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東京ダービーでのトラブルについて思うこと

2023年7月12日水曜日、味の素スタジアムで天皇杯3回戦、FC東京×東京Vの試合が行われた。東京ダービーである。最後のダービーはFC東京(以下「東京」)が二部落ちした2011年10月だったのでほぼ12年ぶりになる。

これに浮かれて当日は飛田給駅前に掲出されている東京V(以下「ヴェルディ」)の広告看板にヴェルディを揶揄したビラが貼りつけられ、これがはがされたあとには生卵が投げつけられるという事件が発生している。またスタジアムでは選手入場時に東京ゴール裏中心付近から花火が何発も打ち上げられ、応援旗(通称「ベロ旗」)の下から発煙筒が焚かれるというトラブルも確認されている。

これについて僕がTwitterに連ツイの形で投稿したのが以下である。それなりのファボやRTをもらったし、自分として大事なステートメントだと思うのでここに再掲して残しておく(一部表現を修正している)。


東京ダービーでのトラブルについて思うこと(Twitter再掲)

オレが味スタに通い始めた2002年、ヴェルディはまだJ1にいて昔日の栄光の尻尾を引きずっていたし、川崎から東京への移転のゴタゴタもあり、やっつけ甲斐のある相手だった。昇格したばかりの我々は実績はなくても勢いはあり、ヴェルディを敵視することには理があった。

我々はアンダードッグであり、反権力であり、強くて威張っているものにノーを突きつける役割を担っていた。ヴェルディを揶揄し、おちょくり、笑い飛ばし、からかうことはその意味で許容されていたし、気の利いたユーモアだと評価されもした。それを懐かしく思う気持ちはある。

そこでは我々は権威を脅かすものであり、彼らはその挑戦を受けて立ちそれを斥けるべき立場にあった。それを斥けられなくなったとき、彼らはもはやJリーグにおいて東京を代表するものではなくなり、我々こそがそれにとって代わる。それは生存闘争であった。

我々はその闘争に勝った。彼らはJ2に降格してサポも減り、スポンサーは降りて経済的にも困窮した。我々の側の手違いにより図らずも下位カテで再会した2011年を最後に戦う機会すらなくなり、我々は悲願のリーグ・タイトルに向けて試行錯誤を続けていた。

そんななかでたまたま実現した天皇杯での東京ダービー2023。しかし我々はもはや追う者ではなく追われる者である。挑戦を受け、それを粛々と斥けるべき立場にいる者である。揶揄やおちょくり、挑発は今では我々の武器ではない。

かつてアンダードッグの有効な闘争手段であったそれらは、今では幼稚でみっともないただの自己満足に過ぎない。挑戦者だからこそシャレやユーモアとして受け入れられていた挑発も、ただのうすら寒い悪ふざけとしか見てもらえなくなってしまった。

そういう意識のアップデートができないまま、懐かしさに任せて昔の挑戦者マナーでダービーに臨んだ結果、一部の者がやらかしたのが今回の広告看板への生卵の投げつけ、スタジアムでの花火の打ち上げや発煙などのトラブルだと思っている。

これらを実行した者が処分されるべきなのはもちろんだが、古株のサポは、これらに直接関与したわけではなくても、自分の意識のアップデートは大丈夫か、我々は今なにを目指しているのか、あらためて自分に問い直す必要があるのではないかと思う。

これを書いた背景を少し

ツイートしたのはここまでなのだが、これを書くに至った背景を少し付記しておきたい。

まずひとつは3回戦の対戦相手がヴェルディに決まってからの盛り上がりがなんていうか一方的というかいかにも型どおりというか、東京サポ敬老会ぽいというか、今さらヴェルディをそこまで敵視する必要がそもそもあるのかと辟易したこと。この人たち実はヴェルディが好きなんじゃないかとも思った。このへんのことはダービー前にも書いたが、そのときはまだ思ってることをうまく言語化できてなかった。

それから、似たようなことだが、ずっとJ2に定着して昇格できず、動員も落ちてスカスカの味スタでいつも試合をしているヴェルディに執拗にからむのは、なんか弱い者いじめをしているような気分の悪さがあると感じたこと。

あと、そもそも川崎から東京に移転した時の経緯とか東京でもヴェルディでも若いサポはおそらく知らず、というか生まれてなかったすらワンチャンあり、「ヴェルディ川崎」とか「川崎帰れ」とかももう意味わからん人がたくさんいるんだろうなと思うし、それを意気揚々とチャントすることに意味あんのかとも思ったこと。

角度は違うが、「JリーグではFC東京サポ、プロ野球はジャイアンツ・ファンです」みたいなのがTLとかにもそこそこ見かけるようになり、それはそれで個人の好きずきだからいいのだが、東京を応援するということは基本的に強く威張っている者が嫌いだということだと勝手に思っていた自分としてはショックを受けたこと。

そうか、最近サポになった人にとって、東京は初めからJ1にいたわけで、何かに対する反骨とかアンチで応援することになったのではないのだと気づいた。まだまだ見返したり乗り越えたりすべき対象はいろいろあるにしても、それはヴェルディではない。

同じ東京でプロ・フットボールのクラブとして活動する以上、なんらかのあつれきや対抗心が生まれること自体は別におかしくないが、少なくともトップチームにおいては今は「しのぎを削る」相手ではないし、久しぶりのダービーで昔の血が騒ぐのはわからないでもないが、やったことは一線を越えているし、ちょっともう「あのころ」と同じではない部分が大きくなっているのではないかと感じたのである。

なにより、試合はどっちもモラルが高くて面白かったし、延長、PK戦の末、劇的なラウンド16進出を決めたのに、いらんトラブルでクラブ周辺がガタガタするのがバカらしくなんか言いたくなったというのがまずある。

トラブルについてはクラブが調査を進めていて、その進捗もウェブで公開されている。ここからは目の前の鹿島戦に集中したい。

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