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なぜ、白老に国立アイヌ民族博物館を創ったのか?

結論:観光地化が一つの理由。


アイヌとは、アイヌ語で人間という意味。アイヌ民族とは、「日本列島北部、特に北海道の先住民族」を指します。狩猟採集中心の生活をし、独自の文化を持ちます。松前藩(北海道渡島半島を支配していた藩)の支配以降、明治政府も1899年、北海道旧土人保護法を制定し、本土との同化政策により厳しい制限をかけられました。その中でも、一部の伝統は口伝えで守られ、1997年、アイヌ文化振興法が制定され、アイヌ民族の伝統文化は保護されるようになりました。

アイヌ文化を学ぶことのできる施設は、北海道内に点在しています。

今回の北海道旅では、その一つである白老町にある国立アイヌ民俗博物館に行ってアイヌ文化を学びました。
そして、「なぜ、国立アイヌ民俗博物館が白老にできたか?」という観点で記事にしました。

ウポポイ 

2020年7月に誕生しました。ウポポイはアイヌ語で、「大勢で歌うこと」を意味します。建設された目的は、アイヌ文化の伝承の場として正しく理解させ、文化の多様性を尊重する場としての理念を実現するための空間でもあります。

ウポポイ内では、日常からアイヌ語の飛び交う場所を作ることが目標とされています。そのため、説明の第一言語はアイヌ語で表示されています。衣食住もさまざまな資料から見ることができます。プログラムがあり、一日楽しく学ぶことができます。

ウポポイは、ポロト湖という周囲4km、33haほどの小さな湖のほとりにあり、原生林に囲まれています。敷地が広大なため、園内に無料バスが運行されています。

コタンの見えるポロト湖

ウポポイは国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園、慰霊施設から構成されています。

国立アイヌ民族博物館

博物館は常設展が6つのテーマに分けられていました。ことば、世界観、生活、歴史、仕事、交流。博物館内に出てくるキーワードをたどりながら、一周することにより、アイヌ民族について知ることができます。衣服、狩猟のためにつくられた道具など展示物を通じて、生活の風景が浮かびました。

期間限定の特別展では、阿寒湖、帯広など北海道内に残されたアイヌ文化について、紹介されています。広大な北海道のため、地域によって異なるアイヌ文化も学べる機会になりました。

国立アイヌ民族博物館

国立民族共生公園

広大な国立民族共生公園には、体験交流ホールと伝統的なコタン(集落)があります。

体験交流文化ホールでは、アイヌ料理を作る体験、アイヌ民族が使用していた楽器の演奏を聴き、アイヌ音楽について学ぶオプションなどがありました。

コタンでは、アイヌ民族の住居(チセ)の中を覗くことができました。かやぶき屋根の住居で、一軒一軒が広く、防寒対策も施されていました。内部は囲炉裏が中心にありました。
アイヌ民族の子どもたちがどのような遊びをしていたか学ぶこともでき、体験できます。

また、コタンには、祈りの場、高床式倉庫も復元されていました。

慰霊施設

アイヌ民族は、明治時代から研究対象とされ、遺骨、副葬品(衣服など)が無断で使用された歴史があります。先住民族にその遺骨を返還する流れになりました。2019年、すぐに返還できない遺骨、副葬品について、受入体制が整うまで、管理を行い、アイヌ民族への尊重、慰霊のために造られました。

白老にアイヌ博物館が造られた理由

白老町は、西に登別温泉をもつ登別市、東に日本最大の国内海上輸送の拠点である苫小牧港を持つ苫小牧市に挟まれています。ちなみに、白老は、アイヌ語の「シラウ・オ・イ」(アブの多いところ)が由来となって名付けられた説があります。

白老にはアイヌ集落が残り、明治天皇が訪問したときには、アイヌ伝統の踊りを披露しました。熊祭りという伝統的な祭りも毎年行われ、観光客に注目されました。

さらに、1892年、空知地方から石炭を鉄鋼業地帯の室蘭へ運ぶために鉄道が敷設されました。それが室蘭本線です。室蘭本線の開通により、白老駅も誕生しました。白老駅が開業したことにより、小樽、札幌から白老、登別を訪れる観光客が増加しました。アイヌコタンとして白老は観光地化しました。一方、観光客の増加により、住民は不法侵入されるなど日常生活に支障をきたし、観光客はサービスの低下でお互い不満がありました。

1965年、白老駅から北東へ2kmあるポロト湖にアイヌ文化を施設を移すことを決めました。そのときにできた施設がポロトコタン(大きな湖をもつ集落)。旧アイヌ民族博物館は2018年3月まで運営されていました。アイヌの長老の巨大木像がシンボルでした。当時も、コタンは存在していました。

現在のマスコットキャラクターは行者ニンニクがモチーフとなっています。

今回は、白老にあるウポポイを訪れてアイヌ文化を学びました。
学ぶアイヌ文化について、次の機会に触れていきます。

営業情報

営業時間 9:00~17:00(11月~翌年3月)
     9:00~18:000(5,6,9,10月)
     9:00~20:00(GW、7,8月)
定休日 月曜日(祝日の場合、翌平日)
    12月29日~1月3日、2月下旬
入館料 大学生以上 1200円、高校生600円、中学生以下無料
アクセス JR白老駅から徒歩10分

参考文献

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