見出し画像

宿泊記録:奈良ホテル

学校や塾で忙しい子どもの「あそこの朝ごはんが食べたい。」というリクエストで奈良ホテルに宿泊しました。

大阪生まれの者にとって奈良ホテルは、歴史があって落ち着いていて、しかも割とゆったりできるホテルとして、文句なしに良いホテルだと思います。

日本クラシックホテルの会加盟の9ホテルというのは、以下だそうです。

日光金谷ホテル(栃木)
冨士屋ホテル(神奈川)
万平ホテル(長野)
奈良ホテル(奈良)
東京ステーションホテル(東京)
ホテルニューグランド(神奈川)
蒲郡クラシックホテル(愛知)
雲仙観光ホテル(長崎)
川奈ホテル(静岡)

この中で、宿泊したことがあるのは奈良ホテルと雲仙観光ホテル、お茶をしたことがあるのが万平ホテルぐらいしかない程度にこのクラスの高級ホテルには縁がない身の上ながら、それでも奈良ホテルは母親が知人とお茶を楽しんだりすることもあって、一番親しみがあるホテルです。

ただ、私の母は自分が行って楽しかったから次は子どもと行こうと考えるタイプでは無かったので、奈良ホテルというのは長い間、母から話を聞くだけの存在でした。自分が子を持ってみるとそういう母の振舞をさかのぼって思い出してしまって、何なのだろうかと思う時はあるのですが、そのあたりは「子どもが苦手な親だった」「子どもよりも自分の友人や交友関係が大事な人だった」である程度は説明がつくような気がします。心身共に致命的なダメージを加えられずに成長させてもらったことので、多少の相性の悪さは仕方がないかなと思うようになっています。今回は素敵な奈良ホテルの話なので暗い記憶に関する言及はここまでにします。

奈良ホテルの宿泊費ぐらい出せる程度に自分で稼ぐようになってからも、奈良というのは三重から日帰りが十分可能で、京都のように夜遊びや朝早くから参加したいイベントがそんなにあるわけではないことから宿泊を伴わないことが多く、その意味でも奈良ホテルは宿泊したりしたいけれども敢えて泊まる理由が見いだせず、あと一歩踏み出せない状況が続いていました。

とはいえ、体が不自由になってから「あの時行けばよかった」と思わない様に、行きたいなと思った場所には意識的に行く努力をしようと思っています。エジプト、イスラエル、シベリア鉄道、輪島の朝市など、いつか行こうと思いながらそれがどんどん遠くなることが増えてきたなと思っているので、上に挙げた9つのホテルは死ぬまでには宿泊したいと思っています。

さて、仕事や旅行で1年の内2か月程度はビジネスホテルメインながらもホテルに泊まっていた時期もありましたが、子を持ってからは宿泊を伴う仕事はできる限り避け、旅行の場合も「子ども」という条件を加えて宿泊地を探すようになるなどの変化がありましたが、ぼちぼち子どもも小さな大人扱いができるようになったこともあって、コロナ禍に一度、奈良ホテルに宿泊しました。もともと1人ないし数名での旅行メインですし、出先でおしゃべりをすることもあまりないので、コロナ禍の静かな感じは個人的には好ましいものでした。勿論、旅行客や観光客が減ったことで死活問題が生じた業界があったことは重々承知しています。

コロナ感染拡大防止中の奈良ホテルでは、本館のパークサイド(1階)に宿泊しました。丁度子どもが明治以降の歴史に関心を持ちだし始めた頃だったので、歴史的建造物に宿泊できることがとても嬉しかったのだそうです。また、「ちゃんとしたホテルだから、レストランでの食事時は礼儀正しくしないとダメだよ」と言い聞かせてはいたものの、やんちゃな子なので心配していたダイニングルーム三笠での朝食は、緊張している感じながらも楽しかったようで、その時はコロナ禍で宿泊客が少な目だったことが幸いして窓際のテーブルだったので景色も良かったことも相まって、それ以降折に触れ「奈良ホテルに宿泊したい、あの朝食を食べたい。」とねだられるようになったのでした。

小学生の割に贅沢な、と思うところはあるものの、掛け値なしに良いホテルについて「良いところだ。楽しかった。」と子どもが心底思っているようなので、だったらまた行きましょうねということで、今回の宿泊と相成りました。丁度12月以降の仕事が一段落ついたので、その「自分、よく頑張った」も含めた三連休中の宿泊でした。学校に通う子どもを持つと平日の宿泊がしづらくなりますが、この足枷はあと10年もしないうちに無くなるでしょうから、ここは宿泊費が多少お高い日であっても、子どもと楽しむことができるならばそちらを優先したいと思います。

2月の割に温かな日の奈良は、本当にのどかな感じでした。


2月の奈良ホテル

コロナ感染拡大防止対策は終了しているので、手指消毒などは残っているものの、チェックイン時の検温などの手続は無くなっており、ドアボーイさんも積極的に荷物を受け取ろうとする感じになっていました。


廊下の絨毯の色合いと灯が良い感じ

前回の本館パークサイドの部屋からの眺めがそう良かったわけではなかったので今回は本館シティサイドの部屋にしました。チェックイン時に明日の朝食の時間希望を伝えて鍵をもらい部屋に向かいました。今回は2階。2階からの部屋の眺めはシティサイドであっても良い感じでした。ホテルの周囲に高い建物が立っていないからだと思います。


