり、1962年の北陸トンネルが開通するまで日本最長のトンネルでした。越後と上州を結ぶ国境の長いトンネルです。上越線は、新潟県長岡市と群馬県高崎市を結ぶを結びます。 長野県経由で新潟県へつながっていた信越線だけでは人と物資の輸送が限界だったため、東京と新潟を結ぶショートカット路線として上越線は誕生しました。ちなみに、上越線は、群馬県(上州)と新潟県(越後)を結ぶからつけられた名称で、上越地方は通りません。清水トンネルは、越後山脈を貫き、新潟県と群馬県をつないでおり、実は3本あります。上越線上りが1931年開通の清水トンネル、上越線下りが1967年開通の新清水トンネル、上越新幹線上下線が1982年開通の大清水トンネルを通します。大清水トンネルを掘っているときに、おいしい湧水が見つかり、現在、AQUAという商品でJR東日本の自動販売機、NewDaysで購入できます。
 元々、清水トンネルは単線区間で上り電車も下り電車も利用していました。しかし、高度経済成長期に増大した輸送量に対応するため、トンネルを1本増やして複線化することにより対応しました。現在の雪国の冒頭と同じ現象(国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった現象)は、水上駅~土樽駅で長岡行の普通電車に乗ると、味わうことができます。清水トンネルを通りたい場合は長岡駅~湯檜曾駅ユビソ駅で水上行の普通電車に乗ってください。
 自動車の時代となり、関越自動車道が開通し、1985年には関越トンネルが
開通しました。自動車でも国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった現象を味わうことができるでしょう。
 しかし、実は徒歩でも川端康成の雪国の世界観を味わうことができます。今回は、水上駅から長岡行きの普通電車に乗って川端康成の小説「雪国」の聖地、土合駅に行きました。

「国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった現象」が起きる理由

 この国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国だった現象は、冬の季節風と日本の山脈が関係します。冬になると、シベリア、中国内陸部でシベリア高気圧が発達します。
 一方、海上では、低気圧が発達します。気圧は、水位のように高いところから低いところへ移動します。移動することにより、冷たく乾いた季節風が誕生します。しかし、日本海は対馬海流という暖流の影響により、暖かいため、季節風に水蒸気を取り込み、湿った風に変化します。
 そして、湿った季節風が日本列島に吹き、越後山脈にぶつかります。標高が高いほど気温が低くなり、水蒸気が冷やされて雪になって降り出します。水分が抜けていき、山脈を越えると、乾燥した風に変化します。そのため、新潟県の山間部は特に積雪が多いです。一方、群馬県は晴天が続き、からっ風という乾いた季節風が強く吹きます。そのため、群馬県から新潟県へ入ると、真っ白な雪国が広がります。

土合駅

 越後山脈の山々に囲まれた場所に土合駅はあります。谷川岳登山の玄関口になっています。土合駅の特徴は、長岡方面のホームが改札から遠いこと。土合駅の長岡方面のホームは、新清水トンネルの中にあり、70.7m(20階建てビルに相当)下った場所にあります。土合駅で下車して改札まで10分ほどかかります。
 一方、水上方面のホームは地上にあり、改札まで30m程度しか離れていません。この上下線のホームの距離の違いも土合駅の特徴です。
 土合駅は電車の本数が5~6本しか少ないため、実際に行かれる方は、時刻表を確認してから行きましょう。登山客が多く、お盆休みなど休日は通勤列車並みに混雑します。

「日本一のモグラ階段」に上ってみた

 ホームから改札まで二段階構成で、484段の階段が待ち構えます。20階建てのビルを階段で上らなければなりません。ホームは地上に出たくないほど、ヒンヤリしていました。ホームには、クラフトビール工房があり、ビールが熟成されており、秋の解禁まで眠っています。

 第一段階は、巨大な階段。338m462段あります。踊り場は広いため、休憩をはさみながら登りました。第一段階のエスカレーター設置も検討されたのか、現在も湧き出る地下水の排水のためか、階段の左右には、謎の空間が広がっていました。462段の階段を登りきると、ホームから希望の光は見えました。一段一段が低く、均一で一定の間隔のため、久能山、身延山の石段より楽でした。第一段階では、モグラが地上に上がるかのような体験ができます。

第一段階462段もの階段


 第二段会は24段あります。しかし、渡り廊下の途中にある階段のため、そこまできつくありません。まるでモグラの巣の中を移動するかのようです。第二段階を抜けると、ようやく改札が見えます。 

第二段階 長い廊下と24段の階段
土合駅前から見た第二段階

トンネルの先の風景

 改札を抜けると、「日本一のもぐら駅」という木製の看板が見られます。地上に出たときのモグラの視点が味わえます。越後山脈の中にあり、目の前は谷川岳の雄大な山体が観られます。駅舎は線対称の三角屋根が美しく、駅舎自体が観光地になっています。
 夏は山々の緑が広がっていました。標高653.7mと高い場所にありますが、強い日差しと熱風が襲い、暑いです。

土合駅の周りを歩いてみた

 土合駅の中には、喫茶店、ホテルが駅の中にあります。駅の目の前に喫茶店、周りにキャンプ場があります。駅前の喫茶店はテラスが広がり、開放感抜群。ソフトクリームやカレーが食べられます。
 土合駅は谷川岳登山の玄関口とされており、谷川岳ロープウェイを結ぶバスが運行されています。土合駅へは、長岡行の普通電車だけではなく、水上駅、上毛高原駅からバスで行くこともできます。

谷川岳ドライブイン

 駅から水上方面へ5分ほど歩くと、谷川岳ドライブインがあります。平成時代に建てられ、蕎麦、うどんだけではなく、赤城牛も食べられます。谷川岳オリジナルのお土産も購入できます。

 今回は、夏の土合駅を訪れて、雪国の夏の風景を味わいました。12月〜2月、雪国の情景に出会えます。しかし、数m単位という思っている以上の倍は雪が降りますので注意してください。

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