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気象ビジネスと人工衛星~人工衛星はどのように活用されているか~

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。

Tenchijin Tech Blogでは、宇宙に関連するさまざまな最新情報を、天地人のエンジニア、研究者、ビジネスリーダーが一歩踏み込んで解説します。

今回は、気象ビジネスとそこで役立っている人工衛星データについて取り上げます。

この記事を読むと、気象ビジネスの概要、人工衛星が気象ビジネスに与えている影響、人工衛星を活用した気象ビジネスの最新事例がわかります。

ぜひご覧ください。

1.気象ビジネスとは?

世界の気象関連ビジネスの市場規模は28億米ドル、日本円で4100億円(2021年、Polaris Market Research)程と予想されている等、巨大なビジネスです。また、2030年までの市場成長率は年平均5.4%と推計されており、成長産業でもあります。

気象ビジネスが大規模な成長市場である理由として、世界の地域・国の様々な産業において気象予報が必要とされていることが挙げられます。
例えば、防災分野では台風/ハリケーン等の気象状況自体が災害の要因となるほか、気象により起こされた洪水、地すべり等の災害に対する予防・発災・復興の各局面で、気象のモニタリング、気象予測を行うことが、更なる被害の拡大を抑えます。
交通・物流分野では、陸海空における人・モノの運搬を安全に行うため、気象のモニタリング・予測が重要です。
農業分野では、作物の栽培管理・収穫時期の判断に気象予測が活用されているほか、建設分野でも、実施作業の判断に気象予測が必要とされています。
エネルギー分野では、エネルギーの需給予測を気象条件をもとに行うほか、気象の影響を受けやすい再生可能エネルギー分野では、運用を行う上で気象モニタリング・予測が欠かせません。
我々個人としても、日々の気象予報を参考に生活をしており、放送通信業界から発信される気象予報は重要な情報源となっています。

気象ビジネスの構成要素は、次の図に示すとおり、5つから成っています。

  • 情報の取得(観測)

  • 情報の処理(解析・予測)

  • 情報の仲介

  • 情報の加工

  • 情報の伝達


出典:「気象データを活用したビジネスの現状と可能性」三井物産戦略研究所

日本では、情報の取得と処理の中心プレイヤーは気象庁ですが、ウェザーニューズや日本気象協会等の企業・財団でも独自に情報の取得と処理も実施しています。
米国では、AccuWeatherDTNEarth NetworksPrecision Weather ServiceThe weather company (IBM)等の民間企業が気象予報のメインプレイヤーです。

2.様々な気象観測方法

この章では、情報の取得つまり気象観測の方法について解説します。
気象観測には、気象庁の分類によれば大きく区別して「大気、海洋、地震、火山」の4つがあります。

出典:「気象データの基礎知識 資料」気象庁

ここでは、特にみなさんがイメージする天気と関わりの深い「大気」の気象観測にフォーカスしたいと思います。
大気の気象観測に使われているのは、下の表に挙げる5つの手段です。それぞれの観測方法は、センサで取得するもの、レーダーから電波を当てて取得するものに大別されます。

出典:気象庁の情報をもとに天地人作成

観測高度の観点から、各観測手段を見てみると、アメダスは地上で強みを発揮する一方で、気象レーダー、ウィンドプロファイラは地上~上空10kmまで、ラジオゾンデでは地上~上空30kmまでを観測します。
静止気象衛星は、静止軌道(高度約36000km)から地上までの様々な高度における大気を観測することができます。

出典:「気象観測について」気象庁

日本の気象庁では、ここに挙げた5つの手段をメインに用いながら、気象観測を行っています。それでは、世界の最新事例ではどのような観測手段を使っているのでしょうか?

スイスのMeteomaticsでは、ドローンを利用してこれまで手薄となっていた低高度(地上~6km)の気象観測を行っています。

Meteomaticsは、2012年創業スイスの気象情報提供スタートアップで、2016年より定期的にドローンによる気象観測を行い、スイスを対象とした1kmメッシュ気象予報に、ドローンの気象観測データを入力しています。
スイスの航空当局より目視外飛行の許可を受けており、昼夜において地上から上空6kmまでの観測飛行を実施しています。
観測に利用しているドローンは自社製で、気温・気圧・相対湿度・露点・風向風速が観測可能です。
現在はパイロットによる観測ドローン飛行を行っていますが、将来的には全自動で観測ドローンを飛行させる計画(ドローンポートからの飛行・帰還・充電の全自動化)を立てています。

出典:Meteomatics

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記事の後半では、Spireの小型衛星コンステレーションや静止気象衛星で取得可能な気象データについて解説しています。

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