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おてつたび in 兵庫県朝来市

11月8日(水)から11月12日(日)までの5日間、兵庫県の朝来市におてつたびに行ってきました。

申し込みまでの経緯

おてつたびに参加しようと思った理由は、端的に言えば「行き詰まっていたから」だと思います。仕事を辞め、学生時代から力を注いできたプログラミングから離れて、これからどのように生きていくのかを考える時期にありました。

何ヶ月か実家でぼんやりと過ごして、その生活や今までの人生をを振り返って思ったのは次のようなことです。

  • 人間は多くの時間を未来について考えるので、その時に前向きな気持ちになるために、方向性を決める目的やテーマのようなものがあった方がよい。

  • 目的のために今を犠牲にするのではなく、今を楽しむことも忘れないようにしたい。目的は達成するためのものというよりは、前向きに生きるための道具のようなものである。

  • ただ生きることが目的なのだとすると、今の人たちや未来の人たちが暮らせるように環境を保つことは重要なことである。

これからは自分も一人の人間として生きながら、自然やエネルギーに関することに関われればいいなとぼんやり考えていました。そのための視野を広げるための第一歩として、以前母から聞いたおてつたびに参加して、他の地域に行ってみることにしました。

応募先を選ぶ

応募先を選ぶにあたって、いくつかの条件をリストアップしました。

  • 必須条件

    • 11月中旬、あるいは下旬からスタート

    • 長さは1ヶ月以内

    • 場所は東北より南(東北より北は遠く、この時期は寒いため)

  • 任意条件

    • 近くを自転車でフラフラしたいので、休みがある、あるいは働く時間が長すぎないこと

    • 地元の産業と関ってみたい(おてつたびの仕事内容は農業、力仕事、調理、接客、漁業、林業などがあるイメージ)

のようなことです。いくつか募集を見てみて、これらの条件にマッチしていた兵庫県朝来市でのおてつたびに参加することにしました。兵庫県朝来市に行くのは小学校の自然学校以来でした。

体験記

暖かいファーストコンタクト

当日は朝来市の中心部にある和田山駅集合だったので、和田山駅まで電車で向かいました。集合時間までには時間があったので、駅周辺を持ってきた自転車でぶらぶらサイクリングしました。

快晴の和田山駅前

サイクリングを終えて駅に戻ったところ、「おーい、佐藤くん!」と私の名前を呼ぶ声が聞こえました。声の出所を探ると、ロータリーに止まった車の周辺に数名の人が集まっているのが見え、それがおてつたび参加者の迎えの方たちでした。

私の名前を呼んでいたのは粟鹿自治協会の事務局長の中尾さんで、その近くにいらっしゃったのは市役所の職員さんでした。「ようこそ朝来市へ!」と歓迎されると共に、職員さんから朝来市のパンフレットが入った袋をいただきました。もっと淡々と迎えられることを想像していたので、まだ私は何もしてないのに暖かく歓迎されたことが印象に残りました。

中尾さんの運転で、まずは宿泊場所を見に行くことになりました。車の中で中尾さんから、「頑張って仕事をするというよりは、おてつたびを楽しんで粟鹿の魅力を知ってもらいたい」「実際に粟鹿に来てもらわないと、魅力は伝わらない」というような話を聞きました。暖かく迎えていただいた理由が腑に落ちると共に、中尾さんの人の良さや地元愛を感じました。

中尾さんには最初から最後までお世話になりました。おてつたびメンバーの面倒を見てくださったり、なんと車で朝来市の観光地(竹田城、神子畑選鉱場跡、生野銀山など)の案内までしてくださいました。

立雲峡から見える竹田城

山や田畑などの景色

2日目の朝、起きてからお仕事開始までは時間があったので、散歩に出かけることにしました。粟鹿の山の方に向かうと、山に霧がかかった幻想的な景色が見えてきました。

霧がぼんやりかかっているのが綺麗だった

地元相生市も山に囲まれているので、山を見ることは少なくありません。なぜ心を動かされたのかを考えてみると、1つは自然と繋がっている感覚があったからなのかなと思いました。山の裾は建物に隠れていて見えないことが多いですが、目の前にある景色はそうではなく、畑から山の裾、そして頂上までを見通すことができ、没入感がありました。

ウォーキングイベントの準備

2日目はウォーキングイベントの準備で、コースの整備を行いました。具体的には、コースが分かりにくいづらいところに印をつけたり、コース上の落ち葉を掃除したりしました。私は降りる時にブロワーで落ち葉を掃除しました。

コース上には雌滝(めんだき)、雄滝(おんだき)の2つの滝があり、雄滝がコースのゴールとなっていました。川の水はとても綺麗で、昔はオオサンショウウオも生息していたそうです。

