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七番街プレートの崩落に大企業安泰神話の崩壊を見た【FF7Rクリア済み感想記事】

止まらないFF7Rブーム

FF7Rは4/10にスクウェア・エニックスから発売されたロールプレイングゲーム。
全世界待望の一作で、まさにスクエニからしても「社運をかけた」プロジェクトであっただろうことは想像に難くない。

実際、ゲームの作り込みは眼を見張るものがあり、この1週間で70万本ほど売り上げたらしい。
しかもPS4も連動して6~7万台ほど売れたのだとか。
まさにクラウド様様である。

とはいえ、この70万という数字はFFナンバリングシリーズ全体から見ると大した数字ではなく、例えば、このオリジナルたるFF7は初週で200万本ほど売り上げたらしい。
SFCからPSにグラフィックが進化して初のFFということを差っ引いてもこれはとんでもない数である。
当時の少年達もゲームに心を躍らせる歳ではなくなったということなのだろうか。

さて、クラウド様様なのはスクエニだけではない。
ただの小市民たる僕もその恩恵を受けた一人である。

何があったのかと言うと、前回書いた記事がめちゃくちゃウケた。

僕が2ヶ月コツコツと続けてきたnoteの、総閲覧数の半分以上を、たった3日でこいつが持ってった。
noteを始めてまだ2ヶ月くらいしか経っていないが、この段階で3.5万人(4/19現在で7万view)以上の人に見られる記事を書くことができるとは、感無量である。
僕は2月の半ばから3月の半ばまで「1ヶ月毎日note更新」という苦行を行っていたのだが、それによって確実に鍛えられたものはあったと思う。

だからというわけではないのだが、今回の記事もFF7リメイク(以下FF7R)についての記事である。
ただし今回は主人公一行やストーリーではなく、敵となる神羅カンパニーについて注目して書いていこうと思うので、前回との内容かぶりは無い……と思う。

※例によってFF7やFF7Rのネタバレがたくさんあります!
 ゲームクリアした人向けです。

 FF7は"ただのゲーム"にすぎなかった

ここを見ている人たちなら恐らくみんなやったことはあるであろう、FF7は、その世界観の作り込みから世界中で大絶賛を受けたゲームである。
そう、大絶賛された「ゲーム」なのだ。

ところでFF7はゲームなので、日常にはありえない大事件の連続である。

まず第一にゲーム開始直後から一切説明なしに始まる「壱番魔晄炉爆破作戦
続いて間髪を入れずに始まる「五番魔晄炉爆破作戦
そして、クラウドの落下エアリスとの出会い……。
普通の人間ならもう1週間どころか1ヶ月はもつくらいの思い出を、たかが2日やそこらで作っている。
恐ろしいペースである。

そして、FF7の中盤に起きる事件が七番街プレートの崩落作戦である。
これは七番街スラムに潜むアバランチのあぶり出し及び掃討を目的として神羅が起こす事件である。
ミッドガルは地上の「スラム」と、中空に作られた人工の都市「プレート街」による二層構造をとっているのだが、そのプレート街をスラムに落とすことで、七番スラムごとアバランチを壊滅させようというのである。

原作では「神羅が引き起こした事件である」と言うだけなのだが、FF7Rではより巧妙になっており「アバランチが暴走の果てに七番街プレートを崩落させようとしている。神羅はそれを止めようとしたが、敢え無く失敗してしまう」というカバーストーリーが流されている。

さて、FF7ではこのプレート崩落事件はただの舞台装置にすぎなかった。
FF7のときには住民との交流を深める機会もなかったし、彼らの生活の様子も、人格も、何もかも知らなかったのである。
だから、「エアリスが攫われてしまうキッカケ」以上の何ものでもなかった。

神羅がヤバイやつらだというのは物語冒頭から散々言われているので、「ストーリー始まってから10分も関わっていない都市が崩壊すると言われても……」ということもあり、コトの重大さが全く伝わらなかった。
まぁ七番プレートが落下して七番スラムやアバランチの面々がみんな死んでしまったのは悲しかったが、すぐに切り替えが付く程度のことだった。

思えばFF7はかなり描写が不足していたように思う。
あれを名作たらしめたのは世界観という大枠が念入りに作り込まれていて、我々の想像で自然と補完できていたからであって、細部の作り込みは、実は今から見るとかなり甘いところがある。

例えば、七番プレート落下後に潜入することになる神羅ビル。
神羅カンパニーの本社であり、魔晄都市ミッドガルを実質的に支配する管理棟の役割も果たしている。

そう、ミッドガルを管理するのもこの企業の仕事である。
その証拠に、ミッドガル市長のドミノは閑職に追いやられ、神羅カンパニー内には都市開発部門という部署が存在している。
ミッドガルはほとんど開発が終了しているとはいえ、維持管理は都市開発部の仕事である。
実際に、都市開発部長のリーブがプレジデント神羅へ七番街の再建を迫る様子が確認できる。

しかし、FF7に出てくる神羅社員たちはみなお粗末なものだった。
誰も彼もが「七番プレート落下事件の後処理」という重大事件について何も話さないのである。
普通の企業なら、自分が管理する都市の1/8が崩落したとなれば、間違いなく保証や管理責任の追求などで部署を超えて会社全体がおおわらわである。

しかし、リフレッシュフロアの社員に話せばわかるように、あそこで働く人達は全くそのような様子を見せないばかりか、気楽に運動なんてしている。
明らかに部外者のクラウド一行を完全に信用してカードキーを渡すと行ったことさえもする。
現実なら即セキュリティインシデント事案である。
どう考えても警戒心が足りなさすぎる。生まれたてのヒナかよ。

