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2023年の東京ダービー

2002年の春にそれまで暮していたドイツから帰国し、京王線の沿線に住むことになった。ドイツでは「せっかくサッカーの盛んな国なんだからサッカーを見に行こう」と考えて家から最も近いメンヘングラードバッハのシーズンチケットを買いマメにかよっていたので、東京でも地元のクラブの試合を見に行きたいと思った。

調べるとできたばかりの味スタ(当時はまだ東京スタジアム)を本拠地にしているクラブが二つあり、そのうちのひとつは読売クラブを前身とするヴェルディであり、読売だけは受け入れられない(子供のころは阪神ファンであった)ので消去法的にFC東京を応援することにした。これが僕が東京サポになった経緯だ。

しばらくは毎年東京ダービーがあり、そのたびに熱く盛りあがっていたものだが、ヴェルディは2005年を最後にJ2に降格、2008年にはJ1に昇格したものの1年で再び降格、その後現在に至るまでJ2で戦い続けている。2011年には東京がJ2に降格したため対戦する機会があったが、ヴェルディとの公式戦での対戦はこのときが最後である。

1998年に読売新聞から経営を引き継いだ日本テレビが2009年を最後に撤退し、ヴェルディは読売のクラブではなくなった。そのこともあり、なにより10年以上も一度も対戦しなかったこともあって、僕にとってヴェルディはもはやどうでもいいクラブ、過去のクラブになっているし、東京ダービーといわれてもまあ天皇杯だし格下だし程度の気持ちにしかなれないのが正直なところ。

だいたいヴェルディが好きじゃないのは読売のクラブだからだし、川崎から東京への移転時のいかにも読売らしいゴリ押しとかに辟易したからではあるのだが、もはや読売のクラブでもなく、移転からも20年以上が経って、いまだにそれをリアルな怒りに転化できる人たちのマメさというか几帳面さというか、執念深さというかそういうものは素直にスゴいと思う。たぶんヴェルディが好きなんだろう。

なんかダービーがないと寂しいから早くJ1上がってこい的なことを言う人までいたりするのだが、別に東京を本拠にするクラブはFC東京ひとつあればいいのでダービーをやりたいわけでもライバルがほしいわけでもなく、上がってこなくていいしなんなら下位カテゴリーにどんどん降格して見えないところに行ってくれた方がありがたい。少年マンガじゃあるまいし、そんな互いに切磋琢磨して一緒に成長しようみたいなことを考えているわけではないのだ。

なので天皇杯で図らずも実現することになった今回のダービーもサクッと勝ちさえすればいいし、そこまで力を入れること自体がメンドくさいというかダサいというか、元気やなあみんなという感想しかない。なにかぶつけられるものをさがしているんだね青春バンザイだねと皮肉な目で見てしまう。

とはいえ、ウチ以外に東京を名乗るクラブが下位カテゴリーにあり、カップ戦でそこと対戦することになった以上、そんなところに不覚を取るわけにはもちろん行かないので、そこは遺漏なくしっかり勝ちきりたい。お祭りではない、勝って当然、負ければ地獄、メンドくさい格下相手のカップ戦のなかでもいちばんメンドくさいヤツだよ。

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