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農業の転換期がすぐそこまで近づいている 大手資本による野菜工場の実現で既存の農業はどう変わるのか

今年の箱根駅伝のコマーシャルの時に、ダイワハウスが野菜工場のCMをしていたのを覚えていませんか?
ダイワマンがネバーから農業の工業化を否定されますが、諦めずにやればそれは可能だという内容です。

そして特設サイト

調べてみるとこの農業の工業化はagri-cube IDというサービス名で、大和ハウスだけではなく三協立山との共同のソリューションのようです。三協立山が植物工場に適した栽培技術と、生産・販売等のノウハウを提供し、大和ハウスが植物工場の設計・建築・物流・各種事業設備等の幅広い分野の施設設計ソリューションなどを総合的に提案してこれから推し進めていくのが、agri-cube IDということらしいです。

お正月のCMを見てまず思ったのが、大手がとうとう実用化に踏み出したという驚きでした。
水耕栽培による工場化はこれまでも大手資本が参入してきましたが、栽培にコストがかかるのか、既存の生産者を驚かすほどの脅威ではありませんでした。
おそらく電気代がコストを押し上げているようでしたが、ここにきて太陽光発電の発電コストが下がってきて、一般市場に流通させても利益が確保できるようになったのかもしれません。

全ての野菜をいきなり工場で製造することは無理だとしても、葉物などの軟弱野菜に関してはもう可能かもしれません。そうすれば1年中安定して製造することができるようになるでしょう。しかも完全管理された工場ですので、人件費もほとんどかからずに製造することが可能です。これ、農業界にとってはものすごいインパクトのあるニュースだと思いました。

野菜の価格の要因として人件費、肥料、消毒等に使う農薬、輸送に使う箱代、配送にかかる運賃などでしょうか。中でも人件費が圧倒的にかからなくなると思います。次に管理された環境で育てるため消毒しなくても良さそうです。次に大生産地から大消費地までの送料もかからないように思います。大消費地周辺の過疎地域で生産すれば輸送コストも安く済みそうです。

また販路に関しても市場を通さずに年間契約したスーパーやコンビニ、大手飲食チェーン店に販売することになると予想されます。大手販売店にしても天候などに左右されず、安定して原材料が仕入れられるのでメリットがあります。

また、この流れで行くと工場内だけでなく、土地の集積化が進めば米や麦、大豆などの自動生産も可能になると思われます。AIによる制御で自動操縦された田植え機やコンバインが24時間稼働で育てます。
カメラやセンサーの付いた田んぼや用水路で水をコントロールしたり、農薬散布をします。
ただ屋外であるため台風等の天災に関しては被害を免れないとは思いますが、それは今も同じであるためリスクではないと思います。それよりも人件費が掛からなくなる方がメリットだと思います。
もちろんそれだけの設備費を、一般の農家が背負えるかという問題がありますが、もうこのような農業は家族で兼業している米農家では無理だと思います。
指定を受けた農業法人が国からの助成金等を活用して、農地の集積化を進めていけば良いのではないでしょうか。

こうやって考えていくと、日本の食料自給率ってかなり改善しそうです。労働力問題もかなり解決しそうです。

日本の農業労働力に関する統計が農林水産省に出ていました。

これによるとふだん仕事として主に自営農業に従事している人の推移をみると、令和5年で116.4 万人でした。令和2年の136.3万人から比較すると約15%の減少です。うち令和5年の65歳以上の方は82.3万人と約7割を占めています。これまでの農業経営を続けていても現状を維持することは難しそうです。

agri-cube IDが確実に利益を確保できるサービスであるならば、きっと全国に広まっていくでしょうし、それは既存の農業生産者からすれば脅威以外の何者でもありません。

国も農業団体からの強い反対が懸念されますが、国内の労働力低下や異常気象の恒常化による不作が続く現在の状況では、農作物の安定供給のためある程度は認めざるを得ないと思います。

良いことばかり書きましたが、もちろん問題がないとは言えません。この野菜工場は大和ハウスが直接野菜を生産して販売するわけではないので、そのソリューションを購入した事業者は、思ったよりも経費がかかる可能性があります。儲かる事業であれば生産量が増加しますが、そうでなければ既存の農業生産者との競争もあるので、なかなか成長するのは難しそうです。

さて、そうしたときに農家は何をして行けばいいのか。植物工場が技術的に作れない野菜を作ればいいのか?それだけでは問題解決にはならないように思います。時代の変化の早い現代、変わらないと思っていたものも、10年前を思い出してみると、やはり変化してきています。食の安全を担保しつつ注視していきたいと思います。

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