玄関にほど近い場所の2階なので窓の外は駐車場


ちゃんとしたカップにグラスなど

前回のパークサイド1階と比べると、2階は浴室などのリニューアルが進んでいて快適と言う感じでした。ただし、前回は暖炉だったところをテレビ台にするなどの和洋折衷を残した部屋でしたが、今回の部屋には元暖炉的なものはなく、テレビは壁にかける形でした。カップなどはさすがにしっかりしたものでしたが、水は前回はペットボトルだったようなうっすらとした記憶があるのですが今回は紙パックでした。なかなか斬新です。


どの角度から撮っても様になる素敵空間。


2階から1階を見た感じ。上村松園さんの絵や鳥居デザインの暖炉など。

奈良ホテルとくればフロント近くの階段を上ったところにある2階スペースがやはり素敵です。今回は宿泊客は多めの時期でしたが、このホテルに相応しい客でいようと多くの人が思ってしまうのか、写真を撮ったり、椅子に座って外の景色を眺めたりする人たちは、いずれも静かで、互いに譲り合う感じでした。そういうゆったりした感じがさすがだなと思ったりしました。


アインシュタインが弾いたことのあるピアノ

宿泊する少し前に修理に出していたアインシュタイン所縁のピアノが戻ってきたという報道を目にしましたが、確かに戻っていました。


柱時計があるラウンジ

そして、ラウンジで宿泊者向けのフリードリンクサービスが行われていました。部屋の雰囲気の関係で紙コップだったのが少し残念ではありましたが、コーヒーなどのドリンクを楽しみ、大声ではないおしゃべりを楽しみ、ゆったりするという空間になっていて、それはそれで良かったです。椅子の半分以上が埋まる程度に人がいるにもかかわらず、互いにおしゃべりをしている人が多いにもかかわらず、それでもそのおしゃべりが互いを邪魔しない程度の快いものでした。途中、柱時計が時を告げたりしました。

しばらくして夕食を食べに外出しました。奈良ホテルは教会側から猿沢池方面に抜ける道があって、その脱出感のある雰囲気が好きだったりします。猫モチーフのお菓子を売っている和菓子で子どもが夜食用の和菓子を購入したりしました。今回は王道の和菓子を購入しましたが、猫モチーフのお菓子もなかなか魅力的でした。


日が暮れた後の猿沢池

猿沢池から近鉄奈良駅方面にあるお店は連休なのでさすがに混んでいました。私はできれば新しい店を試してみたいタイプ、子どもは以前に利用して良かったお店に再度行きたいタイプと、食事場所に対する希望みたいなものが異なっているのですが、今回は私の意見が通り、「居酒屋 つのふり」さんに入りました。インバウンドや若者を意識したインテリアが面白いお店でした。ただ、利用者に対してスタッフさんが少ないみたいで、オーダーミスなどがあって残念でした。私の選択ミスでした。


瑠璃というだけあって青い灯でライトアップされていました

丁度「しあわせ回廊 なら瑠璃絵」が開催中だったので、食事の後そちらを楽しもうかと予定はしていたものの、オーダーしてから食事が運ばれるまでに時間がかかりすぎたこと(しかも運ばれてこないものもあった。数十分後に来た隣のグループに先に運ばれた料理についてはさすがにオーダーを取り消してもらった。)、さらに間の悪いことに雨が降り出してしまったので、瑠璃絵は興福寺の隣を通り過ぎる際に外からさっと楽しむ程度にした。本当は東大寺まで足を伸ばそうとしていたのでそこは残念だった。


左半分が子どもセレクト、右半分がわたし

予定よりも早めにホテルに戻り、部屋で先ほど買っておいた和菓子を楽しむなどしました。良い感じの甘さでした。

翌朝、子どもがとても楽しみにしていた朝食をとりに会場へ。
30分ごとに希望時間をまとめていたため、入り口で少し待つもののスムーズにテーブルに案内されました。今回は三連休中で人が多いので窓際のテーブルならず。外の景色を眺めるのも好きですが、スタッフさんをはじめとする人を観察するのも好きなので場所としては悪くない感じでした。

私は和定食(茶粥を選択)、子どもは前回同様に洋定食を選びました。洋定食は飲み物、メインディッシュ、パンケーキor パン などを選ぶ必要があるので大丈夫かなと見ていたところ、頑張って選んだものを伝えていました。いいぞいいぞ大きくなって彼女もしくは彼氏もしくは友人たちと来たときにもそんな感じで頑張れ、と脳内でかなり先のことを妄想したりしました。


和定食

奈良に来たからには茶粥を優先的に選びたくなるのですが、和定食と洋定食だと、非日常感がより強いのは洋定食だと思います。入口で見たメニューによれば3800円らしいのですが(私はもともと朝食込みで予約していた)、それに見合った感じはします。柿のジャムが小さな瓶に入ったまま出されていたので、そのジャムを家に持って帰ろうかと思ったりもしました。


奈良ホテル玄関付近

チェックアウト11時ということで、食事後に春日神社方面に散歩に行くこともできそうでしたが、この日はその後、法隆寺を案内する予定だったので9時半すぎにチェックアウト、駅までホテルのバスで送ってもらいました。

できれば年に1度は宿泊して、夕暮れからの奈良と奈良ホテルをを楽しみたいと思ったりしました。また宿泊します。次は新館を試してみたいと思うのですが、本館の魅力に抗えずまた本館を選ぶかもしれません。