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宇宙豆知識 vol.4〜アストロバイオロジーの魅力的な世界~

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。
Tenchijin New Age Blogでは、天地人に所属する学生インターンが、これは面白いと思った宇宙のトピックスを定期的にお届けします。

今回は4回目の宇宙豆知識として、「アストロバイオロジー」について紹介します。


アストロバイオロジーとは?


宇宙には、生命の存在に関する未解明の謎が数多くあります。このテーマに対する答えを求めて、「アストロバイオロジー」という学問領域が存在しています。アストロバイオロジー(宇宙生物学)は、「地球および地球外の環境における生命の起源、進化、分布、および未来について研究する学問」として1990年代後半にNASAによって提唱されました。宇宙全体を舞台にして生命の可能性を探究し、地球中心の視点に留まらずに生命の謎に迫ります。天文学、惑星科学、生物学、生命化学、地球科学、工学など、多様な分野が交錯する学際的な性質を持っています。

日本においては、宇宙分野ではJAXAが広く知られていますが、アストロバイオロジー研究の中心となる施設として、自然科学研究機構が運営するアストロバイオロジーセンターが存在します。このセンターは、系外惑星探査、宇宙生命探査、アストロバイオロジー装置開発の3つの主要プロジェクト室で構成され、地球外生命に関する研究が行われています。

アストロバイオロジーの主要プロジェクトをご紹介

アストロバイオロジーの研究は宇宙における生命の可能性を探求するため、いくつかのプロジェクトに分かれています。ここでは、その中から特に注目の抑えておきたいプロジェクトを紹介します。

1. 火星探査:生命が存在する可能性の探求

火星探査はアストロバイオロジー分野の中心的なプロジェクトの一つです。火星が生命を宿すのに適した環境であるか、現在も生命が存在する可能性があるかどうかについての研究がされています。

火星探査の中でも、NASAのパーサヴィアランス(火星探索車)やESA(欧州宇宙機関)のエクソマーズ(火星探査計画)が特に有名です。パーサヴィアランスは、火星の古代環境が生命を支え得る条件を有していたかを調べるために、かつて水が存在したと考えられる河川跡や湖底などを調査しています。エクソマーズは、火星に微生物が生息可能な過去の環境を特定したり、火星の大気から酸素生産を試行するための調査が行われています。打ち上げが2段階となっているのが特徴的で、2016年には第1弾の打ち上げが行われました。

2020年7月30日に打ち上げられ、滞在1000日を超えた現在も火星に滞在中のパーサヴィアランス 出展:NASA公式HP

パーサヴィアランスの最新の動向:NASAの探査機、火星の「ダストデビル」を撮影…高さ2000mで地球のものより強烈
エクソマーズの最新の動向:エクソマーズ、ウクライナへの軍事侵攻の影響で今年の打ち上げは困難 – ヨーロッパ宇宙機関発表


2. 太陽系の衛星探査:未知の生命環境の探査

太陽系内の衛星、特に木星の第2衛星であるエウロパや土星の第2衛星のエンケラドゥスなど、氷に覆われた海が存在する衛星が、アストロバイオロジーにおけるもう1つの研究の焦点です。これらの衛星は、地球外生命が存在する可能性がある場所として注目されています。

エウロパは調べられている太陽系の中でも最も滑らかな表面を持っているため、地下に内部海があるという仮説があり、そこに地球外生命が存在するという可能性が考えられています。また、エンケラドゥスは、生命に必要とされる有機物と熱源、そして液体の水の3つの要素が全て揃っていることから、地球外生命の有力な候補地として考えられています。

Googleで「エウロパ」を検索して出てきたinteractive diagrams

Googleで衛星名を検索するとinteractive diagramsというツールが表示され、衛星を回転させて地表を見ることができます。興味がある方はぜひお試しください。

3. 系外惑星の観測:生命のすみかとなりうる惑星の探索


系外惑星の観測もアストロバイオロジーにおいて重要な分野です。ケプラー宇宙望遠鏡やTESS(トランジット系外惑星探査衛星)などのミッションにより、生命が存在する可能性のあるハビタブルゾーン(生命移住可能領域)に位置する惑星が多数発見されています。

