大人のヘルパンギーナ

先週、ヘルパンギーナにかかりました。端的に言って死ぬかと思った。人生でしんどかったものランキングが約4年ぶりに更新されました。

【人生でしんどかったものランキング】

第三位:橈骨神経麻酔(切り落とした親指を縫合してもらう時)

第二位:ドライソケット(親知らず抜歯したあと)

第一位:ヘルパンギーナ(堂々の第一位!!)

殿堂入り:出産(痛すぎてもう忘れた)

「大人がかかると重症化する」というヘルパンギーナ。一般論通り重症化したその一部始終をまとめたいと思います。

【一日目】

「だっる…」と思いながら起床。全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、立ち眩みあり。インフルエンザの初期症状に似ている。おかしいなあと思いながら出勤。院長に「今日立ち眩みがする…」と言うと、おでこに手をあてられ、「あなたこれ熱あるよ」と言われる。測ると38度。「このだるいのと立ち眩み、熱だったのか~」と納得。めったに熱を出さないから、熱がある状態だと気づかなかった。ちょうど患者さんがキャンセルになったので帰宅して寝る。熱が高いので第一大根湯(解熱用)を作った。

大根おろし 大さじ3
生姜のすりおろし 少々(大根の10%)
醤油 大さじ1
三年番茶 2カップ

以上を全部混ぜ合わせて飲んですぐ寝る。汗をかいて熱がさがる。ロシアでは風邪ひいたときは砂糖を入れたウオッカを一気飲みして寝るらしいけど、それの日本バージョンなんだろうなと個人的に思っている。

実際汗がたくさん出て、熱は36.8℃まで下がった。「お、ただの風邪やんけ」と思ったのも束の間、ここからが地獄の始まりだった…

【二日目】

明け方熱がぶり返し、38.5℃に。もう大根をおろす気力もなく、カロナール(アセトアミノフェン)を飲む。そのうちに喉が痛くなり、唾液が呑み込めなくなる。何も食べられないし何も飲み込めない。しかも授乳中。こ、これは生命の危機…!と思ったので病院へ。でも授乳中だし、薬をなるべく飲みたくない&飲みたくないので、お医者さんに「授乳中なのでイブプロフェンとトラネキサム酸あたりでお願いします」と直談判し、お薬をいただく。ステロイドを点滴すれば喉は早く楽にはなるんだろうけど、授乳中ということもあって拒否しました。ちなみに授乳中のお薬についてはここのサイトがかなり詳しくまとめてあって良かったです。

母乳とくすりハンドブック http://www.oitaog.jp/syoko/binyutokusuri.pdf

さて、薬を飲んだところでそうそう楽にならない。水が飲めないのに授乳中なので完全に脱水。一日中瀕死の状態。

【三日目】

明け方また熱がぶり返す。扁桃が腫れて形が変わり、うまく嚥下できず、必ず誤嚥する。わたしが高齢者なら絶対に誤嚥性肺炎を起こしているレベル。スマホのライトで照らして自分で自分の喉を見てみると、水疱があったので多分そのせい。この水疱によってヘルパンギーナの疑いが強まる。

また、扁桃が浮腫を起こしており、息が吸いにくい。唾液は飲めないわ息は吸えないわで、完全に生きるのに向いていない状況に陥っていた。「酸素マスクつけてくれ…」と思った。あと「生食静注してくれ…」とも。でもどっちも近くになかったのでこの日もステータス;瀕死で過ごした。

見かねた旦那さんが「とろみ剤(介護用)」を買ってきてくれる。これがすごくて、少しとろみをつけるだけで、誤嚥しにくくなる。とろみ、絶対に必要。いつか親を介護する日が来たら、絶対にとろみつけまくると決めた。とろみ剤のおかげで脱水症状が若干和らぐ。

【四日目】

発熱以来、少し「良くなったかも…」と思えた日。この日を境に症状はすべて寛解していく。熱も下がり、喉もピーク時に比べれば痛みは2割程度。息も吸える。薬も半分くらいに減った。水も飲める。ただし誤嚥はするのでとろみ剤を常に携帯する。うどんにとろみ剤を入れて食べるスタイル。もしかしてこれが超高齢化社会の常識になるんじゃないの。

この日はEATをした。EATとは慢性上咽頭炎に対する擦過処置だ。少なくとも一年ほど前まではBスポット療法と呼ばれていたけれど、いつの間にかちょっとかっこいい名前に変わっていた。

EAT(Bスポット療法) https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/

塩化亜鉛を付けて上咽頭をこするのだが、これがめちゃめちゃめちゃめちゃ痛い。自分でやっといて泣く。「あ゛~~~」と泣きながら自分で自分の鼻の奥をこする図、健康な自分が見てたら絶対に面白いと思う。医療は冷静になると面白い絵面にあふれている。

塩化亜鉛に収れん効果があるので、やったあとはスッキリした。泣きながらこすったし、効果があったと思いたい。

【五日目】

熱は下がり、喉の痛みと違和感も随分おさまってきた。薬を飲まなくても大丈夫になった。まだ誤嚥はするので、この日までとろみ剤を使った。ちょうど旦那さんもお休みの日だったので、小さいひとも含め一日中三人で寝ていた。

精神的には元気なので「肉が食べたい」としか思わなかった。だいたいうどんで過ごしてきたので、たんぱく質を欲していた。けれどまだ肉を食べられるまでにはなっていないので、きつねうどんのきつねで我慢。飲み込めることに感動していた。飲み込めない状態になって、当たり前にやっていることに気づく。当たり前、尊すぎる。

【六日目】

9割がた回復。五日間寝て過ごしていたので、体力の低下が著しい。リハビリにとお散歩がてらユニクロに行き、小さいひとの冬服を買った。五日間寝ていたらいつの間にか世界が秋になっていたからだ。五日で季節変わるんだから、コールドスリープとかしたら大変なことになるだろうな。久しぶりに人間らしい消費活動もできて満足だった。

【七日目】

ほぼ回復。墓参りに行った帰りにラーメンを食べ、晩御飯に念願のお肉も食べた。

ということで、三日目あたりで「このしんどいのいつまで続くん…」と弱気になってちょっと泣きましたが、一週間耐えればお肉が食べられるまでに回復します。

この直前に小さいひとが発熱していたため確定診断が遅れましたが、終わってみると完全にヘルパンギーナでした。ヘルパンギーナの何がヤバいって「なにも摂取できない状況に陥ってしまうこと」です。ドライソケットも橈骨神経麻酔もそれなりにヤバかったけど、水は飲めたもんな。ちなみに脱水に対して小さい氷を口に含むという対応策もあるらしいけれど、そもそも嚥下自体が困難なので無意味でした。

大人になって初めてかかってしまったひとは、脱水に気を付けて、できればとろみをつけて二、三日しのいでください。いつまで続くんや…と思っても、一週間耐えればまた日常に戻れます。かからないのが一番なんだけど、かかったときにどう生き延びるかも大切だよね。わたしはここ数年9月になるとわけのわからん感染症にかかってしまう。そのたびに学びはあるんだけど、できれば日々健康に過ごしていけたら良いなあと思います。

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