コース中腹にある雌滝

山東地域サイクリング、本屋「本は人生のおやつです!!」

午前中が自由行動の時間を使って、山東地域をサイクリングすることにしました。山東地域のスタンプラリーをいただいていたので、それの残りを埋めることにしました。

まずは南に向かって、よふど温泉、玉林寺、大林寺を訪れました。大林寺に向かう途中に南但馬自然学校があり、ここは自然学校の時に宿泊した場所でした。

道中で雨に打たれて濡れてしまったので、途中にあったパン屋さん(苺一笑)に寄って休憩することにしました。置いてある自動販売機をみると、なんとパンが売っていました。店は開店前だったので、自動販売機で菓子パンを買ってベンチで休憩させていただきました。

パンも売られている自動販売機

宿泊場所に戻る途中、Googleマップで見て名前が気になっていた本屋「本は人生のおやつです!!」を訪れました。少し道から外れた川沿いにあり、古民家を改装したおしゃれな店舗でした。

しばらく本を一人で眺めたあと、面白い本との出会いを求めて店長さんに聞いてみることにしました。「物事の見方を変えてくれるような本が好きです」と話したところ、水木しげるの「ほんまにオレはアホやろか」、小澤征爾の「ボクの音楽武者修行」、宮本常一の「民俗学の旅」の3冊を紹介していただきました。本についてのお話を聞いたところ、一見破天荒にも見えるけれど自分の生き方を貫いた人たちの姿から、「こういう風に生きてもいいのか」と思える本だという印象を受けました。

普段はKindleで本を読むことが多く、少し昔に書かれた本を読むことはないので、貴重な本との出会いの機会でした。最初の方を少し読んでどの本も面白そうだったので、3冊のうち2冊と、いろいろな本屋さんの開店までの想いが綴られた「本屋、ひらく」を購入しました。

当日のお手伝い、打ち上げ

活動最終日の日曜日は、ウォーキングイベント当日でした。当日は机や椅子などを軽トラックで会場に運んだり、配置するお手伝いをしました。

会場設営中の様子

会場の設営が終わると、コースの持ち場に行きました。車が足りなかったので軽トラの荷台に乗ってコース途中まで行くことになり、貴重な体験になりました。私の担当場所はコースの一番最後の滝付近だったので、そこで交通整理や橋を渡る補助などをしました。

イベント終了後の夕方から、粟鹿自治協議会併設の喫茶店を会場にお借りして、打ち上げがありました。おでんやたこ焼きを食べたり、お酒を飲んだりしました。酔いが回ってきた頃、カラオケ大会が始まり、皆さま楽しそうに歌っておりました。

イベントの準備・実行・打ち上げ、それらを一緒に行なって暮らしの一部を共有することは、生活に安心感や満足感を与えてくれると感じました。地域の行事は、利益や効率を考えたり人が少なくなって無くなってしまうのかもしれませんが、大事にしていくべきものだと感じました。

まとめ

おてつたび体験で気づいたことがいくつかあります。1つは「今までは景色を見ているだけで、そこにどのような暮らしがあるのかを見れていなかった」ことです。

実際に地域の中に入って活動することで、そこにどんな人がいるのか、どんなことを考えているのか、どのようなことをしているのかなどを垣間見ることができました。また、粟鹿や朝来市で地域おこしが盛んだったり、移住される方が多くいることも知りました。よく考えてみると、長く住んでいる地元についても、他の人がどのような暮らしをしているのかや、地域おこしが行われているのかどうかは知らないことに気づきました。

もう一つは「地域の人同士のつながりは良いものであり、行事がつながりを作るきっかけになる」ことです。私が最初におてつたびの迎えの方たちに(私がどういう人で、どんなことができるのかほとんど分からない状態でも)歓迎されて驚いたのは、人を利害で判断するのが当たり前になっていたからなのかもしれません。「今同じ場所にいる」ということ自体が奇跡のようなもので、それだけで相手を受け入れられることは素晴らしいことだと思いました。

そして、今回はウォーキングイベントの準備・実行・打ち上げを通じて、地域の方やおてつたびメンバーとお互いのことを知ることができました。行事については、「民俗学の旅」の次の文も印象に残っています。

平和で単調で、おなじような日が続いていく中に、こうして晴れやかで胸をとどろかすような日が単調な日の中にはめこまれていて、そのことゆえにみな日々を生き生きと暮らしつづけてきているといってよかった。しかもこのように胸をとどろかす日の行事はそのほとんどが自分たちの手で演出されたもので今日のように大きな町へ出かけていって、そこでいろいろのものを見たり、食べたりして遊んでくるというようなものではなく、一日の祭りのために何十日というほど準備や練習を日常のいそがしい生活の中で続けてきたのである。

宮本常一「民俗学の旅」P57

私の文章力や感想では到底伝え切ることができませんでしたが、粟鹿の皆様は優しい方ばかりで、また朝来市は自然豊かで空気も美味しく心地よい場所でした。機会があれば再度訪れたいと思っています。

改めまして、素晴らしい機会を作ってくださった粟鹿の皆様、おてつたび参加者の皆様、おてつたび運営の皆様に感謝したいと思います。ありがとうございました。

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