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一月一酒 第7回

初出:月刊ハンガリージャーナル 2004年12月号

Tokaji Aszú 6 puttonyos 2000
醸造家:Szepsy István
地区名:Tokaji borvidék

 Szepsyの名は、現代のワイン醸造家にとっての構想概念とでも呼ぶべきものに変わりましたが、実は昔からそうなのです。つまり伝承によれば、1630年のイースターにおいてローラーントフィ・ジュジャンナ大公夫人のテーブルに、聖職者Szepsy(セプシ・ラースロー・マーティー)より献上されたものが、史上初の貴腐ワインとされています。もちろん最新の研究によれば、貴腐ワインの生産は16世紀中頃より始まっていたということです。また1650年以来トカイワイン製法の規定が存在し、1701年にはブドウ畑の格付けが行われました。これらがフランスのワイン規格化よりも遙に古い、史上最古のワイン醸造の規格となりました。
 セプシ・イシュトヴァンSzepsy Istvánの家系は、上記伝承のセプシと繋がりがあります。彼こそハンガリーで最も有名なワイン醸造家と呼んでかまわないでしょう。世界的に高く評価されていることも偶然ではありません。トカイ・ルネサンスとでも呼ぶべきトカイ・ワインの復興に対する彼の貢献はたいへんなものです。今日のトカイワインに対する「高貴な天然の甘口ワイン」という世界的な名声は、彼に負うところが大きいのです。
 彼は品質に対して妥協することなく努力します。まだほとんどの醸造家がより多くのブドウを生産していた時代(訳注1)に、嘲笑されることがあっても、間引きをしてブドウの平均生産量を常に低く保っていたことからもそれは明確に現れています。彼はたいへん小さい規模から生産を始め、80年代にはすでにその数ヘクタールの畑から、200本程度の驚くべきワインを生産しました。現在ではこの時代の彼のワインは、コレクター間では1本数百ドルで取引されるほど、それこそコレクター羨望のまとです。現在でも彼のワイナリーからの年間生産高は5~6000本以下です。最近では、ある別のトカイ・ワイナリーの共同経営者/技術指導者としても活躍中です。
 彼の名声は貴腐ワインからですが、その中でも6プットの貴腐ワインのみ手掛けています(訳注2)。また当り年にはアスーエッセンシアやエッセンシアも生産します。遅摘みブドウのワイン、軽やかで優美なキュビー、こくのある白ワインなどは伝説的な評価を得ています。
 今回紹介する2000年の貴腐ワインは、この年の特徴を良く表しています。暑い夏は「酸味」へ良い影響は与えませんでした。糖分含有量は高くなり(200g/L以上)、活き活きとしていますが強すぎない酸味を持っています。1999年よりもこくは薄めですが、よりフルーティーに仕上がりました。まだたいへん若いので、その真価は将来発揮されることでしょう。生産量の少ないこのワインをコレクションに加えるのでしたら、早目のご購入をお勧めします。古典的なデザートワインですが、フォアグラやロックフォート・チーズの好きな方は一緒に味わってください。忘れられない経験を提供してくれるでしょう。

原文:TŐZSÉR Róbert
訳文と画像:高久圭二郎

訳注1:全てが国有化された社会主義時代のトカイ国営ワインコンビナートの代表は、農地を全て取り上げるとモチベーションが下がるとして、醸造家(=ブドウ栽培農家)の極小規模の農地私有を例外的に許可していて、セプシ氏はその国営ワインコンビナートの醸造家としての仕事とは別に、その畑で理想のブドウ栽培を継続し、自身のワインを醸造していました。

訳注2:いわゆる3から6プットニョシュまでの4クラスあるアスー貴腐ワインのうちの6プットニョシュのみ、という意味です。

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