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boygenius "True Blue"、別離の予感への抵抗について

ROLLING STONE最新号において、Nirvanaのアイコニックな表紙を再現したboygenius。美しい蒼い瞳に長いブロンドのフィービー・ブリジャーズによるカート・コベインはもちろん、ウェーヴがかったブラウンヘアに野生的な顔立ちのデイヴ・グロール=ジュリアン・ベイカー、そしてもう何もかもそっくりなクリス・ノヴォセリック=ルーシー・ダッカス。三者三様にハマりまくったパロディは、世界中で幅広い世代の好事家たちの話題になった。

左からジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリジャーズ、ルーシー・ダッカス


2018年のセルフ・タイトルのEPでMatadorからデビューした当時はそれぞれに要注目株だった三人は、インディの枠を超えてもはや現代最重要アーティストの1人に数えられるフィービー・ブリジャーズを筆頭に、この5年間で確かなキャリアを刻んできた。


そんな彼女たちが満を持して3月にリリースするフル・アルバムから、先行でそれぞれが中心になって手掛けた3曲が先行配信された。

ジュリアン・ベイカーのギター・オリエンテッドなリフ、重なるギターバッキングと3色のコーラスが高らかに鳴らされ悪夢を振り払うための旅立ちを告げる『$20』。フィービー・ブリジャーズのくぐもったアコースティック・ギターと透き通ったウィスパー・ヴォイスに2人のハーモニーが重なって、『$20』からの見事な緩急と「27歳になった私は自分が誰だかいまだにわからない、けれどあなたが欲しいことだけはわかる」と歌われる諦念と執念がないまぜになった、サイモン&ガーファンクル『アメリカ』にも共通する心情描写が涙を誘う『Emily, i’m sorry』。そしてルーシー・ダッカスによる『True Blue』で幸福な日々の追憶、終わりの予感とそれを振り払う願いが歌われるに至って、来たるアルバム『the record』でも2〜4トラックに同じ順番で収録されるこの3曲で素晴らしく完成された青春映画なのでは…と思わせる出来栄えで、果たしてどれほどの全12曲が並ぶのか、と期待を膨らませてくれる。


昨年のpitchfork festivalでメイン・ステージに立ち、見事なパフォーマンスで魅せた充実ぶりをそのまま録じこめたかのような『True Blue』は2021年にリリースされた親密かつ内省的な3rdアルバム『Home Video』の延長上にある、気を衒わないG key 4コードで構成された展開が朴訥で、ハーモニーの美しさと歌詞が描くストーリーの清新さを際立たせている。

天真爛漫な恋人の心が離れているのをリスナーに感じさせつつ、ドローンで鳴らされる1、2弦3フレットのD音とG音が、繊細で優しすぎるように思われる語り手の願望を鳴らしているようで、美しくも切なく胸に響く。


“True Blue”
boygenius

You said you wanted to feel alive
So we went to the beach
You were born in July, '95
In a deadly heat
You say you're a winter bitch
But summer's in your blood
You can't help but become the sun

When you moved to Chicago
You were spinning out
When you don't know who you are
You fuck around and find out
When you called me from the train
Water freezing in your eyes
You were happy and I wasn't surprised

And it feels good to be known so well
I can't hide from you like I hide from myself

Now you're moving in
Breaking a sweat on your upper lip
And getting pissed about humidity
And the leaky faucet
You already hurt my feelings three times
In the way only you could

But it feels good to be known so well
I can't hide from you like I hide from myself
I remember who I am when I'm with you
Your love is tough, your love is tried and true blue
Blue

You've never done me wrong
Except for that one time
That we don't talk about
Because it doesn't matter anymore
Who won the fight? I don't know
We're not keeping score

And it feels good to be known so well
I can't hide from you like I hide from myself
I remember who I am when I'm with you
Your love is tough, your love is tried and true blue

生きてる実感が欲しいと君が言ったから
僕らは海に出掛けた
酷く暑かった1995年7月生まれなのに
君は自分を冬の魔女と言う
夏の空気が血に流れていて
陽の光がなきゃ生きていけないくせに

シカゴに引っ越してきた時は
タガが外れたみたいに
舞い上がっていたね
落ち着きなくキョロキョロして僕を見つけて
電車から名前を呼んで駆け寄った君は
氷みたいに澄んだ瞳で
はしゃぎまわっていた

君のことをもっと知りたいんだ
自分自身から逃げてきたみたいには
君からは逃げられないみたいだから

今そばにいる君は
唇を詰むんで不満げに
気候と水漏れについて愚痴ってる
あれから3度ケンカしたっけ
正直酷く傷ついたよ

だけど

君のことをもっと知りたいんだ
自分自身から逃げているみたいには
君からは逃げられないみたいだから
君といると自分が誰かわかる気がする
僕らの愛は強くて揺るがなくて
どこまでも蒼く
蒼く

君は僕を否定しない
もう持ち出すことはないだろう
たった一度の例外を除いて
だってもう過ぎたことだから
勝ち負けなんて意味がない
いちいちスコアもつけていないし

君のことをもっと知りたいんだ
自分自身から逃げてきたみたいには
君からは逃げられないみたいだから
君といると自分が誰かわかる気がする
僕らの愛は強くて揺るがなくて
どこまでも蒼く
蒼く
蒼く

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