ハビタブルゾーンとは、惑星がその星に対して適切な距離に位置し、液体の水が表面上に安定して存在できる領域を指します。地球は太陽のハビタブルゾーン内にあり、そのために液体の水と生命を維持する条件を備えています。対照的に、内側に位置する金星は過酷な熱環境であり、外側の火星は厳しい寒冷環境です。

出展:NASA

これらのハビタブルゾーン内の惑星は、地球と同様に液体の水が存在する可能性が高く、地球型生命を支える条件を有すると考えられています。そのため、これらの惑星は生命の存在可能性を探るための重要な調査となっています。

ハビタブルゾーンについては以下の記事でより詳しく紹介していますので、興味がある方はぜひご覧ください。
https://note.com/tenchijincompass/n/ne60bb941e5e8


4.地球の微生物と宇宙:極限環境での生命の可能性


アストロバイオロジーにおいて、微生物が重要な研究対象となっています。その理由としては、微生物は極端な環境に適応する能力を持つことから、地球外生命の存在や進化に関する手がかりを提供するためです。例えば、宇宙環境における微生物の生存能力を探る研究など行われています。
このような研究は、微生物が宇宙の厳しい条件、例えば極端な放射線、低圧、温度変化などに耐えることができるかを調べることを目的としています。微生物がこれらの過酷な環境で生き残ることができれば、地球外の惑星や衛星などに生命が存在する可能性があることを示すことにつながるのです。
また、微生物学の研究は地球外の人間活動、特に宇宙船や宇宙ステーションでの生活環境の管理と宇宙飛行士の健康維持にも不可欠です。この分野では、微生物が環境制御システムや食品供給システムにどのような影響を与えるか、感染症のリスクはどうなるか、また宇宙船の構造的健全性が長期間維持できるかが重要な研究テーマです。宇宙環境で微生物がどのように適応し、進化するかを把握することは、長期宇宙探査ミッションの成功にとっても鍵となる要素なのです。

「宇宙人」はいるのか?

宇宙に「知的生命体」が存在するかどうかは、人類にとって長年の大きな疑問です。このテーマは、SETI(地球外知性体探索)プロジェクトによって進められています。

このプロジェクトは、宇宙からの信号を検出し、異星文明からの可能なメッセージを捕捉することを目指しています。主な方法としては、電波望遠鏡を使用して宇宙からの電波を監視することが挙げられます。これにより、地球外文明が発する可能性のある特異な電波パターンや、意図的に送信された信号を捉えようと試みています。

観測所をタイムラプスで撮影した写真
出展:NASA

SETIプロジェクトは、単に宇宙からの信号を探すだけでなく、地球外生命体の存在に関する科学的理解を深め、地球外生命体とのコミュニケーションの可能性についての議論を進めることを目的としています。現状地球外知的生命体からの信号は見つかっていませんが、もし異星文明からのコミュニケーションに成功したら、それは人類の歴史において大きな成果となり、私たちの宇宙に対する理解を根底から変えるのではないでしょうか。


まとめ

今回の記事では、宇宙豆知識として、「アストロバイオロジー」について解説しました。宇宙にはまだ解き明かされていない多くの謎が存在します。普段は触れることのないようなこれらの研究は、私たちの好奇心を刺激することにもつながるのではないでしょうか。今後も宇宙豆知識の特集を通して宇宙のトリビアに注目していきたいです。

(記事作成:事業開発インターン 渡邊)
参考:
https://astrobiology.nasa.gov/uploads/filer_public/02/c5/02c5c11f-046a-4607-a5f4-44377c3e74e4/issue7japanesefirstedition_elsi_med.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/18/11/18_11_59/_pdf
https://forbesjapan.com/articles/detail/50286
https://forbesjapan.com/articles/detail/66239
https://wired.jp/2021/10/10/astronomers-get-ready-to-probe-europas-hidden-ocean-for-life/
https://exoplanets.nasa.gov/resources/2255/what-is-the-habitable-zone/
https://www.isas.jaxa.jp/topics/002436.html
https://www.tel.co.jp/museum/magazine/spacedev/130603_topics_06/02.html