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【ドイツ語学習記録】マルクス・エンゲルス「共産党宣言」冒頭I

【注意】「ノートは間違いの記録」です。この記事は勉強途中で書いたもののため、多分に誤りを含んでいる可能性がありますので、あらかじめご了承ください。構文や訳をしっかりご覧になりたい方はこちらから。

今回扱うのはこの部分です。

MANIFEST DER KOMMUNISTISCHEN PARTEI

Ein Gespenst geht um in Europa — das Gespenst des Kommunismus. Alle Mächte des alten Europa haben sich zu einer heiligen Hetzjagd gegen dies Gespenst verbündet, der Papst und der Zar, Metternich und Guizot, französische Radikale und deutsche Polizisten.

表題

MANIFEST DER KOMMUNISTISCHEN PARTEI

まずは語彙を。まあどうせ「共産党宣言」って意味なんだろうけど。

Manifest n. -[e]s/-e 宣言, 声明(文); 告示, 公表, 発表
Kommunistisch a. 共産主義の; 共産党の
Partei f. -/-en ①党派, 政党; (ゲームの)組, チーム ②...

Partei が2格で Manifest を修飾する形で「共産党宣言」となってるんですね。はい、おしまい。

第1文

Ein Gespenst geht um in Europa — das Gespenst des Kommunismus.

語彙を確認します。

Gespenst n. -es/-er ①幽霊, 亡霊, 妖怪; 幻影, 幻 ②(差し迫る)危機, 危険

geht の後ろの um が浮いてるので、多分これ分離動詞じゃないですかね。

um|gehen i. (s) ①歩き回る, 巡回する, 彷徨い歩く; (噂が)流れる, (幽霊が)出る ②交際する, 扱う, ...

Gespenst を幽霊とか亡霊とかととれば「出る」の意味になって完璧。ヨーロッパに幽霊が出ているという話か。

共産党宣言と題しておきながら怪談話をするはずがないので、なんかの比喩だろう。ダッシュ以下に修飾要素がおいてあるはず。

Kommunismus m. -/ 共産主義

2格で Gespenst を修飾して「共産主義の妖怪」となる。共産主義の妖怪?ちょっと意味取りづらいな。まあ、後で見ればわかるか。

第2文 語彙

Alle Mächte des alten Europa haben sich zu einer heiligen Hetzjagd gegen dies Gespenst verbündet, der Papst und der Zar, Metternich und Guizot, französische Radikale und deutsche Polizisten.

なっがいな。今まで歌しか訳してこなかったから、ここまで長めの文章訳すの初めてかもしれない。

とりま語彙を片付けちゃいます。

Macht [engl. might] f. -/ ... ③ [pl. Mächte] 兵力, 武力; 軍隊; 国家, 強国
heilig [engl. holy] a. ①聖なる, 神聖な ②信心深い, 敬虔な; 神のような ③(俗) 大きい, 甚だしい
Hetzjagd 
= Hetze f. -/-n ①犬を使う追い立て猟 ②慌ただしさ, 大急ぎ ③追求, 中傷, 扇動, 挑発 ④(方)群れ
verbünden (sich4 mit j3 verbünden) <人3>と同盟する, 連合する
gegen [engl. against]
pre. 4格支配
ad. ほぼ, 約

危うく通り過ぎるところだったが、語尾のない dies ってなんなんやろ。

dies 代 [指示代名詞; 中性単数 dieses と同じ; sein の主語になるときは述語の性数に関係なく用いられる] 
Papst m. -es/Päpste ローマ教皇
Zar m. -en/-en 旧ロシア皇帝
französisch a. フランス(人・語)の

3行目の Radikale は最初名詞だと思ってたけど、

Radikal n. -[e]s/-e ①(数)根; ルート記号 ②(化)基

この意味だと形容詞の名詞化の方が現実的かな。

radikal a. ①徹底的な; 極端な, 過激な; 容赦のない, 断固とした ②根本の, 根源的な

最後にこいつも。

Polizist m. -en/-en 巡査, 警官

さて、訳しますか。

第2文 訳出

まず本動詞 verbünden が sich で使われているので、頭の alle Mächte は主語。後ろの des alten Europa は2格のはずだから、「ヨーロッパの大国は〜」とかになるのかな。alten の意味を入れてあげれば、「古い」ってのは割りに合わないから「かつての欧州の大国は〜」ってなるかな。

verbünden の用例では mit となっているけれども、mit がない以上は純粋に「同盟を組む」でいいのかな。

zu einer heiligen Hetzjagd のHetzjagd は、考えられるとしたら②の「慌ただしさ, 大急ぎ」か、③の「追求; 中傷, 扇動」のどっちか。④の「群れ」ってのも意味はいいけど、俗語扱いなのが気になる。ちょっと保留。

gegen dies Gespenst だけど、dies が代名詞である以上 dies と Gespenst は本来分けるべきはず。だけどなぁ。意味的には「欧州大国が亡霊(共産主義)に対抗して同盟する」ってなって、すげーしっくり来るんだよな〜。

