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easternyouthは全ての人を救ってくれるよ。

今回は私の大好きなバンド、easternyouthについて書いておこうと思う。

easternyouthとは、日本のスリーピースロックバンドだ。北海道で結成され、1988年から活動をしているのでもう34年も続いている。エモエモにエモい超最高なバンドである。(言葉じゃ説明出来ないから音源聴いてくれ!)

そんなeasternyouthに、私は数え切れない程に命を救われている。

その最初が、大学二年生の時。
新宿で男にフラれた。SNSで出会った同じ年の男で、ウェーブのかかった黒い長い髪と無精髭を蓄えた、エセサブカル大学生だった。こうやって文字にすると本当に胡散臭い男なのだが、その頃の私はサブカルに憧れてはいるがなかなかサブカルになれない田舎の芋女だった為、このエセサブカルに夢中であった。
当時私はまだ実家のある栃木に住んでいて、新宿からの終電がめちゃめちゃ早かった。だから当然その男と泊まるつもりでいたし、前回も歌舞伎町の古びたラブホテルに泊まった。なのにその男は、『明日ゼミの集まりで早いから帰るね』と言って、私を大都会・新宿のど真ん中に置いて去って行った。あ、この男にはもう一生会えないな。女の第六感がそう言っていた。

新宿の夜の街をただ当てもなく歩く。深夜2時、まだまだ歌舞伎町は人が沢山いて、生息する人間はみんな夜更かしをしながら心の隙間を酒と愛欲で埋めている。なんと張りぼての寂しい街なのだろう。
今でこそ歌舞伎町を一人で歩いていれば、ホストやスカウトやナンパで数十メートル毎に声を掛けられる私であるが、当時はただの芋女、誰も声を掛けてこない。張りぼてのギラギラを横目に見ながら、私はとにかく静かな所を探し求め歩いた。そして新宿タカシマヤ前まで辿り着いた所で、誰も人がいないのを確認し、コンクリートの冷たい階段に腰を下ろした。
山手線の始発が動き出すのは午前4時過ぎ。それまで私はそこでじっと、街が動き出すのを待った。新宿駅のホームが見える。整備や点検だろうか、真夜中でも新宿駅は忙しなく電車が動いている。遠くに聞こえる電車や車の音を聞きながら、私は好きな男をぼんやり思い出しては忘れようとした。

やっと始発が動き始めた。私はまだガラガラの山手線に乗り込み、端の席に座った。当時愛用していたiPod shuffleの電源を入れ、シャッフル機能を使いランダムに音を流した。邦楽、洋楽、当時から音楽に関して雑食だった私のiPodの中身は統一感がない。そして好きな男が頭をよぎってしまい、音楽が全く頭に入ってこない。

そんな時だった。
静かでゆっくりとしたエレキギターの音がイヤホンから流れた瞬間、私はハッとした。優しいが力強いギターの前奏が、みるみるうちに私の頭の中をクリアにしていく。私が音で満たされていく。

その曲は、eastern youthの『夜明けの歌』だった。

そしてその優しく力強い音が、さらに力強く、テンポを上げていく。それに続いて吉野寿の声がこう歌っていく。

夜が明ける 見えるだろ
東の空 白むのが
朝が来る 判るだろ
涙眼に陽が映る
俺にもその部屋の窓にも朝が来る
涙よ止まれよ今直ぐもう朝だから

すると、さっきまで薄暗かった山手線の車内に光が差し込んで、見る見るうちに白んでいった。さっきまで寝惚けていた東京に、朝が来たのだ。

私の目からは、いつの間にか涙がポロポロと溢れてきて、止まらなかった。どんどん人が増えていく山手線の車内で、人目も憚らず泣いていた。でも、この涙は悲しみで溢れ落ちているものではない。私の傷付いた心を洗い流すような綺麗な涙だった。傷付いて冷たく小さく縮こまっていた私の心をふやかしてくれるような温かい涙だった。eastern youthが私に朝を連れて来てくれた。いや、私にもちゃんと平等に朝が来ることを教えてくれたのだ。

夜明けの歌が一曲終わる頃には、すっかり外は明るくなり、私の心にはもうエセサブカル男はいなくなっていた。涙よ止まれよって、もうそんな男の為に泣くんじゃないよって、吉野が言ってくれている気がしたから。

私は人生で行き詰まった時、人生の節目節目で、何故かいつもeastern youthの曲が流れてくる。iPodから、iPhoneから、カーオーディオから、YouTubeから、必ずどこからか流れてきて、あっという間に私を救ってしまうのだ。eastern youthの音楽は、弱い者にいつも優しい。フロントマンの吉野寿自身が自分は社会不適合者だからと公言しているように、自身の経験が歌詞として叫びとして、同じような生きづらさを感じている人の心を救うのだと思う。何もうまくいかなくても、それでも立ち上がるんだ、何くそちくしょう、負けてたまるか。そうやって背中を押してくれる。そして激しくも優しい轟音が、どんな人でも包み込んでくれるのだ。

そして今まさに、これを私は新幹線の中で書いているのだが、丁度iPhoneから eastern youthの『矯正視力0.六(アルバムバージョン)』が流れてきた。泣きそうだ。というかちょっと泣いている。

何回だってやり直す
悲しみなんて川に捨てる
本当は内ポケットに仕舞ったままだ

そう、悲しみは捨てようと思っても、結局心のどこかに仕舞ったままになってしまうんだよね。でも朝は来るし、何回だってやり直せる。何で優しい音楽なんだろうか。

そんなeastern youthのフロントマンである吉野さんとドラムの田森さん、同級生の為お二人とも54歳だそうだ。アーティストは死んでも作品は残るけれど、私はやっぱりeastern youthの生の音が好きだ。吉野寿の、命を削るような叫びを生で観るのが本当に好きだ。だから、なるべく長生きして欲しいし、おじいちゃんになってもライブをやって叫んで欲しい。私が何度もeastern youthに救われているように、私だって何か恩返しがしたいし、その唯一の方法はライブに足を運んだり、音源を買ったりする事だと思う。だから、eastern youthがライブをやり続ける限り私は通い続ける。だからずっとライブやってね、健康に気を付けてね。

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