このように、FF7時点での神羅カンパニーは漠然とした「悪の組織」でしかなく、企業としての一面は全く見ることが出来なかった。
まずはじめに世界的大企業の「神羅カンパニー」が生まれ、後付で魔晄を吸い上げることが追加されたのではなく、「魔晄を吸い上げる悪の組織」がほしい時に、一番世界観と合致したのが、世界を股に掛ける大企業、すなわち「神羅カンパニー」だったというような誕生経緯を辿ったのであろうか。
とにかく、彼らを企業たらしめる必然性はなかったのだ。

"ゲーム"からの脱却

上掲した記事にも載せたが、FF7Rは作り込みがすごい。
一人ひとりの住民のリアクションがとにかく生き生きとしていて、"語られていないにもかかわらず"彼ら彼女らの生活の様子が垣間見えるのである。
それも、一人ひとり違った様子が見えるという点がFF7よりも崩れている。

FF7Rは作り込んできているとは思ったが、彼らは一番の武器である世界観を更に充足させに来たのである。
自分の武器とユーザーの望んでいたもの、そして必要なものをよく分かっている選択だと思う。
これがなければ、FF15のときのように「細部の作り込みの甘さ」を指摘されてしまっていただろう。

とにかく辻褄を合わせるだけではなく、大小様々な追加要素がある、いうなればFF7完全版。それがFF7Rのイメージだったのであろう。
そして、これは神羅カンパニーについても当てはまる。

そもそも、おかしいとは思わなかっただろうか?
いかに街を支配する大企業とはいえ、ミッドガルの1/8を占めるプレート街とスラム街をまるごと巻き添えにするような大規模破壊作戦を、市街地で展開するのである。
どう考えても都市内外の批判は避けられまい。
魔晄の供給というライフラインを握られているからこそ、神羅はどこまでするのかわからないという恐怖感が人々を支配しただろう。
FF7の世界線においては、遅かれ早かれ神羅カンパニーは打倒されていたに違いない。

だからこそ、「破壊作戦は暴走したアバランチの作戦である。神羅はこれを止めるために戦っている」といったようなカバーストーリーが必要となるのである。
人間一人一人を緻密に描いた結果、それぞれの感情や思考の解像度が上がってしまったために、ストーリーラインも緻密に描く必要が生じたのである。

チャプター2で電車に乗り込んだとき、神羅社員との会話イベントが発生する。
彼らは当然だが、魔晄の本質が何なのかを知らない。
ただの「無制限に採掘可能な便利エネルギー」であるとしか考えていないのである。

彼らだってきっと、それがこの星の生命の源であり、それを使い込むと星が衰退していくのだということを理解すれば、全員とは言わずとも、その殆どが神羅を離反しただろう。
しかし、それを知らない社員たちは、何も知らずに自らの仕事を「世界を発展させて、みんなの生活を更に豊かにするためのもの」と信じて疑わない。

彼らの姿勢はまさに「明日も今日と同じ明日が来る」と信じて疑わない一般庶民のそれであった。
これが「FF7Rというストーリー」であると認識できるのは、第四の壁を超えた我々だからこそできることであって、彼らにとっては「いつもの日常の一ページ」にすぎないのである。

さらに、七番街プレート崩落事件の際にも、ただ上司の命令に従うだけではなく、ウェッジの説得に応じて住民を避難誘導させる神羅兵の姿が描かれた。
あの状況でスラムの人々を避難させないほうが不自然である。
「駄目」と言われたから数千〜数万のスラムの人々を皆殺しにしてしまうほど、薄情な人間ばかりではないのだ。
神羅カンパニーといえども一枚岩ではないということをハッキリと示してくれた。

神羅カンパニー侵入後も、社員たちはみな一生懸命に働いている。
当然、時間から考えればとっくに終業の時間なはずだが残業上等であった。
理由はもちろん「七番街プレート崩落の後始末」である。
原作通り、リフレッシュルームもちゃんと社内に存在するが、運動しているものなど一人もおらず、テレビをみて不安がる者や、ソファで睡眠し、少しでも体力を回復させようと必死な者など、「テロリストに怯えながらも自らの職務を一生懸命に果たそうとする真面目な社員たち」の姿を十分に見せてくれた。

また、神羅社員の中にも家族が七番街にいたために音信不通になっていることを心配しているものさえもいた。
今回の神羅は「悪の組織」ではなく、「世界的大企業」なのである。
ここで働く彼らに罪はなく(無知を罪と言うならばそうだが)彼らはただ自らの生活や世界の安寧を守るために、自分のできることを必死でやっているだけなのだ。

だからこそ、スカーレットやハイデッカー、プレジデント神羅などの、「すべてが分かった上で悪事を働いている」悪役感も高まる。
神羅ビルの社員たちは世界観を深めるための舞台装置のみならず、悪役を悪役たらしめるための重要なキーにもなっているわけだ。

FF7Rはドラマである。

以上で見てきたように、 FF7Rは、もはや一介のゲームではなく、壮大なドラマ作品として評価されうる仕上がりになっている。
リアルになったのはグラフィックだけではなく、そこで暮らし、働く普通の人々の様子や息遣いなど、目に見えない部分にまで及んでいた。

だからこそ、FF7Rはファンの期待を裏切らずにいられたのである。
願わくば、制作陣がこの先にクラウドたちを待ち受ける壮大な世界についても同じような細密な作り込みをしてくれますよう。

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