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カラーエピローグ

貴方が作ったサルバドールの海、何時だってよもぎ蒸しパンの色。

なけなしのアバンチュールでは、あの飛行機雲を追えない。

飛び立って、走って何度だってずっこけてしまって、恥ずかしくなる前に、また怪我をした。

こそぎ落とす私の汚れ。全てを上から誰よりも汚して、洗い流して。

新しい自分になりたい。

貴方の中で色を変える、めくるめく手こずる。

水色になったら、貴方以外に愛してもらえるかも。

さようならを言えないけれど、私の元から離れていくのは、あの日引き止めたとして変わらないだろう。

私に「緑が似合うね」と言った。

私は「緑が似合うの」と言った。

ずっと昔のことで忘れていたし、覚えておきたいわけでもなかった。

此処もまたサルバドール、透明な湖。ただ足をちゃぽちゃぽとさせるだけの、なんでもない場所。

別の誰かに愛されて、ほんの少し走り出して、私は緑の服を着た。貴方と別れてから、何故か買わなくなった私の色。

くるりと回って、あまりにも似合っていて、私は自惚れて、私は忘れていた。

「緑が似合うね」

嗚呼、奥ゆかしい空の色、似合わないほど不規則な心。傍に居ない貴方だけが幻。私の夢。

貴方以外に愛されている私は、また同じ夢を見ている。もうどこにも無いあのサルバドールを、泳ぐのはもう怖いサルバドールの海を。

思い出にしておこうね。私は飛行機雲を追う。

追い抜かして、走り去って、貴方と見れなかった景色を見る。

貴方の褒めた色を着て、貴方の褒めた顔で笑って、貴方と見た夢を捨てる。


最低なことして最高になろうよ