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過食と拒食の行方 要介護3→4

認知症の父は今、ショートステイでお世話になっている。多動な父は施設内を動き回ったり、引き出しに保管してあったみんなのおやつを食べてしまったり、何をしでかすかわからない状態だった。職員から、少し落ち着くように精神科で薬を処方してもらってほしいといわれたが……。


多動で手に負えない

老人ホームへの入居を待つ間、実家の父がショートステイでお世話になっている。ショートステイに入った最初の週末、父の様子を見にいくと、職員のFさんが私たちの顔を見るなり切羽詰まった顔で駆け寄ってきた。

認知症で多動な父は、厨房に入り込んで検食(※)を食べてしまったり、引き出しに保管してあったみんなのおやつを食べてしまったり、医務室に入って薬に手を出そうとしたりする。職員がマンツーマンで張り付いていないと何をしでかすかわからない。もう少し落ち着くように精神科で薬を処方してほしいとのこと。
※検食(施設管理者が給食の内容を検査するために試食するもの)

クエチアピンが効かない!

そのショートステイでは、家族が病院へ連れていかなくてはいけない。ネットで施設周辺の精神科を調べ、近くのメンタルクリニックへ行った。そこで症状と今のんでいる薬について説明し、クエチアピンという薬を処方してもらった。薬名を見たFさんは、「この薬なら効くだろう」と思ったそうだ。

しかし一週間後、施設を訪ねてみるとFさんの表情が冴えない。
曰く「この薬がこんなに効かない人ははじめてです」。

またメンタルクリニックに行き、今度はリスパダールという薬を処方してもらった。この頃から、いつ連絡があっても受診できるように、いつも通勤用のバッグに父の後期高齢者医療被保険者証と診察券を入れて持ち歩くようになった。

リスパダールがヤバい!

薬で少し落ち着くかと思ったが、今度は熱が38度あるので受診させてほしいと連絡が入った。施設に行くと、父の様子が何だかおかしい。これまでは呼びかければ笑顔を見せたが、呼びかけても返事をしないどころか視線もあわないし、何も反応しない。施設の看護師からはリスパダールが合わないせいではないかと言われた。

施設が提携している医院を受診し、リスパダールの服用を中止したら、体調がもどり呼びかけにも反応するようになった。Fさんからも「もうお父さんの動きには慣れたから大丈夫。薬でぐったりしているより元気に動き回ってもらっているほうがよい」と言われた。

要介護3から4へ

しかし安心したのも束の間、今度は父が食事をとらなくなってしまった。とろみをつけたスポーツドリンクをコップ一杯飲むのがやっとで、お粥すらも食べない。総合病院で診てもらったが、血液検査もCTも認知症が進行している以外に目立った所見はなかった。

ショートステイに入所したときは、普通食を自分で食べ、布のパンツを使用して足腰もしっかりしていたのに、今ではミキサー食を食べさせてもらい、リハビリパンツで、足元もふらついている。一番状態が悪いときに介護認定の面接があったせいか、要介護3から要介護4にランクアップ(?)してしまった。

過食も拒食もどちらも認知症の症状だし、進行していく病気だから、たまたまこの時期に病状が進行してしまったのかもしれない。でも、もし薬を増やさなければ、薬の副作用についてもっとよく調べていたら、こんなに急に衰えることはなかったかもしれないと思ってしまう。

週末、父はできたばかりの新しい老人ホームに入居する。そこが父の終の棲家になるのだろうか。少しでも体調と食欲を取り戻して、穏やかに過ごしてほしいと願うばかりだ。


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