ここで Cambridge  Dictionary をみてみたら、こんなのが載ってた。

dieser (also diese, dies)

これじゃね?ってちょっと思ったけど、Gespenst が中性だから、形的には dieser は入らないはず。それともこの dieser って基本形のことかな。そうだな。基本形だな。基本形ということにしておこう。

ということで gegen dies Gespenst で「この妖怪に対抗して」となる。

今の時点で zu ~ Hetzjagd を保留にして「かつての欧州強国は、この妖怪に対して同盟を組んだ。」ってな感じでは。

続きの der ... オンパレードを見てみようか。「ローマ教皇とロシア皇帝、メッテルニヒ(オーストリア宰相)とギゾー(フランス首相)、フランスの Radikale とドイツの警官」という、一見対立していてなかなか手を組まなさそうなコンビが並べられている。「こんな奴らでも同盟を組むんだ」ってことを言いたいのかな。

となると、一見 der ~ の1格でどんな文成分になるかわからなかったこの部分が alle alten Mächte des Europa と並列されてるんじゃないかと考えられる。「すべての欧州強国は、ローマ教皇とツァーリ、メッテルニヒとギゾー、フランスの Radikale とドイツの警官をもひっくるめて、zu einer heiligen Hetzjagd この妖怪に対抗して同盟を結んだ」って具合に。

いいかげん、Radikale の訳を決定させましょうか。ドイツの警官っていう、いかにも保守的な人間と対比させられてるので、明らかに数学の根とか化学の基とかとは違うから、形容詞の名詞化なんだろうな。周りが1格だからここも1格のはず。冠詞がついてないから複数が考えられて、「急進的な人たち」となるか。いいじゃない、フランス人っぽくて。

保留していた zu einer heiligen Hetzjagd だけれども、「追い立て猟」とかいうのは論外として、heiligen と同調できる意味を持ってこないとなんだよな。どれもイマイチピントこない。

前置詞 zu から推測を立てた方がいいんだろうか。後ろで dies Gespenst とすることで「共産主義に対抗して」を表しているから、Hetzjagd は共産主義を表すとは考えにくい。じゃあこの zu ってなんなんだ?ちょっと辞書斜め読みしてみた。

zu prep. ④(目的・用途)Stoff zum Anzug, 服地; Wasser zum Trinken, 飲料水; zum Scherz, 冗談に; ~ et. dienen, あるものに役立つ; zum Essen gehen, 食事に行く; jn. ~ Hilfe rufen, ある人の助けを求めて叫ぶ; entschlossen zum Widerstande sein, 反抗しようと決心している; ~ Ehren des Dichters wurde e-e Feier veranstaltet, 詩人に敬意を表するために祝典が挙げられた; es geschieht nur ~ deinem Besten, それはただ君のためになされるのだ; ich tue es = m-r Unterhaltung,私はそれを自分の慰めのためにする; er ist zum Abgeordneten wählen, 彼は結婚するのにちょうどいい年頃だ

これかな。「〜のために同盟を組んだ」って感じ。そしたら「〜」に当たるのは対抗とか抑圧とか、そんなところのはず。それなら慌ただしさはあり得なくて、中傷とかがいい感じなのかもしれないけれども、ちょっと待てよ、これひょっとして「追い込み猟」を比喩的に使ってるかもしれんな。まあいずれにしても中傷って意味に落ち着くはず。

残った heiligen だけれども、神聖って意味を持たせるのはあまりにおかしいので、ここは妥当に「強烈な中傷」って感じで訳しておこう。

総括

すっかり忘れてたけど、第1文の2格ってまだどんな修飾してるか決めてないんだっけ。

Ein Gespenst geht um in Europa — das Gespenst des Kommunismus.

ここまでの文を見る感じ、Gespenst って共産主義のことだから、「共産主義という怪物」って感じでいいんじゃないかな。

以上を踏まえて訳してみた。

MANIFEST DER KOMMUNISTISCHEN PARTEI

Ein Gespenst geht um in Europa — das Gespenst des Kommunismus. Alle Mächte des alten Europa haben sich zu einer heiligen Hetzjagd gegen dies Gespenst verbündet, der Papst und der Zar, Metternich und Guizot, französische Radikale und deutsche Polizisten.
共産党宣言

ヨーロッパにある怪物が現れた。共産主義という怪物が。古くからの欧州強国は、教皇とツァーリ、メッテルニヒとギゾー、フランスの急進派とドイツの警官もろとも、この怪物に対抗して強烈な非難を浴びせようと同盟を組んだ。

いいじゃないですか。面白くなってきた。

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