見出し画像

大阪中之島美術館「決定版!女性画家たちの大阪」と中之島散歩

2022年に大阪市立美術館で開催されていた「華風到来 チャイニーズアートセレクション」の「上海娘」以来とても気になる画家さんになっていた島成園さん。彼女をはじめとする「大阪」「女性画家」のキーワードで集めてみた展示会が開催されるとあって、2023年夏あたりからとても気になっていた展示会に行ってきました。

前期・後期で展示品が異なるものがあるので両方とも行ってみたかったのですが、前期は断念し、2月中旬に後期展示を見に行ってきました。モネ展が始まった週末とあって来館者はとても多かったです。となりの国立国際美術館では「特別展 古代メキシコ」もやっているし、少し足を延ばしたところの中之島香雪美術館では「刀の拵と美」を展示していたこともあって、ここまできたら3館はしごしようかとも思いましたが、「一日一展示じゃないと無理」という連れの要望があって、それらはまた一人で行った時にするとして、今回は最も見たかった「決定版 女性画家たちの大阪」に絞りました。

大阪中之島美術館は、最近の建物なのでシンプルな「箱」と言う感じの建物。好みに大きな影響を与えると思う10代によく足を運んだこともあって私の美術館などの建物の好みは、大阪市立美術館、奈良国立博物館(今の仏像館)、京都国立博物館(旧館の方)といった重厚感溢れる感じなので、最近のこういうシンプルな建物は正直寂しい。ただ、建物の個性みたいなものを削ってその分展示品に集中してくださいという意図は理解できる。

チケットを買って長めのエレベーターで会場に向かいます。エレベーターに乗っている時に震度7位の地震が発生したらどうなるのだろうかと心配してしまうのは元旦の震災の被害がまだ頭にあるからなのでしょう。

北斎の娘、葛飾応為のように絵師として作品を残した女性画家は前近代にも存在していたことがわかるとはいえ、職人として、あるいはそこそこの家柄の人たちの教養としての絵と、新たな女性画家としての絵はどの時点で線引きができるのかわからないが、絵を描いた女性はこれまでにたくさん存在しているのだと思う。武家の女性や尼僧が残した絵は、それだけを集めて展示することは今のところはまだ無いような気がするけれど、作品自体はあると思う。

ただ、画家としての名前を明示してある一定の数の作品を残すようになったのは、上村松園以降なのだと思う。京都の上村松園、東京の池田蕉園、そして大阪の島成園の「三園」の活躍は明治以降の画家を目指す女性たちにとって大きな励みになったことだろう。

この中で、上村松園は理想化された美人画を追求した作品が多いことに対して、池田蕉園は美人画ではあるけれど少し庶民的な可愛らしい作品が多いように思われ、そして島成園は美人画も描きつつもその二人とは異なった領域を目指そうとしたような印象を受ける。「私」「私の周辺」「情念」みたいなものだろうか。おそらく展示を見た人の多くが良くも悪くも魅了されてしまう痣のある女性が描かれている「無題」は、仕事内容が評価される際にもつきまとうルッキズムに苦しむ女性、あるいは他人の評価に苦しむ自分自身と向き合う感じで、爽やかな絵ではないけれども目を離せなくなる作品で、最後のグッズ販売のところで販売されていた絵葉書などを持ち帰るべきかかなり悩んだ。

会場には、入り口近くに展示されていた「祭りのよそおい」など、この数年間の別の企画展で見かけた作品があってそれだけでもかなり嬉しくなった。日常と非日常、豊かさと貧しさ、小さなものへの目配りなど、女性ならではと軽々しく言うべきではないだろうが、それでも、ああ、これを絵に描くのだ、無かったものにしないのだというものがある絵は見ていて楽しかった。

島成園およびその同世代や画塾で縁のあった女性画家たちの作品、江戸末期からの文人画を残した女性画家、そして未だ十分に解明されていない画家たちなど50名以上の女性画家の作品が集められていて、三園と称されるビッグネームな女性画家以外にも絵で身を立てようとした女性たちがいたこと、その中には未だ十分に素性やどのような作品を残したかなどの全貌が明らかになっていない人たちがいることを知り、今後の女性画家の研究が楽しみだと思った。画家の説明に「〇〇の娘」という記載が多いような気がしたが、今後の研究が進み、作品そのものの解説が増えることによって記載内容も変わっていくのかもしれないと思った。こちらの企画展は2月25日までです。

さて、美術館や博物館に足を運ぶのは好きだけれど、アート愛好者とまでは言えず、目利きでもない私の場合、企画展ひとつにかかる時間は1時間前後で、1日に3つ程度は見て回っても体力・気力としてはなんとか大丈夫だが、今回は小学生の子どもを連れてきており(何とこの企画展は中学生までは無料だった)、子どもにとってはより面白そうな隣の古代メキシコ展もいかないかと誘ったもののあっけなく断られたので、代わりに中之島の公会堂あたりを案内することにした。

日本銀行大阪支店

大阪中之島美術館から歩いて30分程度で、日本銀行大阪支店(いかにも日本銀行と言う感じの建物が素敵)、ミャクミャクが横たわるオブジェが設置されている大阪市役所、そして大阪府立中之島図書館、大阪市中央公会堂、現在まだ休館中の大阪市立東洋陶磁美術館がある。後者3つは私のお気に入りの建物たちだ。特に東洋陶磁美術館と図書館は大学院時代よく足を運んでいました。お金はあまり無かった時分なのでそういうところでゆっくり過ごす時間は大変貴重でした。


公会堂

中央公会堂は非常にわかりやすい良い近代建築で、改修工事かなにかで多少変化は生じているとはいえ、今後もできるかぎりそのままであって欲しいと願っている。


公会堂の展示室にあったレトロ建物マップ
レトロ建物の説明

大阪に居た時は、「サントリー1万人の第九」の練習の最終回あたりにある佐渡裕先生とのレッスンがここで行われたし、事情は忘れたが私の修士の学位授与式はこちらで行われた。運よく研究科代表(総代?)だったので檀上に上がったか名前を呼ばれて前に出たかそんなうっすらとした記憶がある。大阪に所縁があるものとして、この建築物には並々ならぬ思い入れがあったりする。

なお、「サントリー1万人の第九」はいくつかの会場に分かれてレッスンに参加する形式だったが、私は上の写真の名前がある「大阪倶楽部」でレッスンができるグループに応募して参加した。理由はもちろん、大阪倶楽部の中に入ってみたかったからであるが、第九の練習もそれなりに真面目に参加した。機嫌がいいと今でも、「アーレーメンシェン~」と歌ってしまうほどである。みなさまその節はありがとうございました。

レトロ建築として知名度があるので簡単には壊されないことを願っているけれど、公会堂をはじめとして中之島近辺には良い感じの近代建築物がまだ無事に残っていて、こういうものは次の世代にも残すべき大事なものだと思っている。


図書館入口

図書館は休館日ながらカフェが営業している関係で建物の中には入ることができました。カフェになっているところはもとは閲覧室だったのだろうか。


東京国立博物館にもこういう感じの階段スペースがあったと思います。素敵ですよね。
仰ぎ見ても素敵な空間

利用していた時にしっかり記憶していなかったので何とも言えないが、常連さんはいたとしても平日はそれほど混雑していない図書館で、所蔵が限定されている書籍を紐解くのはとても楽しかった記憶がある。ここも改悪せずに図書館としての使命を最大限尊重する形で末永く多くの人が利用できる場所であって欲しいと願っている。

と、そんな感じで、子どもに中之島を案内してから三重に戻ったのでした。